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脊髄損傷の後遺障害等級認定と賠償金
脊髄損傷とは
脊髄損傷とは、交通事故で外部からの強い力が加わり、脊柱の脱臼や骨折により脊髄が圧迫されて損傷した状態を指します。
脊髄は、脳からの指令を体の各部位へ伝える重要な役割を担っており、損傷すると損傷部位から下の感覚麻痺や運動麻痺、排泄機能の障害などの症状が現れます。
また、末梢神経とは異なり、一度傷ついてしまうと修復や再生はほぼ不可能です。
なお、後遺障害診断書には、頸髄損傷、胸髄損傷、腰髄損傷、中心性脊髄損傷といった傷病名で記載されることもあります。
脊髄損傷の分類
脊髄損傷は、損傷の程度により「完全損傷」と「不完全損傷」に分けられます。
また、麻痺の範囲により「四肢麻痺」、「対麻痺」、「片麻痺」、「単麻痺」の4種類に、麻痺の程度に応じて「高度」、「中等度」、「軽度」の3種類に分けられます。
損傷の程度による分類
項目 | 完全損傷 | 不完全損傷(不全損傷) |
---|---|---|
状態 | 脊髄の機能が完全に壊れ、脳から末梢神経への伝達機能が断たれている | 脊髄の一部が損傷したものの、一部の伝達機能は残っている |
症状 | ・損傷部位以下の身体機能が完全に麻痺し、運動機能や感覚機能が失われている ・自律神経系も損傷し、体温調節機能や代謝機能が低下している | ・麻痺やしびれ、筋力低下により、運動機能に障害が出ている ・巧緻運動障害や歩行障害など ・知覚障害(知覚過敏/知覚鈍麻/知覚消失や異常知覚)を併発することもある |
日常生活への影響 | 日常生活が困難となり、介護が必要になるケースもある | 日常生活に支障が生じ、リハビリが必要になることが多い |
麻痺の範囲による分類
分類 | 麻痺の範囲 |
---|---|
四肢麻痺 | 両側の四肢すべての麻痺 |
片麻痺 | 片側の上下肢の麻痺 |
単麻痺 | 上肢又は下肢の一肢のみの麻痺 |
対麻痺 | 両下肢または両上肢の麻痺 |
麻痺の程度による分類
分類 | 麻痺の内容 |
---|---|
高度の麻痺 | 障害のある手足を動かしたり、動きを止めておいたりすることがほぼ不可能で、基本動作ができない状態 |
中等度の麻痺 | 障害のある手足を動かしたり、動きを止めておいたりすることが難しく、基本動作がかなり制限されてしまう状態 |
軽度の麻痺 | 障害のある手足を動かしたり、動きを止めておいたりすることが多少難しく、基本動作は行えるものの、細かい動作ができない、素早く行えないなどの制限がある状態 |
脊髄損傷による主な後遺症
完全損傷
- 手足が動かない
- 体温調節ができない
- 人工呼吸器なしでは呼吸ができない など
不完全損傷(不全損傷)
- 箸が上手に持てない
- 字を書くことができない
- 服のボタンが留めにくい など
脊髄損傷の後遺障害等級認定と賠償金
交通事故によるケガで後遺症が残った場合、その症状の重さによって1級~14級の等級に分類したものを後遺障害等級といいます。
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。
等級に応じてこの金額が変わるため、適切な等級認定を受けることが重要です。
脊髄損傷の場合の後遺障害等級
脊髄損傷の後遺障害等級は、麻痺等が生じた範囲(四肢麻痺、対麻痺、片麻痺、単麻痺)やその程度(高度、中等度、軽度)に応じて認定されます。
また、それらに加えて、どのような周囲の介護が必要であるかも考慮されます。
等級 | 内容 |
---|---|
1級(別表1) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級(別表1) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
脊髄損傷が後遺障害として認定されるためには、下記の2つの要件を満たしていることが必要です。
- 「麻痺等が生じた範囲」や「麻痺の程度」が客観的に認められること
- 交通事故との因果関係が証明できること
等級ごとの違い
脊髄損傷で認定されうる後遺障害等級は、介護が必要かどうかや、生活や仕事への影響の度合いで決まります。
1級(別表1)、2級(別表1)に該当する場合、介護が必要な状態です。
1級と2級の違いは、常に介護が必要になるか随時介護が必要になるかの差です。
3級から9級に該当する場合、常に介護が必要な状態ではありませんが、社会生活や仕事において何らかの支障が生じます。
具体的には、3級では就労が極めて困難な状態ですが、等級の数字が大きくなるにつれて労働能力の制限が軽くなり、9級であれば働くことはできるものの、仕事内容に一定の制限がかかったり、効率や持続力に問題が出たりする状態です。
後遺障害慰謝料について
後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの算定基準があります。
このなかで、通常は弁護士基準がもっとも高額となります。

