後遺障害7級の症状、慰謝料、交通事故発生からの流れ
交通事故でケガをすると、治療を続けても治癒せずに痛みや症状が残ってしまう、いわゆる「後遺障害」。後遺障害は、症状の程度によって14段階の等級に分かれており、重度のものほど等級の数字が小さくなります。
なかでも、日常生活に大きな影響をおよぼすような症状を認定要件とする「後遺障害7級」。今回は、後遺障害7級について、認定されるまでの流れや認定条件、賠償金を請求できる項目などを、わかりやすく解説いたします。「自分やご家族が7級に該当するかわからない」、「7級認定を受けたけど、適切な賠償金がわからない」という方は、ぜひご覧ください。
- この記事でわかること
-
- 後遺障害7級の認定要件
- 後遺障害申請の流れ
- 自賠責保険基準と裁判所基準の違い
- 適切な賠償金を受け取るための方法
- 目次
後遺障害7級の認定基準
- 後遺障害7級の要件は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 保険金額 |
---|---|---|
第7級 | 1.1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの | 1,051万円 |
2.両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | ||
3.1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | ||
4.神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | ||
5.腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | ||
6.1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの | ||
7.1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの | ||
8.1足をリスフラン関節以上で失ったもの | ||
9.1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | ||
10.1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | ||
11.両足の足指の全部の用を廃したもの | ||
12.外貌に著しい醜状を残すもの | ||
13.両側の睾丸を失ったもの |
後遺障害7級の各号別認定要件とは?
1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
片目を失明し、もう片方の視力が0.6以下になった状態をいいます。
ここでいう「視力」とは、裸眼ではなく、眼鏡やコンタクトレンズを着用した状態での視力(矯正視力)をいいます。そのため、裸眼での視力が0.6以下であっても、後遺障害7級の認定要件を満たさないので注意が必要です。
2号 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
聴力に関する後遺障害は、その程度によって以下の図のように区分されています。
【一耳と他耳の聴力レベルの組み合わせによる認定基準】
具体的には、両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満となった場合、または両耳の聴力が50dB以上70dB未満で、最高明瞭度が50%以下となった場合に後遺障害7級が認定されます。
3号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつもう一方の耳の平均純音聴力レベルが60dB以上70dB未満となった場合に認定されます。
「dB」とは音圧の単位です。参考として以下、具体的な音量の目安をご覧ください。
- 90dB 騒々しい工場内など、うるさくて我慢できない騒音
- 80dB 地下鉄の車内など、極めてうるさい騒音
- 70dB 騒々しい事務所内など、かなりうるさい騒音
- 60dB 乗用車の車内など、大きな声を出せば会話できる程度の騒音
- 50dB 家庭用室外機など、通常の会話が可能な程度の騒音
聴覚に関する後遺障害は、次のような専門的な検査によって聴力レベルを数値化して判断します。
- 純音による聴力レベル検査(純音聴力レベル)
純音を用いて、聞こえる閾値を測定する聴力検査です。 - 語音による聴力検査(明瞭度)
情報伝達のため、日常で使っている言語音を検査音として用いて、その聞こえ方を調べる検査です。 - その他精密聴力検査
4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
中枢神経系に分類される脳またはせき髄を損傷したことで、精神障害や身体障害が生じ、軽易な労務以外の労務に服することができない場合に認定されます。
