その他の損害

1.弁護士費用

【1】弁護士費用の請求の可否

日本では弁護士費用の敗訴当事者負担制度がありませんので,訴訟を提起して勝訴したとしても,弁護士費用は各当事者がそれぞれ負担するのが原則ですが,不法行為を原因とする損害賠償請求訴訟の場合に関しては,被害者が負担した弁護士費用相当額を損害として認めることができるものとされているため,例外的に敗訴当事者に弁護士費用を負担させることが可能となっています。
もっとも,損害として認められるのは,弁護士費用相当額であり,現実に支払った弁護士費用の全額が損害として認められるわけではありません。したがって仮に多額の弁護士費用を支払っていたとしても,損害として認められるのは,事案の難易や請求額,認容額等の事情から相当と認められる範囲内の弁護士費用に限られることになります。
 
【2】弁護士費用の認定額
裁判例の傾向としては,原告が支払った弁護士費用のうち,原告の請求認容額の一割程度に相当する金額を,交通事故と相当因果関係が認められる損害であるとするものが多数といえますが,認容額の低い事案等では,これよりも大きい額を損害として認めた例もあります。


2.遅延損害金

【1】遅延損害金とは
債務者が,債務の支払期限までにその支払いをしなかった場合,債務者は,ペナルティとして一定額の金銭を債権者に支払わなければならないとされており,この金銭を遅延損害金といいます。
交通事故の場合,加害者は被害者に対して損害賠償債務を負っていますので,加害者が損害賠償をしなければならないときまでに賠償金を支払わなければ,加害者は被害者に対し,遅延損害金を支払わなければなりません。
遅延損害金の額は,債務者の負う損害賠償債務に対し,年利5%の単利計算で算定されます。

【2】遅延損害金の起算点
交通事故による損害賠償債務は,判例上,交通事故の発生時に支払わなければならないものとされておりますので,遅延損害金の起算点は,交通事故の発生時となります。
したがって,事故により300万円の損害を被った被害者が,2年後に加害者から損害賠償金の支払いを受けた場合であれば,遅延損害金の額は,300万円×0.05×2年=30万円となりますし,同じ事例で,事故から1年後に自賠責保険から120万円の保険金を受け取り,その1年後に残額を受け取った場合であれば,300万円に対する5%の遅延損害金1年分=15万円と,残額の180万円に対する5%の遅延損害金1年分=9万円の合計24万円の遅延損害金が発生することになります。
 
もっとも,自賠責から受け取った保険金120万円で元本および遅延損害金のすべての満足が得られない上のようなケースでは,保険金はまず遅延損害金に充当された上で,その残額が元金に充当されるという取扱いになっています。
したがって,損害賠償金が全額支払われる間に一部弁済を受けたケースでは,正確には,120万円の保険金は,遅延損害金の15万円にまず充当され,残りの105万円のみが元本に充当されることになりますので,自賠責から120万円を受け取った時点での残元金は,195万円(300万円―105万円)になります。つまり,被害者が受け取ることのできる遅延損害金は,300万円に対する遅延損害金1年分=15万円と,195万円に対する遅延損害金1年分=9万7500円の合計額24万7500円ということになります。

【3】保険金支払請求と遅延損害金
ア.自賠責保険
交通事故の被害者は,自賠法に基づき,自賠責保険会社に対して直接保険金の支払いを請求することができます(被害者請求・直接請求)。
この場合も,被害者は自賠責保険会社に対して,保険金が支払われるまでの遅延損害金を請求することができますが,その起算点は,事故発生日ではなく,自賠責保険会社が被害者請求を受けた日の翌日となります。

イ.任意保険
任意保険会社に対して直接保険金の支払いを請求する場合にも,被害者は任意保険会社に対して,遅延損害金の支払いを請求することができます。
この場合の起算点については,統一した見解がなく,実務上は,判決確定日の翌日とするもの,被害者請求の翌日とするもの,あるいは事故日とするものがあります。