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下肢の後遺障害の後遺障害等級認定と賠償金
下肢の後遺障害とは
下肢とは股関節から足指までの部分を指します。
後遺障害等級認定においては、股関節・ひざ関節・足関節(足首)を下肢3大関節と呼びます。
下肢の後遺障害は、交通事故のケガにより、下肢3大関節に麻痺や変形が残って動かせなくなった状態などを指します。
下肢の後遺障害は欠損障害、機能障害、変形障害の3種類に分けられ、それぞれ障害の程度別に等級が定められています。
なお、足関節(足首)から先の後遺障害は、下肢とは別の「足指」の後遺障害として認定の対象となります。
下肢の後遺障害と認められ得る主な後遺症
【欠損障害】
(例)片足を失ってしまった
【機能障害】
(例)膝の曲げ伸ばしが難しくなった
【変形障害】
(例)足首の骨が曲がったまま癒合してしまった
など
下肢機能障害の後遺障害等級認定と賠償金
交通事故によるケガで後遺症が残った場合、その症状の重さによって1級~14級の等級に分類したものを後遺障害等級といいます。
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。
等級に応じてこの金額が変わるため、適切な等級認定を受けることが重要です。
下肢の後遺障害の場合の後遺障害等級
下肢の欠損障害
等級 | 内容 |
---|---|
1級(別表2) | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
2級(別表2) | 両下肢を足関節以上で失ったもの |
4級 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
5級 | 1下肢を足関節以上で失ったもの |
7級 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
下肢の機能障害
等級 | 内容 |
---|---|
1級(別表2) | 両下肢の用を全廃したもの |
5級 | 1下肢の用を全廃したもの |
6級 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
【用を全廃した】
股関節・ひざ関節・足関節のすべてが動かせない状態です。
【用を廃した】
関節が硬直や麻痺により動かせない状態、もしくは人工関節・人口骨頭を入れた関節の可動域が、ケガをしていない側の関節に比べて1/2以下に制限されている状態です。
【著しい運動障害を残す】
ケガをした側の関節の可動域が、ケガをしていない側の関節に比べて1/2以下に制限されている状態です。
【機能に障害を残す】
ケガをした側の関節の可動域が、ケガをしていない側の関節に比べて3/4以下に制限されている状態です。
下肢の変形障害
等級 | 内容 |
---|---|
7級 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級 | 1下肢に偽関節を残すもの |
12級 | 長管骨に変形を残すもの |
下肢の後遺障害が後遺障害として認定されるためには、下記の2つの要件を満たしていることが必要です。
- 下肢の後遺障害が残っていること
- 交通事故との因果関係が証明できること
後遺障害慰謝料について
後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの算定基準があります。
このなかで、通常は弁護士基準がもっとも高額となります。