「軽易な労務以外の労務に服することができない」とは、比較的簡単な作業などはできるものの、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いといったことから、一般人と同等の作業を行うことができない状態をいいます。
5号 腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
呼吸器、循環器、腹部臓器、泌尿器などの機能について、主に次のような場合に認定されます。
- 次に該当する呼吸機能障害が残った場合
・動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査で一定程度と判断されたもの
「一定程度」とは、動脈血酸素分圧が60Torr超70Torr以下で、動脈血炭酸ガス分圧が限度値範囲(37Torrから43Torr)にない状態です。
・中等度の呼吸困難が認められるもの
「中等度の呼吸困難」とは、平地でさえ健常者と同様に歩けないが、自分のペースでなら1km程度の歩行が可能である状態です。 - 次に該当する循環器障害が残った場合
除細動器の植え込みが必要になったもの - 次に該当する腹部臓器障害が残った場合
・消化吸収障害、ダンピング症候群及び胃切除術後逆流性食道炎のいずれも認められるもの
具体的には、胃の全部を失った場合等で、消化吸収障害、ダンピング症候群および胃切除術後逆流性食道炎の症状が発症した場合に認められます。
・人工肛門を造設したもの
ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じた状態です。これに加えて、パウチ等の装着ができない場合は、後遺障害5級が認定される可能性があります。
・小腸皮膚瘻を残すもの
小腸皮膚瘻周辺に著しい皮膚のびらんを生じた状態です。これに加えて、パウチ等の装着ができない場合は、後遺障害5級が認定される可能性があります。
・完全便失禁を残すもの - 次に該当する泌尿器障害が残った場合
・一方の腎臓を失い、一定程度の障害を残すもの
「一定程度の障害」とは、GFR値(糸球体濾過値)が30超50以下であることをいいます。
非尿禁制型尿路変向術を行ったもの
尿が漏出することにより、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じた状態です。これに加えて、パッド等の装着ができない場合は、後遺障害5級が認定される可能性があります。
・禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
尿禁制型尿路変向術のうち、禁制型尿リザボアの術式を行った場合は後遺障害7級が、尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除く)を行った場合は、後遺障害9級が認定される可能性があります。
・持続性尿失禁を残すもの
・切迫性尿失禁及び腹圧性尿失禁で終日パット等を装着し、しばしば交換を必要とするもの
6号 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
親指を含めた3本の指を失うか、または親指以外の4本の指を失った場合に認定されます。
手指を失うとは、次のいずれかに該当する場合をいいます。
- 手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
- 近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)において、基節骨と中節骨とを離断したもの
すなわち、次のいずれかに該当する場合に6号が認定されます。
- 親指が関節より根本で切断され、ほかの指2本が指の途中にある関節のうち、指の根元に近いほうの関節より根本で切断された状態
- 親指以外の4本が指の途中にある関節のうち、指の根元に近いほうの関節より根本で切断された状態
7号 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
片手のすべて、もしくは親指を含む4本の指が動かなくなってしまった場合に認定されます。
「用を廃した」とは、次のいずれかに該当する場合をいいます。
- 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失った状態
- 可動域が2分の1以下に制限された状態
- 手指の末節の指腹部および側部の深部感覚、ならびに表在感覚が完全に脱失した状態
なお、これらの指の後遺障害については、利き手であるか否かは問われません。
8号 1足をリスフラン関節以上で失ったもの
「偽関節」とは、骨折した骨がうまくつながらず、グラグラ動いている状態のことです。
次のいずれかに該当し、常に硬性補装具(金属やプラスチックで作られた補装具)を必要とする場合に認定されます。
- 上腕骨の骨幹部等に癒合不全を残す状態
