【1】人身事故・物損事故とは
道路交通法によると,交通事故とは,車両等の通行による人の死傷または物の損壊をいうものとされていますが(法72条),一般に,この交通事故のうち,車両等の通行により「人の死傷」の結果が生じた事故を人身事故と呼び,「人の死傷」の結果が生じず「物の損壊」の結果のみが生じた事故を物損事故と呼んでいます。
このように,交通事故は,生じた結果に応じて2つの類型に区分されているのですが,この区分によって,事故処理や保険金の支払等に違いが出てきます。 例えば,人身事故については,明らかに運転者に過失がないと認められるような例外的な場合でない限り,運転者は自動車運転過失致死傷罪等の被疑者として取調べを受けることになり,当該事故は事件として検察庁に送致されることになりますが,物損事故については,過失建造物損壊罪(道交法116条)が適用されるケースを除いては,刑事上の責任が認められないことから,捜査が行われることはありません。
また,自賠責保険からの填補を受けることができるのは,人身事故によって生じた損害のみで,物損事故によって生じた損害は,原則として,自賠責保険からの填補はなされません(自賠法11条・16条・3条)。
【2】自賠法の適用
上で説明した通り,物損については,自賠責保険による損害の填補はなされませんが,身体の一部の機能を代行する役割を果たす物(例えば眼鏡(コンタクトレンズ),義眼,歯科補てつ物,義足,松葉杖,補聴器など)が損壊した場合については,物損であっても,自賠責保険によって損害填補がなされます。
【3】刑事記録の閲覧・謄写
ア.人身事故の場合
人身事故については,【1】で述べたような例外的な場合でない限り,事件性があるものとして,捜査が行われますので,実況見分調書や事故当事者の供述調書等(これらを総称して刑事記録といいます)が作成されることになります。
この刑事記録は,当該事故が,刑事事件として起訴されている間は,被害者等(被害者または被害者が死亡もしくは心身に重大な故障がある場合の配偶者や親族)またはその委託を受けた弁護士から申し出により,損害賠償請求に必要な場合等に,閲覧及び謄写をすることができます(犯罪被害者保護法3条1項)し,当該事故についての刑事裁判が確定している場合であれば,何人でも,これを閲覧することができます(刑事訴訟法53条1項)。
当該事故が不起訴処分とされた場合については,刑事記録は公開されませんが,損害賠償を求める民事訴訟を提起した後に,裁判で文書送付嘱託という手続きを利用して,刑事記録(供述調書については一定の条件があります)の閲覧・謄写をすることが可能です。
イ.物損事故の場合
物損事故については,例外的なケースを除き,捜査は行われず,送検もされませんので,刑事記録が作成されることはありません。
したがって,被害者が刑事記録を閲覧することは不可能ですので,事故現場の状況は,被害者自身で記録しておくことが必要になります。
※常にではありませんが,事故処理を行った警察署において,現場に臨場した際の報告書や,事情聴取書が残されている場合もあります。当事者間で事故態様が争いとなった場合などには,一度所轄警察署に相談されるとよいでしょう。