ただ、加害者側の保険会社の提示してくる金額は、自賠責保険基準もしくは任意保険基準によることが多く、弁護士基準よりかなり低額となります。
そのため、弁護士基準で算定し、加害者側の保険会社と交渉することが大切です。
脊髄損傷の場合の後遺障害慰謝料
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級(別表1) | 1,650万円(1,600万円) | 2,800万円 |
2級(別表1) | 1,203万円(1,163万円) | 2,370万円 |
3級 | 861万円(829万円) | 1,990万円 |
5級 | 618万円(599万円) | 1,400万円 |
7級 | 419万円(409万円) | 1,000万円 |
9級 | 249万円(245万円) | 690万円 |
12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
- ※自賠責保険基準による慰謝料額について、別表第1・別表第2の1級~3級に該当する方で、被扶養者がいるときは一定額増額されます。
また、別表第1に該当する方は、初期費用等として205~500万円が増額されます。
後遺障害逸失利益について
後遺障害逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残った場合に、将来得られたはずだった利益を補償するものです。
後遺障害の逸失利益は、以下の計算式によって算出されます。
基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
脊髄損傷の場合の労働能力喪失率
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級(別表1) | 100% |
2級(別表1) | 100% |
3級 | 100% |
5級 | 79% |
7級 | 56% |
9級 | 35% |
12級 | 14% |
労働能力喪失期間とライプニッツ係数
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
---|---|
1年 | 0.9709 |
10年 | 8.5302 |
15年 | 11.9379 |
30年 | 19.6004 |
50年 | 25.7298 |
80年 | 30.2008 |
介護費用について
後遺障害1級~3級に認定され、医師の指示もしくは症状の程度により介護の必要がある場合には、被害者の方の介護に必要な将来の介護費用を請求することができます。
将来の介護費用には下記のものがあります。
【将来介護費】
将来の介護に必要となる費用
例)
・看護師・介護福祉士などによる介護サービスを受ける費用(10,000円~30,000円/日)
・家族などの近親者が介護を行う場合の日額(8,000円/日)
【消耗品費】
おむつなど
【自宅改装費等】
車両の改造費や自宅(出入口・トイレ・風呂場など)の改築費用
【器具等購入費】
介護のために必要となる器具や装具(介護ベッドや車いすなど)の購入費用・買い替え費用・レンタル費用
後遺障害等級認定のポイント
①早い段階から精度の高いMRIで画像を撮影する
脊髄損傷における後遺障害の等級認定の場合、脊髄損傷を立証する根拠としてMRIによる画像所見が重視されます。
脊椎の骨折を伴う損傷であればレントゲンで確認できますが、中心性脊髄損傷のような不完全損傷では損傷部位を見逃されがちだからです。
ですから、交通事故にあったら、なるべく早い段階からMRIで画像を撮影しておくことが大切です。
また、MRIによる画像撮影であっても、解像度が低いと腕や手指などの上肢のしびれや麻痺が単なるむち打ち損傷と診断され、脊髄損傷が見逃されてしまうこともあります。
できる限り精度の高いMRIで画像撮影をするようにしましょう。
②各種の神経症状テストを受ける
後遺障害の等級認定を獲得するには、認定に必要な各種の神経症状テストを受けることが大切なポイントです。
脊髄損傷の有無が画像ではわかりにくいケースにおいて、麻痺、痛み、痺れなどといった自覚症状の裏付けとすることが可能です。
主な神経症状テストは下記です。
神経症状テスト | テストの内容 |
---|---|
反射テスト | 肘や膝などの腱をゴムハンマーでたたき、腱反射が正常か否かを調べます。 ・ホフマン反射 ・トレムナー反射(上肢) ・バビンスキー反射 ・クローヌス反射(下肢) これらの反射テストは、患者の意思に左右されにくいため、脊髄損傷の後遺障害を認定するうえで有効的な検査といえます。 |
徒手筋力テスト | 筋力がどの程度低下しているのかを確認します。 |
筋萎縮検査 | 左右の手足の周囲径を計測し、筋肉のやせ細り具合を確認します。 |
知覚検査 | 触覚、痛覚、温度覚、振動覚、位置覚に異常がないかを確認します。 |
手指巧緻運動検査 | 箸の使用、ボタンの掛け外し、ひも結び、書字といった、手指の細かい作業や動作に障害がないかを確認します。 |
③脊髄損傷に詳しい専門医の診察を受ける
交通事故による受傷のなかでも、脊髄損傷は重篤な症状であり、後遺障害の等級認定を獲得するための立証は簡単ではありません。
脊髄損傷に詳しい専門医の診察を受け、症状に合わせて適切な検査を行い、検査結果を明確に診断書に記載してもらうようにしましょう。
④被害者請求という申請方法を選ぶ
後遺障害等級認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。
事前認定は、加害者側の保険会社に申請手続を任せられるため手間はかかりません。
ただ、必要最低限の書類で申請されて期待どおりの結果が得られない可能性があります。

これに対して、被害者請求は加害者側の保険会社を介さずに書類作成や資料収集を行うため、手間と時間はかかりますが、書類の不備や不足があっても対応できますし、認定を受けるうえで有利となる資料を追加することも可能です。

以上のことから、すべて被害者側で対応できる被害者請求のほうが、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
⑤認定の申請を弁護士に依頼する
後遺障害等級認定はケガの部位によって認定要件が違います。
これに伴い、チェックすべき事項も異なってくることから、必要十分な内容の後遺障害診断書が作成されているかを被害者の方の家族などが確認し、可否を判断することは難しいでしょう。
後遺障害等級認定に詳しい弁護士に後遺障害診断書を確認してもらうことをおすすめします。
アディーレにご依頼いただければ認定に必要なサポートをいたします!
- 後遺障害等級認定を想定した適切な通院頻度のアドバイス
- 申請に必要な資料の精査・検討
- 申請手続の代行
- 認定結果に疑問があった際の異議申立ての代行