- 橈骨および尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残す状態
10号 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とする場合に認定されます。
- 大腿骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す状態
- 脛骨および腓骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す状態
- 脛骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す状態
11号 両足の足指の全部の用を廃したもの
「両足の足指の全部の用を廃した」とは、次のいずれかに該当する場合のことです。
- 親指について
・末節骨(足の指先の骨)の長さの半分以上を失った状態
・指節間関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限された状態 - その他の指について
・中節骨もしくは基節骨を切断した状態
・遠位指節間関節もしくは近位指節間関節において離断した状態
・中足指節関節または近位指節間関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限された状態
12号 外貌に著しい醜状を残すもの
「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部などの上肢および下肢(腕、足、手)以外の日常露出する部分のことをいいます。
そして、「著しい醜状を残すもの」とは、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上の傷痕をいいます。
- 頭部に、手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損があること
- 顔面部に、鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没があること
- 頸部に、手のひら大以上の瘢痕があること
13号 両側の睾丸を失ったもの
両側の睾丸を喪失した場合に、13号が認定されます。
また、次のいずれかに該当する場合には、13号が準用される可能性があります。
- 状態として精液中に精子が存在しないもの
- 両側の卵巣を失ったもの
- 状態として卵子が形成されないもの
後遺障害7級認定の流れ
後遺障害等級の認定手続には、被害者自身で後遺障害を申請する「被害者請求」と、加害者の保険会社に手続を任せる「事前認定」という2つの方法があります。
まずは被害者請求の流れから見てみましょう。
被害者ご自身で申請する方法 <被害者請求>
ステップ1 治療を受け、主治医に自賠責書式の診断書・診療報酬明細書を作成してもらう
毎月の入通院日や、症状、治療状況が記載されます。一般的に治療費は、保険会社が直接病院へ支払い、自賠責保険会社への請求も行うため、被害者が収集する書類は少ないです。
追加や補足の資料が必要になった際は、保険会社から取り寄せるようにしましょう。
もし、保険会社が治療費の対応を行っていない場合は、被害者の方が診断書や明細書を収集する必要があります。治療終了の際や、被害者から自賠責保険会社に対して賠償金の請求を行う(被害者請求)際に、主治医に作成いただくのがよいでしょう。
ステップ2 主治医に症状固定判断をもらう
「症状固定」とは、被害者が十分な治療を受けたうえで、主治医からこれ以上は治療効果がなく、症状が良くも悪くもならないと診断された状態にあることをいいます。
一般的に、「治療を終了する日=症状固定日」となるケースが多いです。
なお、幸いにも症状が改善している、完治したといった場合は、後遺障害にはあたりませんので、症状固定日は存在しないことになります。
ステップ3 主治医に後遺障害診断書を作成してもらう
症状固定日が決まったら、後遺障害が残っていることを後遺障害診断書に記載してもらいます。特に「むちうち症」の自覚症状には首すじの痛み、頭痛、吐き気、腕のしびれなど、さまざまな症状があります。
まずは、病院で診断を受ける前に、あらかじめ自覚症状をご自身で整理したうえで、医師に診断してもらう際には、痛み、しびれに関する自覚症状を正しく、漏れなく、遠慮なく伝えることを心がけてください。
主治医に症状をしっかりと伝えないことで、ご自身が思っていたよりもずっと軽い症状を後遺障害の診断書に記載されることがありますので注意しましょう。
ステップ4 主治医に必要に応じて検査や、画像を撮影してもらう
正しく症状を把握し、適切な認定を受けるためには、MRIによる画像検査や、神経症状テストも有効です。
神経症状テストとは、たとえば、頭を傾けて下方に押し付けることで神経根障害を調べるスパーリングテストや、筋力の低下から神経の障害を調べる徒手筋力検査などです。
