交通事故の「同乗者」も慰謝料はもらえる?助手席・後部座席で被害にあったときの補償とは
友人や家族が運転する車で事故にあったとき、「親しい間柄だからこそ、治療費などの請求をしてもいいのだろうか」と一人で悩んでしまう方は少なくありません。
また、同乗者であることを理由に、保険会社から補償を減らされるのではないかと不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
このコラムでは、同乗者の法的立場や損害賠償の請求先、同乗者特有の減額基準について、専門的な視点からわかりやすく解説します。
- 目次
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同乗者の定義(同乗者とは)と法的立場
交通事故における同乗者とは、運転者以外のすべての人を指します。助手席や後部座席に乗っていた人はもちろん、バスやタクシーの乗客も含まれます。
法律上、同乗者は基本的に事故の被害者として扱われ、運転者と同じように保護される立場にあります。たとえ友人の車に好意で乗せてもらっていた場合や、家族が運転する車に乗っていた場合であっても、ケガをしたことに対する損害賠償を請求する権利があります。
交通事故で同乗者が請求できる損害賠償金の種類
同乗者が請求できる損害賠償には、治療費や休業損害、慰謝料などが含まれます。これらは事故にあわなければ支払う必要がなかった費用や、負わずに済んだ精神的な苦痛を補うためのものです。
基本的には、車を運転していた側の自賠責保険や任意保険から支払われることになります。
| 項目 | 内容の概要 |
|---|---|
| 治療関係費 | 診察料、投薬料、手術費、入院費など実費全額。 |
| 通院交通費 | 通院にかかった電車・バス代、状況によりタクシー代やガソリン代。 |
| 付添看護費 | 入院や通院に家族などの付き添いが必要な場合に認められる費用。 |
| 装具・備品代 | ギプス、車椅子、義足、介護用ベッドなどの購入費用。 |
| 休業損害 | ケガの治療のために仕事を休み、収入が減ったことに対する補償。 |
| 逸失利益 | 後遺障害が残ったり、亡くなったりしたことで失われる将来の収入に対する補償。 |
| 入通院慰謝料 | 入院や通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛への補償。 |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことによる精神的苦痛への補償。 |
| 死亡慰謝料 | 死亡したことによる被害者本人および遺族の精神的苦痛への補償。 |
交通事故の状況による損害賠償の請求先
具体的に、事故の状況によって誰に対して請求を行うべきか、いくつかのケースに分けて詳しく見ていきましょう。
| 事故の状況 | 請求先の窓口(保険) | 主な理由・特徴 |
|---|---|---|
| 相手方の過失が100% (追突された場合など) | 相手方の保険会社 | 同乗していた車の運転者に責任がないため、すべての損害を相手方に請求します。 |
| 運転者の過失が100% (単独事故や前方不注視など) | 同乗車の運転者の保険会社 | 運転者が友人や親族であっても、対人賠償保険や人身傷害保険から補償を受けられます。 |
| 双方に過失がある (交差点での出会い頭など) | 相手方、または同乗車の運転者のどちらでも可能 | 「共同不法行為」となり、どちらの保険会社も全額の賠償責任を負います。一般的には相手方の保険に一本化します。 |
相手方の過失が100%のケース
相手方の車にすべての責任がある追突事故などの場合は、相手方が加入している保険会社に対して賠償を請求します。
この場合、自分が乗っていた車の運転者には責任がないため、相手側の保険のみで解決を図ることになります。同乗者は第三者として扱われるため、過失相殺による減額を受けることなく、正当な賠償額を受け取ることが可能です。
運転者の過失が100%のケース
自分が乗っていた車の運転者が単独事故を起こしたり、センターラインを越えて衝突したりした場合は、その運転者の保険会社へ請求します。
運転者が友人や親族であっても、対人賠償責任保険が適用されるため、保険会社から支払いを受ける形になります。
双方に過失があるケース
交差点での出会い頭の事故など、相手方と同乗車の運転者の両方に不注意があったケースです。
この場合、同乗者は双方の運転者に対して損害賠償を請求することができます。これを「共同不法行為」と呼びます。
被害者である同乗者は、どちらか一方に対して損害の全額を請求することも可能ですし、過失の割合に応じてそれぞれに請求することも可能です。
一般的には、手続をスムーズに進めるために、どちらか一方の保険会社に窓口を一本化して対応してもらうことが多くなります。
同乗者自身に事故の責任が発生するケース
同乗者が事故の責任を問われるのは、安全運転を妨げるような行為があったときです。交通事故被害者であっても、運転者の危険な行為を容認したり助長したりした場合には、公平な賠償の観点から一定の責任を負うことになります。
