当初,加害者の保険会社から提示された金額では,逸失利益は0円でした。しかし,当事務所が介入し,ご依頼者の職業及び具体的な症状に着目し,外貌醜状が具体的にどのような点で仕事に影響を与えているか,論理的な主張を行いました。
その結果,保険会社からは,労働能力喪失率5%,かつ,労働能力喪失年数10年の提示をしてきました。このように,具体的に男性の外貌醜状のケースにつき,逸失利益を含んだ提示を引き出すことに成功しています。
後遺障害とは
外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とは,読んでの字の如く,外貌の醜状をいいます。外貌とは,頭部,顔面部,頸部など,日常露出する部分のうち,上肢及び下肢以外の部分を指します。つまり,手足以外の人目に触れる部位のことですね。そして,醜状とは,人目につく程度以上の瘢痕,線状痕などの傷痕のことをいいます。
つまり,外貌醜状とは,交通事故などで,手足以外の通常人目に触れる部位に,人目につく程度以上の傷痕が残ってしまった状態をいうのです。
このような状態が残ってしまった場合,精神的なショックも大きく,また,普段の職業等にも影響が出る場合もあります。そこで,人目に触れる部位に人目につく以上の傷痕が残ってしまった精神的なショック(後遺症慰謝料)や,将来の職業に対する影響(逸失利益)を,損害賠償請求していく権利が被害者に発生します。
外貌醜状が残ってしまった場合,保険会社の担当者から「外貌醜状については慰謝料部分しか認めてもらえないものです」「外貌醜状について逸失利益は認められないんです」などと言われても,そのまま鵜呑みにしないように気をつけてください。
確かに,判例において逸失利益が否定された事例もあります。しかし,外貌醜状においても,逸失利益が認められた判例,慰謝料に組み入れて斟酌するとされた判例が多数存在します。外貌醜状だからといって,まったく逸失利益が認められないものではなく,醜状の部位・程度,被害者の年齢・性別・職業その他のさまざまな要素を組み入れて,逸失利益が認められるか認められないか,認められるとしてその金額はいくらになるかが決定されることになります。
保険会社からの話をそのまま信じて,損害項目に逸失利益が含まれていない免責証書にサインしてしまうと,本来もらえたはずの逸失利益が永久にもらえなくなってしまいます。「後遺症慰謝料はいくらもらえるのか?」「逸失利益はどんなときにもらえるのか?」そうした疑問の答えをこれから解説していきます。
後遺症が残ってしまった場合に支払われる,慰謝料と逸失利益は,認定された後遺障害等級によって変わってきます。後遺障害等級別に,裁判所基準(裁判をしたならば認められる基準)と逸失利益算定の基礎となる労働能力喪失率を表にまとめました。
外貌醜状の後遺障害等級と後遺症慰謝料,労働能力喪失率の目安 | ||
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後遺障害等級 | 後遺症慰謝料 | 労働能力喪失率 |
7級12号 | 1000万円 | 56% |
9級16号 | 690万円 | 35% |
12級14号 | 290万円 | 14% |
外貌醜状による損害賠償請求のスタートは,まず,自分の醜状がどの等級に認定されるのか,から始まります。等級が認定されることでおおよその損害額を知ることができるからです。「どのような醜状が,どの等級に該当するのか」については,つぎの章である「外貌醜状と後遺障害等級」にて解説していきます。
後遺症が残ってしまった場合,裁判所は原則的に自賠責保険における等級認定表に応じて労働能力喪失率を算定しています。しかし,外貌醜状の場合,等級認定表に定められた労働能力喪失率どおりには逸失利益を算定しないことがあります。それも,自賠責保険で定められた労働能力喪失率を大幅に割り込む場合や,外貌醜状が仕事に与える影響はまったくないとして逸失利益を算定しないことさえもあり得るのです。
そこで,自賠責保険が定めた労働能力喪失率をもとに,実際の裁判例で逸失利益がどの程度認められているか,見ていきましょう。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められない。慰謝料として斟酌する。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められない。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められる。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められる。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められる。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められる。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められない。慰謝料として斟酌する。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められる。
外貌醜状による労働能力の喪失 → 認められない。
労働能力の低下の程度に関して,後遺障害別等級表の等級毎の労働能力喪失率はあくまで参考にすぎず,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的な事案に応じて評価される。
この点,証拠(甲18,原告A本人)及び弁論の全趣旨によって認められる原告Aの職業・職種(銀行課長職,債権管理),年齢(症状固定時52歳),醜状の部位・形状・程度に照らし,原告Aの外貌醜状障害が労働能力に与える影響は差程とは思われない。また,後遺障害別等級表上の等級評価から演繹的に導き出されるものではない。
歯牙欠損による労働能力の喪失 → 認められない。
以上のとおり,外貌醜状に関する逸失利益については,裁判例においても傷痕の位置,程度,症状固定時の年齢・職業など,ほかに残存した後遺症の影響などを勘案して決めているため,明確な基準を見出せないのが現実であり,任意保険との示談交渉で外貌醜状の逸失利益を獲得するためには,案件に応じた弁護士の適切な判断が大切になってきます。
当事務所では,交通事故の被害の示談交渉で豊富な経験を持つ弁護士がご相談を無料でお伺いしております。ご自身の外貌醜状がどの後遺障害等級に該当するのか,その場合,どの程度の損害額を請求していくことができるのかなどのご相談にお答えいたします。
また,外貌醜状に基づく慰謝料・逸失利益の算定には,専門的な知見を必要とします。したがって,保険会社との交渉をご自身で行うことは難しい分野かと思われます。裁判例などの知識・見方・ポイントを知らないと,不当な金額で示談することになりかねません。そうならないためにも,知識と豊富な交渉経験を持っている当事務所までご相談いただければと思います。
解決事例 男性の外貌醜状12級14号の場合
当初,加害者の保険会社から提示された金額では,逸失利益は0円でした。しかし,当事務所が介入し,ご依頼者の職業及び具体的な症状に着目し,外貌醜状が具体的にどのような点で仕事に影響を与えているか,論理的な主張を行いました。
その結果,保険会社からは,労働能力喪失率5%,かつ,労働能力喪失年数10年の提示をしてきました。このように,具体的に男性の外貌醜状のケースにつき,逸失利益を含んだ提示を引き出すことに成功しています。
ほかにも当事務所には,外貌醜状の事案が複数存在しており,交通事故前の顔の写真と事故後の顔の写真を対比させながら個別具体的に主張するなど,さまざまな手法で外貌醜状に関する交渉経験を蓄積しています。
このような専門的な知見・交渉経験の蓄積が,ご相談者様の外貌醜状に関する逸失利益の獲得につながるとものと考えております。「外貌醜状だから…」ということだけで逸失利益の獲得をあきらめず,弁護士にご相談することをおすすめします。逸失利益についてあきらめてしまうのは,弁護士の見解を聞いてからでも遅くはありません。