むちうち症は「神経症状」となりますので、神経学的な所見から診断結果を記載してもらいましょう。
ステップ5 申請するための書類を用意する
必要書類は下記のとおりです。
- 【サンプル】自動車損害賠償責任保険 支払 請求書 兼 支払指図書
JA版はこちら - 交通事故証明書
事故が発生した場所を管轄する各都道府県の自動車安全運転センターから取得します。 - 事故発生状況報告書
ご自身または、事故当時者等、事故状況に詳しい方が作成します。 - 診断書
治療を受けた医師または病院から取得します。 - 診療報酬明細書
治療を受けた医師または病院から取得します。 - 後遺障害診断書
症状固定となったら、治療を受けた医師または病院から取得します。 - 印鑑証明書
- 住民票または戸籍抄本
被害者が未成年かつ、請求者が親権者の場合のみ取得します。
ケガに対する慰謝料や、交通費、休業損害等を後遺障害と一緒に請求したい場合は、下記書類も併せて用意します。
- 入院・通院交通費明細書
休業損害証明書等、休業損害の立証資料、賞与減額証明書
家事従事者の場合は、世帯全員の名前が記載されている住民票
ステップ6 ステップ1~ステップ5までの書類を自賠責保険会社に送付する
資料が一通りそろったら、次はいよいよ後遺障害の申請です。
必要な情報を記載した請求書と資料一式を加害者側の自賠責保険会社に郵送します。請求先である自賠責保険会社は、「交通事故証明書」から確認することができます。
ステップ7 認定結果が判明
請求内容や請求者にもよりますが、結果がわかるまでに、おおむね1~3ヵ月程度の期間がかかります。
その後の流れとして、郵送した書類は自賠責保険会社を経由して、損害保険料率算出機構という調査機関で損害の調査が行われます。損害が認定されたのち、結果は自賠責保険会社を経由して、被害者に通知されます。その後、支払指図書に従い、保険金の支払いが行われます。
個人で行う被害者請求では、注意点や用意する資料がたくさんあり、対応が難しいことが多いでしょう。そこで、難しい手続を簡単にするための請求方法をお伝えします。
弁護士に依頼し、代理で被害者請求してもらう方法
弁護士は、被害者に代わって被害者請求を行うことができます。
ほとんどの手続を任せられるという点では、後述する「事前認定」と似ていますが、弁護士に依頼した場合、被害者の方が資料を持ち合わせていないことがままあります。「事前認定」と手続を比較すると、弁護士が保険会社や病院から書類を集めるための時間がかかる点が異なります。
ステップ1
弁護士に相談・依頼する。
ステップ2
弁護士が保険会社から資料を収集し、被害者の方からヒアリングする。
ステップ3
資料の追加、修正が必要な場合は、弁護士もしくは被害者自身で対応する。
ステップ4
手続に必要な資料を弁護士に郵送する。
ステップ4以降は、弁護士が手続を行います。
弁護士は「被害者の代理人」という立場で手続を行いますので、当然いい結果となるよう、全力でサポートします。特に、日頃から交通事故の案件を扱う弁護士は後遺障害等級認定のプロなので、同じ症状であっても認定されやすい表現や、症状の立証のために必要な検査についてのアドバイスが可能なため、適正な後遺障害の等級認定を受けられる可能性がグンとあがるのです。
また、異議の申立や、紛争処理機構への申立手続などにも精通しているので、さまざまなアプローチから認定の可能性を検討することができます。
加害者側の保険会社にお任せする方法 <事前認定>
被害者に代わって、加害者側の保険会社が後遺障害申請手続を代行して行うことを「事前認定」と言います。多くの場合、保険会社のサービスで治療費は保険会社が直接病院へ支払い、自賠責保険会社に対する請求もまとめて対応する「一括対応」の流れが一般的で、被害者が用意する書類も少ないことから、手続が最も簡単な方法だといえます。
ステップ1 症状固定日が決定したあと、保険会社に後遺障害申請希望の旨を伝える
保険会社から打診されることもあります。
ステップ2 手続に必要な資料を保険会社に郵送する
郵送後は、保険会社が手続対応してくれます。
自賠責保険会社への請求で必要な資料は、申請者が被害者であっても保険会社であっても変わりません。そのため、手続に必要な資料を保険会社が収集し、手続まで行ってくれるため、申請者にとって負担が少ない方法です。
しかし、保険会社は、手続の一環として対応するだけですので、自覚症状が漏れなく表現されているかなど、書類の精査まで行ってくれるわけではありません。また、診断書を作成する医師のほとんどは「医学のプロ」であり、「自賠責保険における後遺障害認定のプロ」ではありませんので、どうしても表現に不足がある、自覚症状を軽く書かれてしまうなどのケースがあります。
つまり、手続は早いし簡単だけど、正しく認定されるとは限らないということです。
後遺障害7級が認定!賠償金はどう変わる?
後遺障害7級が認められた場合、「後遺障害の慰謝料」と「逸失利益」を賠償金に追加して請求することができます。
自賠責保険基準で支払われる保険金は?