どのような行為が法的に問題視されるのか、典型的な3つのパターンを順に解説します。
| ケース | 具体的な問題行動 | 賠償額や法的責任への影響 |
|---|---|---|
| 飲酒・無免許運転への同乗 | 運転者がお酒を飲んでいる、または免許がないと知りながら同乗する。 | 重大な過失とみなされ、賠償額が大幅に減額される可能性が高い。同乗者自身も道路交通法違反に問われるおそれがある。 |
| 運転操作の妨害 | 走行中にハンドルを動かす、運転者の視界を遮るなどの嫌がらせや悪ふざけ。 | 事故の直接原因を作った当事者としての責任を問われる。自身の賠償金減額だけでなく、相手方への損害賠償を負うリスクもあう。 |
| 危険運転の唆し(そそのかし) | 「もっとスピードを出せ」「無理に追い越せ」など、危険な運転を煽る言動。 | 運転者の判断を誤らせて事故を誘発したとみなされ、過失相殺の対象となる。慰謝料などが減額される要因となる。 |
運転者の飲酒や無免許を知りながら同乗する
運転者が飲酒していることや、免許を持っていないことを知りながら同乗する行為は、重大な過失とみなされます。事故が起きる危険性を十分に予見できたはずだと判断されるため、賠償額が大幅に減額される可能性が高いです。
また、この場合は同乗者自身も道路交通法違反に問われるおそれがあるため、絶対に避けるべきです。
運転者のハンドル操作を妨害する
走行中にふざけてハンドルを動かしたり、運転者の視界を遮ったりする行為は、直接的な事故の原因となるため、同乗者は事故を引き起こした当事者としての責任を重く問われます。状況によっては、相手方の車両に対する損害についても賠償責任を負う可能性があります。
速度超過や危険な運転を唆そそのかす
「もっとスピードを出せ」と急かしたり、無理な追い越しを促したりする言動も、同乗者の過失として評価されます。運転者の判断を誤らせ、事故を誘発したとみなされるため、受け取れる慰謝料などが減額される要因となります。
同乗者が利用できる保険
同乗者がケガをした際に使える保険としては下記のようなものが挙げられます。
| 保険の種類 | 請求先 |
|---|---|
| 自賠責保険 | 相手方が加入している保険 |
| 対人賠償責任保険 | 相手方が加入している保険 |
| 自賠責保険 | 乗っていた車の運転者の加入している保険 |
| 人身傷害補償保険 | 乗っていた車の運転者の加入している保険 |
| 搭乗者傷害保険 | 乗っていた車の運転者の加入している保険 |
| 対人賠償責任保険 | 乗っていた車の運転者の加入している保険 |
| 人身傷害補償保険 | 同乗者ご自身や同乗者のご家族の加入している保険 |
| 弁護士費用特約 | 同乗者ご自身や同乗者のご家族の加入している保険 |
自賠責保険による補償範囲
自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を保障する制度です。同乗者がケガをした場合、治療費や慰謝料などを合わせて最大120万円まで支払われます。これは運転者が家族であっても、法律上の「他人」として扱われるため、基本的には適用対象となります。
人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険の違い
人身傷害補償保険は、過失割合に関係なく、実際の損害額(実損)をカバーしてくれる保険です。
一方で、搭乗者傷害保険は、ケガの部位や程度に応じて、あらかじめ決められた一定額が速やかに支払われるお見舞い金のような性質を持ちます。
両方は併用できることが多いため、それぞれの特徴を活かして請求を行うことが重要です。
| 項目 | 人身傷害補償保険 | 搭乗者傷害保険 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 実際の損害を幅広く補償する | お見舞い金を迅速に支払う |
| 支払われる金額 | 実損払(じっそんばらい) 治療費、休業損害、慰謝料などの実額を、契約した上限額まででカバーする。 | 定額払(ていがくばらい) ケガの部位や入院日数などに応じて、あらかじめ決まった金額。 |
| 支払いのタイミング | 損害額の確定後治療が終わるなどして、すべての損害額が計算できてから。 | 比較的早い怪我の程度が分かった段階で、治療の途中でも支払われることがある。 |
| 過失割合の影響 | 影響を受けない自分たちの側に落ち度(過失)があっても、関係なく全額支払われる。 | 影響を受けない過失に関係なく、契約通りの金額が支払われる。 |
| 補償の範囲 | 手厚い精神的苦痛(慰謝料)なども対象に含まれる。 | 補助的人身傷害保険にプラスして受け取る「お見舞い金」の性質がある。 |
弁護士費用特約の適用範囲
弁護士費用特約は、同乗者自身が加入している保険や、家族の保険に付帯していれば利用できます。これを使えば、相談料や着手金などを保険会社が負担してくれるため、自己負担なしで専門家のアドバイスを受けられます。
同乗者の立場でもこの特約が使えるケースは非常に多く、示談交渉を有利に進めるための大きな助けとなります。
運転者が家族である場合の注意点
