交通事故の過失割合の修正要素とは?概要や具体例、加算・減算の目安をご紹介

過失割合を決めるには、まず過去の裁判例などを参考にして基本過失割合を決め、そのあと事故特有の事情を考慮して修正を行います。
この事故特有の事情が「過失割合の修正要素」です。
たとえば、加害者側がスピード違反をしていた場合には、加害者の過失が加算されます。
ですから、適切な過失割合で示談したいなら、「過失割合の修正要素」について知っておく必要があるのです。
このコラムでは、過失割合の修正要素の概要や具体例、過失割合について示談交渉を行う際の注意点などについて解説します。
- この記事でわかること
-
- 交通事故の過失割合の修正要素の概要
- 過失割合の修正要素の具体例
- 過失割合について弁護士に相談するメリット
- 目次
交通事故の過失割合を決める手順
まず、交通事故の過失割合を決める手順を知っておきましょう。
過失割合は、下記のような流れで決めていきます。
- 当事者間で事故状況を擦り合わせて明確にする
- 事故の状況や過去の裁判例をもとに「基本過失割合」を出す
- 具体的な行為態様などをもとに「修正要素」を検討する
- 話合いを繰り返し、当事者双方の合意のもとに最終的な過失割合を決める
過失割合の決め方について詳しく知りたい方は、下記コラムをご覧ください。
基本過失割合と修正要素
過失割合を決めるのに必要な「基本過失割合」と「修正要素」について解説します。
基本過失割合とは?
「基本過失割合」は、過失割合を算定する際に基礎とする数値のことで、事故形態によって類型的に決まります。
事故形態とは、下記のようなことです。
- 事故当時者の乗り物(自動車同士・バイク対自動車・自動車対歩行者など)
- 事故の発生場所(交差点やT字路など)
- 信号機の有無や色
- 事故の詳細(正面衝突、追突事故、出会い頭など)
など
例1)同じ道路幅、信号機・一時停止の規制・優先道路なしで直進車と右折車の事故
直進車が3割、右折車が7割の過失

