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遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級認定と賠償金

目次

遷延性意識障害とは

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)は、いわゆる「植物状態」のことを指します。
交通事故による頭部外傷などによって、脳に何らかの重い障害が残り、昏睡状態になったあと、意思疎通や移動がまったくできない、排せつなどがご自身でできないなどの寝たきりの状態です。

似ているものに「脳死」がありますが、「脳幹が機能しているか」「回復の見込みがあるか」の点で遷延性意識障害(植物状態)と違います。

項目遷延性意識障害
(植物状態)
脳死
状態意識はないが、生命維持に必要不可欠な脳幹機能は残っている脳全体の機能が完全に停止
自発呼吸可能な場合が多い不可能(人工呼吸器が必要)
回復の可能性ほとんど見込みはないまったくない

遷延性意識障害(植物状態)と認められ得る主な後遺症

遷延性意識障害(植物状態)は、治療を行ったにもかかわらず、下記の6項目すべての状態が3ヵ月以上続いている場合(日本神経外科学会)に認められます。

  1. 自力で移動できない
  2. 自力で食べることができない
  3. 大小便を失禁している
  4. 目はものを追うが認識はできない
  5. 簡単な命令(手を握る、目を開ける、など)には応ずることもあるがそれ以上の意思の疎通ができない
  6. 声を出すが意味のある発語はできない

など

遷延性意識障害(植物状態)は、交通事故の後遺障害のなかでも極めて重篤な後遺障害の一つであり、被害者の方だけではなく、介護するご家族の負担も大きいです。

遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級認定と賠償金

交通事故によるケガで後遺症が残った場合、その症状の重さによって1級~14級の等級に分類したものを後遺障害等級といいます。
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

等級に応じてこの金額が変わるため、適切な等級認定を受けることが重要です。

遷延性意識障害の場合の後遺障害等級

等級内容
1級(別表1)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

遷延性意識障害(植物状態)が後遺障害として認定されるためには、下記の2つの要件を満たしていることが必要です。

  1. 日本神経外科学会が定義する6項目すべての状態が3ヵ月以上続いていること
  2. 交通事故との因果関係が証明できること

後遺障害慰謝料について

後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つの算定基準があります。
このなかで、通常は弁護士基準がもっとも高額となります。

ただ、加害者側の保険会社の提示してくる金額は、自賠責保険基準もしくは任意保険基準によることが多く、弁護士基準よりかなり低額となります。
そのため、弁護士基準で算定し、加害者側の保険会社と交渉することが大切です。

遷延性意識障害(植物状態)の場合の後遺障害慰謝料

後遺障害等級自賠責保険基準弁護士基準
1級(別表1)1,650万円(1,600万円)2,800万円
  • ()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
  • 自賠責保険基準による慰謝料額について、別表第1・別表第2の1級~3級に該当する方で、被扶養者がいるときは一定額増額されます。
    また、別表第1に該当する方は、初期費用等として205~500万円が増額されます。

後遺障害逸失利益について

後遺障害逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残った場合に、将来得られたはずだった利益を補償するものです。

後遺障害の逸失利益は、以下の計算式によって算出されます。

基礎収入額 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

遷延性意識障害(植物状態)の場合の労働能力喪失率

後遺障害等級労働能力喪失率
1級(別表1)100%

労働能力喪失期間とライプニッツ係数

労働能力喪失期間ライプニッツ係数
1年0.9709
10年8.5302
15年11.9379
30年19.6004
50年25.7298
80年30.2008

介護費用について

後遺障害1級に認定され、医師の指示もしくは症状の程度により介護の必要がある場合には、被害者の方の介護に必要な将来の介護費用を請求することができます。

将来の介護費用には下記のものがあります。

【将来介護費】
将来の介護に必要となる費用
例)
・看護師・介護福祉士などによる介護サービスを受ける費用(10,000円~30,000円/日)
・家族などの近親者が介護を行う場合の日額(8,000円/日)

【消耗品費】
おむつなど

【自宅改装費等】
車両の改造費や自宅(出入口・トイレ・風呂場など)の改築費用

【器具等購入費】
介護のために必要となる器具や装具(介護ベッドや車いすなど)の購入費用・買い替え費用・レンタル費用

請求できる可能性のあるその他の賠償金

【住宅・車の改造費】
介護のために必要となる自宅や自動車の改造費です。

【成年後見人選任の申立費用】
被害者の方が成人の場合に必要な、成年後見人の申立てにかかる費用です。
遷延性意識障害(植物状態)の場合、被害者の方ご本人は意思表示ができません。
被害者の方が未成年の場合は親権者(父母)が法定代理人として賠償金請求などを行いますが、被害者の方が成人の場合には、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要があります。

【近親者の慰謝料】
家族が重症を負った場合に、近親者が受ける精神的ショックを補償する慰謝料です。

後遺障害等級認定のポイント

①頭部MRIなどで脳の状態を撮影する

遷延性意識障害(植物状態)が要介護の後遺障害等級として認定されるためには、頭部MRIや頭部CTなどで脳の状態を撮影し、脳の損傷(脳挫傷痕、脳内出血、脳萎縮)を画像で確認できることが重要です。

後遺障害等級認定に必要な後遺障害診断書に、他覚的所見や検査結果が、脳波検査・画像検査によって客観的に把握した内容や検査データとともに、正確に記載されている必要があるからです。

②症状の程度を立証できる資料を作成する

症状の程度を立証するには、主治医が作成する「神経系統の障害に関する医学的所見」、「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」、「各種神経心理学的検査結果」などを用意します。

また、家族などが被害者の方の症状の経過など記入する「日常生活状況報告書」や、介護内容の詳細や程度を証明するための書面や映像なども重要な資料となります。

③被害者請求という申請方法を選ぶ

後遺障害等級認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。

事前認定は、加害者側の保険会社に申請手続を任せられるため手間はかかりません。
ただ、必要最低限の書類で申請されて期待どおりの結果が得られない可能性があります。

これに対して、被害者請求は加害者側の保険会社を介さずに書類作成や資料収集を行うため、手間と時間はかかりますが、書類の不備や不足があっても対応できますし、認定を受けるうえで有利となる資料を追加することも可能です。

以上のことから、すべて被害者側で対応できる被害者請求のほうが、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります。

④認定の申請を弁護士に依頼する

後遺障害等級認定はケガの部位によって認定要件が違います。
これに伴い、チェックすべき事項も異なってくることから、必要十分な内容の後遺障害診断書が作成されているかを被害者の方の家族などが確認し、可否を判断することは難しいでしょう。

後遺障害等級認定に詳しい弁護士に後遺障害診断書を確認してもらうことをおすすめします。

アディーレにご依頼いただければ認定に必要なサポートをいたします!

  • 後遺障害等級認定を想定した適切な通院頻度のアドバイス
  • 申請に必要な資料の精査・検討
  • 申請手続の代行
  • 認定結果に疑問があった際の異議申立ての代行