運転者が家族である事故では、保険の仕組みが通常とは異なる点に注意が必要です。多くの任意保険には「対人賠償責任保険の免責条項」があり、同居の親族などに対する損害は補償の対象外とされていることが多いからです。
身内同士の事故だからといって、必ずしもメインの保険が使えるとは限りません。家族間の事故でどのような補償が受けられるのか、具体的な保険の種類を確認しましょう。
対人賠償責任保険の免責条項
対人賠償責任保険は、本来「他人の損害」を補填するためのものです。配偶者や親子、同居の親族は「他人」には含まれないと定義されているため、この保険から賠償金を受け取ることができません。ただ、対人賠償が使えない場合でも、他の項目でカバーできるケースがあります。
家族間事故で利用できる保険の種類
家族が運転する車でケガをした場合、主に関わってくるのは「人身傷害補償保険」や「搭乗者傷害保険」です。これらは対人賠償とは異なり、契約車両に乗っていた人の損害をカバーする性質を持っているため、家族間であっても保険金が支払われます。また、強制保険である自賠責保険も、一定の範囲内であれば活用することが可能です。
自賠責保険の被害者請求を行う手順
①被害者請求に必要な書類を揃える
自賠責保険への請求は、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」だけでなく、被害者が直接行う「被害者請求」という方法があります。被害者請求を利用すると、治療費の支払いを待たずに当座の費用を受け取れるなどのメリットがあります。
手続には手間がかかりますが、透明性の高い審査が期待できるため、有効な選択肢の一つです。
②請求書類を保険会社へ送付する
必要な書類がすべて揃ったら、加害者が加入している自賠責保険会社へ郵送します。書類が受理されると、損害保険料率算出機構による調査が行われ、ケガの程度に応じた賠償額が決定されます。
審査結果に合意すると示談成立となり、指定した口座に保険金が振り込まれます。
同乗中の交通事故に関するよくある質問
- 友人の車の助手席で事故にあいました。ケガの治療費などを請求したいのですが、その場合、友人に多額の支払いをさせることになりますか?
-
基本的にはご友人が加入している「任意保険」から支払われるため、ご友人個人の財布から直接多額の現金を出すケースは稀です。具体的には、「対人賠償保険」や「人身傷害補償特約」などが適用されます。
ただし、ご友人の保険を使うと翌年からの保険等級が下がり、保険料が上がる可能性があります。 - 助手席に同乗していた同乗者ですが、「過失相殺」として私の賠償金が減らされることはありますか?
-
通常は「過失ゼロ」として扱われます。
ただし、以下のようなケースでは、同乗者にも責任があるとみなされ、受け取れる金額が減額(過失相殺)される可能性があります。- 危険の承知: 運転者がお酒を飲んでいると知っていて同乗した(飲酒運転の容認)
- 運転への干渉: ハンドル操作を邪魔したり、運転者を著しく激昂させたりした
- 定員オーバー: 定員を超えていることを知りながら同乗した
- シートベルト非着用: シートベルトをしていれば防げたケガだった
など
- 相手車両と自分の乗っていた車両、どちらの自賠責保険に賠償請求をすればいいのでしょうか?
-
同乗者の場合、「加害者側」と「自分が乗っていた車両側」の両方の自賠責保険を合算して利用できる場合があります。
複数の車が絡む事故(共同不法行為)の場合、それぞれの自賠責保険の限度額(ケガなら120万円×2=240万円まで)が適用されるケースがあり、治療が長引く際などに有利に働くことがあります。
弁護士に示談交渉を依頼するメリット
弁護士基準による増額の可能性
弁護士基準(裁判所基準)を用いると、自賠責基準や任意保険会社の独自基準に比べて、慰謝料などの項目が増額される可能性があります。特に後遺障害が残るような重大な事故では、大きな差が出ることもあります。
正当な権利として、被害に見合った適切な補償を受けるためには、弁護士基準での交渉を検討することが大切です。
運転者との人間関係を維持できる
「友人を訴えるようで気が引ける」と悩む方も多いですが、弁護士は主に保険会社を相手に交渉を進めます。弁護士が客観的な立場で「これは被害者の正当な権利です」と説明し、事務的に手続を完了させることで、当事者同士の感情的な対立を防げる傾向があります。大切な人との関係を守りながら、将来に備えた治療費を確保するためにも、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
事故の同乗者は、運転者が誰であっても正当な補償を受ける権利があります。相手方の保険だけでなく、自身や家族が加入する「人身傷害補償保険」などを活用すれば、周囲に負担をかけずに治療費を確保することも可能です。また、不当な減額を防ぎ、適切な「弁護士基準」で解決するためには、専門知識に基づいた対応が欠かせません。
もし、同乗者としての補償内容や、知人・親族とのやり取りでお困りのことがあれば、交通事故被害に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
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