1.認定のポイント

CT

 高次脳機能障害に対する社会的認識・理解の普及,及び高次脳機能障害認定システム等の充実および認定の適正化は,これまで見てきたとおり,いまだ発展途上の状態にあるといえます。したがって,今後の裁判例の動向や自賠責保険の運用,その他紛争処理機構等の運用等の推移を見守る必要があります。一方で,現段階における高次脳機能障害の後遺障害認定及び適正な等級認定を得るには,自賠責保険の後遺障害認定なくして裁判所に認定されるという方法は,いまだそのハードルは高いと言わざるを得ません。

 まずは,自賠責保険において,高次脳機能障害の後遺障害認定を受けることが重要です。その際の認定資料として,CTやMRI等の画像所見が重要視されます。また,「診断書」,「後遺障害診断書」,「頭部外傷後の意識障害についての所見」,「医師の意見書」,「各種神経心理学的検査結果」等が認定のための資料となります。

 もちろん,自賠責保険において,「非該当」の結果や,納得のいかない低い等級での認定結果が出ることは,今後も大いに予想されることから,それに対する異議申立や紛争処理機構の利用等含め,今できる最大限のことをする(あらゆる証拠の収集及び主張を行う)ことが重要です。

 仮に,自賠責保険の後遺障害認定において,納得のいく結果がでなくとも,今後の裁判の動向によっては,裁判で争う余地は広がってくる可能性があるでしょうし,高次脳機能障害の患者さんにとって,裁判所による独自の判断への門戸が広く開かれることを,切に願うところです。

【参考】 神経心理学的検査の例

  1. 知能テスト
    WAIS-III,WISC-III,長谷川式簡易痴呆スケール改訂版,MMSEなど
  2. 言語機能
    SLTA,WAB失語症検査,Token testなど
  3. 記憶検査
    WMS-R,三宅式記銘検査など
  4. 遂行機能検査
    WCST,BADSなど
  5. 人格特性評価法
    ロールシャッハテスト,TATなど

2.等級アップのポイント

(1)等級アップの重要性

 高次脳機能障害においても,非常に重篤とされる1級~3級は,自賠責保険における判断が難しくないとされています。しかしながら,自賠責保険において,その症状の程度があいまいな5級,7級,9級については,認定基準もあいまいなため,何級とすべきかの判断も,いまいち不明確であることがうかがえます。

 高次脳機能障害の症状の程度というものが,客観的な数字的・統計的判断ではなく,いわば,目に見えない症状を外部の目から判断するという難しさをもっているので,当然といえば当然かもしれません。

 しかしながら,5級と9級を比べると,後遺症慰謝料は裁判所基準(裁判をしたならば認められる基準)で,5級=1400万円,9級=690万円ですし,後遺障害逸失利益を算定する場合の労働能力喪失率も,5級=79%,9級=35%となっています。これは損害賠償算定につき,2倍以上の大きな差を生じるもので,等級アップの重要性は語るまでもありません。

【参考】等級と労働能力喪失率
障害等級 労働能力喪失率 後遺症慰謝料
1級 100% 2800万円
2級 100% 2370万円
3級 100% 1990万円
5級 79% 1400万円
7級 56% 1000万円
9級 35% 690万円

(2)等級アップのためにすべきこと

1 認定資料の重要性

 高次脳機能障害の等級認定資料となるのは,「日常生活状況報告書」や,医師作成にかかる「神経系統の障害に関する医学的所見」,「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」,「各種神経心理学的検査結果」等ですが,等級アップに重要なのは,まさにそれらの内容と各種資料との整合性です。

2 「日常生活状況報告書」には別紙を

 「日常生活状況報告書」については,患者の,事故後~症状固定までの生活状況を詳細に記載し,事故後の患者の障害の程度および症状の経過を示せることが重要です。これは,患者本人で認識できることに限界がありますので,患者を見守るご家族の方々の真摯な協力が必要となります。

 「日常生活状況報告書」は,通常用いられる雛型がありますが,この空欄に諸症状を書ききることはおよそ不可能です。したがって,諸症状や患者の行動・事件事故などを具体的詳細に示すためには,「別紙」として,ご家族が文章にして,「陳述書」というかたちで提出することが有益です。その際,各種神経心理学的検査結果と,日常生活状況の報告内容に齟齬がないことが重要です。

3 医師の所見はしっかりと記載

 「神経系統の障害に関する医学的所見」,「脳外傷による精神症状等についての具体的所見」については,専門家である医師が作成するものです。一般に,記載内容に信頼性があるといえますが,診察室で限られた時間のみ患者と対面している医師が,毎日患者のそばで生活をしているご家族同様に,患者の症状を把握することは困難です。したがって,これらの所見を記載してもらう際には,日常生活状況報告書の内容をあらかじめ医師に見てもらい,患者の具体的症状を医師にしっかり理解してもらうことが重要です。医師によっては,所見を書き忘れる,症状の把握が足りていない等の可能性もあるので,所見については,患者の症状をしっかり書面に記載してもらうことが重要です。もちろん,各種検査の結果も重要ですが,何よりも医師の所見(診断書や意見書の記載)が重要視されることはもちろんです。

 ご自身の症状に見合った等級の認定を受け,合理的な補償(損害賠償)を受けるためには,この等級認定のための所見を提供してくれる,親身になってくれる医師とのつながりが重要だと思われます。

 また,「記載不備」が理由で等級が変わってくることもあるので,十分かつ的確な「所見」を記載してもらえるべくお願いすることが,等級認定及び等級アップの重要なポイントです。

【参考】日常生活状況報告書

日常生活状況報告書

【参考】神経系統の障害に関する医学的所見

神経系統の障害に関する医学的所見

【参考】脳外傷による神経症状等についての具体的な所見

脳外傷による神経症状等についての具体的な所見


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