ただ、加害者側の保険会社の提示してくる金額は、自賠責保険基準もしくは任意保険基準によることが多く、弁護士基準よりかなり低額となります。
そのため、弁護士基準で算定し、加害者側の保険会社と交渉することが大切です。
下肢の後遺障害の場合の後遺障害慰謝料
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級(別表2) | 1,150万円(1,100万円) | 2,800万円 |
2級(別表2) | 998万円(958万円) | 2,370万円 |
4級 | 737万円(712万円) | 1,670万円 |
5級 | 618万円(599万円) | 1,400万円 |
6級 | 512万円(498万円) | 1,180万円 |
7級 | 419万円(409万円) | 1,000万円 |
8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
- ※自賠責保険基準による慰謝料額について、別表第1・別表第2の1級~3級に該当する方で、被扶養者がいるときは一定額増額されます。
また、別表第1に該当する方は、初期費用等として205~500万円が増額されます。
後遺障害逸失利益について
後遺障害逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残った場合に、将来得られたはずだった利益を補償するものです。
後遺障害の逸失利益は、以下の計算式によって算出されます。
基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
下肢の後遺障害の場合の労働能力喪失率
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
10級 | 27% |
12級 | 14% |
労働能力喪失期間とライプニッツ係数
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
---|---|
1年 | 0.9709 |
10年 | 8.5302 |
15年 | 11.9379 |
30年 | 19.6004 |
50年 | 25.7298 |
80年 | 30.2008 |
後遺障害等級認定のポイント
①後遺症を証明できる検査を受ける
後遺障害認定を受けるためには、レントゲン検査やMRI検査、CT検査などを受け、その画像所見により下肢の器質的な損傷(骨折、脱臼や神経の損傷など)による影響が関節などに認められることが必要です。
②関節の可動域制限を測定する
下肢の後遺障害のなかで、争いが起きる可能性が高いのは「下肢の機能障害」です。
下肢の機能障害が後遺障害と認定されるには、下肢の機能障害の有無を判断するための検査を受け、客観的な他覚所見を得ることが必要です。
下肢の機能障害は、原則として、主要運動(各関節における日常の動作においてもっとも重要な動き)の可動域制限の程度によって評価されます。
ただし、例外的に参考運動(日常動作において主要運動ほどには重要でない動き)の可動域の制限の程度も考慮されることがあります。
関節可動域は、障害のある側の角度と、健側(ケガをしていない側)とを比較して評価するのが一般的です。
可動域の角度により後遺障害等級が変わってくるため、医師に正確に測定してもらうことが大切です。
関節の部位に応じて確認する主要運動と参考運動は、下記のとおりです。
関節の部位 | 主要運動 | 参考運動 |
---|---|---|
股関節 | 屈曲・伸展、外転・内転 | 外旋・内旋 |
ひざ関節 | 屈曲・伸展 | なし |
足関節(足首) | 屈曲・伸展 | なし |
股関節の可動域測定

屈曲
体幹と平行な線を基本軸としながら、大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)を移動軸として測定します。
骨盤とせき柱を充分に固定し、背臥位や膝屈曲位で行います。
伸展
体幹と平行な線を基本軸としながら、大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)を移動軸として測定します。
骨盤とせき柱を充分に固定し、腹臥位や膝伸展位で行います。
外転
仰向けに寝た状態で、股関節を外側に開くように動かして測定します。
参考値は45度です。
内転
仰向けに寝た状態で、股関節を内側に足を閉じるように動かして測定します。
参考値は20度です。
外旋・内旋
仰向けに寝た状態で、片足を上に上げてひざ関節を90度に曲げ、太腿・ひざを軸にして左右へ回旋させて測定します。
参考値はともに45度です。
ひざ関節の可動域測定

屈曲
ひざを曲げるように動かして測定します。
参考値は130度です。
伸展
ひざを伸ばす方向へ動かして測定します。
参考値は0度です。
足関節(足首)の可動域測定

屈曲
足首を伸ばすように動かして測定します。
参考値は45度です。
伸展
足首を曲げる方向へ動かして測定します。
参考値は20度です。
③被害者請求という申請方法を選ぶ
後遺障害等級認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。
事前認定は、加害者側の保険会社に申請手続を任せられるため手間はかかりません。
ただ、必要最低限の書類で申請されて期待どおりの結果が得られない可能性があります。

これに対して、被害者請求は被害者の方ご自身で書類作成や資料収集を行うため、手間と時間はかかりますが、書類の不備や不足があっても対応できますし、認定を受けるうえで有利となる資料を追加することも可能です。

以上のことから、すべて被害者の方ご自身で対応できる被害者請求のほうが、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
④認定の申請を弁護士に依頼する
後遺障害等級認定はケガの部位によって認定要件が違います。
これに伴い、チェックすべき事項も異なってくることから、必要十分な内容の後遺障害診断書が作成されているかを被害者の方ご自身で確認し、可否を判断することは難しいでしょう。
後遺障害等級認定に詳しい弁護士に後遺障害診断書を確認してもらうことをおすすめします。
アディーレにご依頼いただければ認定に必要なサポートをいたします!
- 後遺障害等級認定を想定した適切な通院頻度のアドバイス
- 申請に必要な資料の精査・検討
- 申請手続の代行
- 認定結果に疑問があった際の異議申立ての代行