例2)赤信号で停車中の自動車と後方車の追突事故(もらい事故)
追突車が10割、非追突車が0割の過失

修正要素とは?
修正要素とは、過失割合を修正する事故当時の個別具体的な事情のことで、加算要素と減算要素があります。
同じような種類の事故でも、基本過失割合をそのまま当てはめられる事故は少なく、態様は個々に違います。
ですから、基本過失割合に修正要素を適用して過失割合を決めるのです。
ただし、何でもかんでも修正できるというわけではなく、修正できるのは修正要素にあたる状況があった場合です。主な修正要素としては、次のものが挙げられます。
修正要素の具体例
下記のような実際の事故状況(修正要素)を基本過失割合に適用し、加算・減算して適切な過失割合を決定します。
- 事故が起きた時間帯
- 交通事故の発生が夜間(日没から日の出までの間)
- 事故の発生場所
-
- ■住宅街や商店街
人の横断や通行が激しい場所または頻繁に予測される場所 - ■幹線道路
車道と歩道の区別があって、車道幅員がおおむね14m以上(片側2車線以上)の道路であり、通行量の多い国道や県道など - ■歩車道の区別がない道路
歩行者の通行帯と車の通行帯とが分離されていない道路 - ■左右の見通しがきかない交差点
交差点進入直前において、沿道の建物や駐車車両、看板その他道路の状況などにより、車両が進行する道路と左右に交差する道路の見通しがきかない交差点 - など
- ■住宅街や商店街
- 被害者の属性
-
- ■幼児(6歳未満の者)
- ■児童(6歳以上13歳未満の者)
- ■高齢者(おおむね65歳以上の者)
- ■身体障碍者(車いす利用者、視覚障碍者、聴覚障碍者など)
- 事故状況
-
- ■歩行者が車の直前・直後を横断した
- ■歩行者が立ち止まった、もしくは後退した
- ■歩行者の急な飛び出し
- ■歩行者のふらふら歩き
- 車種
- 大型車
- 著しい過失
-
- ■酒気帯び運転
- ■脇見運転などの著しい前方不注視
- ■15km以上30km未満の速度違反(高速道路を除く)
- など
- 重過失(かなりの不注意)
-
- ■酒酔い運転
- ■居眠り運転
- ■無免許運転
- ■時速30km以上の速度違反(高速道路を除く)
- など
交通事故のケース別の修正要素
自動車同士、自動車とバイク、自動車と自転車の交通事故について、それぞれ、基本的な過失割合の修正要素を見ていきましょう。
修正要素ごとに「-5」「+10」といった修正幅が定められており、自動車同士の事故では5%~20%程度です。
自動車同士の交通事故の修正要素
自動車同士の事故について、代表的な過失割合の修正要素をご紹介します。
修正要素 | 加算される側 |
---|---|
ウィンカーの合図なし | 合図なし右折車 |
大型車 | 事故の危険性を高めた大型車 |
見通しがきく交差点 | 右方車 |
右折禁止違反 (右折方向への進行が禁止されている交差点で右折した) | 右折車 |
徐行なし (交差点において直進車の進路妨害をした) | 徐行しない右折車 |
右折 (大回り右折、早回り右折、直近右折) | 危険な右折をした右折車 |
夜間 (同幅員の道路の交差点における事故の場合) | 右方車 |
道路交通法50条違反の直進 (交差点などへの進入が禁止される状況で交差点へ進行した場合) | 直進車 |
著しい過失、重過失 | 著しい過失や重過失があった車 |
シートベルト、チャイルドシート未着用 | シートベルトを着用していなかった車 |
自動車とバイクの交通事故の修正要素
自動車とバイクの事故の過失修正要素は、基本的に自動車同士の事故のケースと同様です。
修正要素 | 加算される側 |
---|---|
ヘルメット未着用 | バイク |
重過失(高速道路でのヘルメット不着用) | バイク |
自動車と自転車の交通事故の修正要素
修正要素 | 加算される側 |
---|---|
著しい過失 (自転車側の並進や、二人乗り、片手運転) | 自転車 |
重過失 (自転車側の酒酔い運転や、ピストなどの制動装置不良) | 自転車 |
自転車が自転車横断帯や横断歩道を通行中 | 自動車 |
自転車の乗り手が児童や幼児、高齢者 | 自動車 |
自動車と歩行者の交通事故の修正要素
修正要素 | 加算される側 |
---|---|
夜間 | 歩行者 |
幹線道路 | 歩行者 |
歩行者の危険な横断 (車の直前直後での道路の横断、横断禁止場所での横断、急な飛び出し、など) | 歩行者 |
歩行者が児童・高齢者、幼児・身体障碍者など | 自動車 |
集団横断、通行 | 自動車 |
過失割合について示談交渉を行う際の注意点
過失割合について示談交渉を行うにあたり、注意すべきポイントをご紹介します。
- 過失割合は当事者同士の話合いが基本
- 示談成立後は撤回できない
- 賠償金の請求には時効(請求期限)がある
1.過失割合は当事者同士の話合いが基本
過失割合は、基本的に当事者同士の話合いで決めるものであり、加害者側の保険会社が提案してきてもそのまま受け入れる必要はありません。
提案された過失割合に納得できない場合には、修正要素があることなどを主張し、適切な過失割合で合意できるようにするとよいでしょう。
ただし、加害者がわき見運転をしていたなど、あなたに有利となる事情について先方が認めないときには、被害者の方がドライブレコーダーの映像などの証拠を示して立証することが必要です。
2.示談成立後は撤回できない
いったん示談が成立したら撤回できないのが原則です。よほどの理由がない限りやり直しはできませんので慎重に進めるようにしましょう。
そのため、過失割合や賠償金額の妥当性などについてしっかりと理解し、納得できない点については示談前にきちんと主張することが大切です。
3.賠償金の請求には時効(請求期限)がある
交通事故の損害賠償請求権には時効があります。
加害者と損害を知ったときから、物損(事故でケガをしなかった場合)で3年、人身事故(事故でケガをした場合)で5年の時効があります。
事故の内容 | 時効の起算点 (カウントのスタート) | 時効期間 |
---|---|---|
物損事故 | 事故の翌日 | 3年 |
人身事故 (後遺障害がない場合) | 事故の翌日 | 5年 |
人身事故 (後遺障害がある場合) | 症状固定時の翌日 | 5年 |
- ※2020年4月1日以降の交通事故の場合
時効が完成すると、基本的には、賠償金を請求できなくなってしまいます。期間内に示談を成立させるようにしましょう。
なお、話合いがうまくいかず、期間内での示談成立が難しいと思われるときは、時効の完成を阻止する方法があります。ぜひお早めに弁護士にご相談ください。
過失割合を修正したい場合は弁護士に相談
過失割合や修正要素は、最終的な賠償金に影響するものであるため、きちんと理解したうえで示談交渉に臨む必要があります。
しかし、被害者の方が交渉に慣れている加害者側の保険会社の担当者と示談交渉するのは負担が大きいでしょう。
また、「よくわからないから」といって、先方が提案するままの過失割合を承諾してしまうと、最終的に受け取れる賠償金額が減ってしまうことになります。
交通事故に詳しい弁護士であれば、修正要素を考慮した過失割合を判断し、適切な賠償金を受け取れるよう、的確なアドバイスをすることが可能です。
示談交渉をする前に、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
まとめ
修正要素は基本過失割合を左右する重要な役割を持っています。
しかし、過失割合や基本過失割合、修正要素は複雑で、被害者の方がご自身で理解し、適切な過失割合を導き出すのは難しいことと思います。
「過失割合に納得できないけれど、自分の事故の基本過失割合や修正要素がどうなるのかわからない」という方は、弁護士などの専門家に相談し、アドバイスを受けることをおすすめします。
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