自賠責保険基準における7級の保険金額の上限は、以下のとおりに決められています。
後遺症慰謝料 :419万円
逸失利益(上限) :632万円
※令和2年4月1日以降に発生した事故の場合
認定を受けるとまず、後遺症慰謝料と逸失利益の合計額である「1,051万円」を上限として、後遺障害の保険金が支払われます。
※条件によって減額されることがあります。
被害者は保険会社に対し、これを超える金額を請求することとなりますが、たとえば、根拠なく「慰謝料1,000万円だ!」と言っても、保険会社が応じることはありません。金額交渉をするのであれば、裁判上で考えられる金額を基礎として設定されている「裁判所基準」を用いることが最良です。
裁判所基準で請求できる慰謝料は?
自賠責保険基準では419万円と定められていますが、裁判所基準では「1,000万円」です。実に2倍以上もの開きがあることがわかります。この差は大きいですね。
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
認められる逸失利益は?
逸失利益(いっしつりえき)とは、交通事故により負傷し、治療を尽くしても一定の後遺障害が残ることで労働能力が低下してしまい、事故がなければ将来獲得できたであろう収入が減ってしまうことをいいます。
基本的な計算方法は下記の通りです。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除したものです。
ワンポイント 中間利息控除計算の係数について
中間利息控除計算の係数には、単利計算のホフマン係数と、複利計算のライプニッツ係数が存在します。
逸失利益の計算では、利息を控除する必要があるため、単利計算であるホフマン係数のほうが被害者にとって有利ですが、現在はライプニッツ係数を採用することが原則となっています。
- 事故前年の年収額
最も現状の収入能力に近いと推測できる事故前年の収入から計算されることが一般的です。 - 労働能力喪失率
影響の度合いです。後遺障害7級における労働能力の喪失率は56%が目安となります。
事故にあう前は正常であった言語機能に著しい障害が残る、聴力に障害が残るなど、日常生活や就労に大きな影響をおよぼしますので、労働能力を大きく失うと想定されています。 - 喪失年数
労働力に影響がある期間です。
労働力に影響がある期間です。理論上、症状固定を迎えてから67歳、または平均余命の2分の1のいずれか長いほうとされています。
交通事故処理の知識・経験がない方にとっては、逸失利益の算定について理解が難しいこともあるかと思いますので、まずは下の例をご覧ください。
<例>500万円の収入で後遺障害7級が認定。20年程度影響がありそうだとなった場合
後遺障害7級における労働能力の喪失率は、56%とみなされています。
考え方としては、「500万円の56%が20年間喪失する」ということになります。
実際は中間利息を控除しますが、ここでは簡単に20年とします。
単純計算すると、500万円×56%×20年=5,600万円となります。
これが、逸失利益の考え方です。
次は、ライプニッツ係数を使った計算についてご説明します。
ライプニッツ係数を使った計算方法
- ライプニッツ係数表
労働能力喪失期間(年) | ライプニッツ係数(5%) | ライプニッツ係数(3%) |
---|---|---|
1 | 0.9524 | 0.9709 |
2 | 1.8594 | 1.9135 |
3 | 2.7232 | 2.8286 |
4 | 3.546 | 3.7171 |
5 | 4.3295 | 4.5797 |
6 | 5.0757 | 5.4172 |
7 | 5.7864 | 6.2303 |
8 | 6.4632 | 7.0197 |
9 | 7.1078 | 7.07861 |
10 | 7.7217 | 8.5302 |
11 | 8.3064 | 9.2526 |
12 | 8.8633 | 9.954 |
13 | 9.3936 | 10.635 |
14 | 9.8986 | 11.2961 |
15 | 10.3797 | 11.9379 |
16 | 10.8378 | 12.5611 |
17 | 11.2741 | 13.1661 |
18 | 11.6896 | 13.7535 |
19 | 12.0853 | 14.3238 |
20 | 12.4622 | 14.8775 |
21 | 12.8212 | 15.415 |
22 | 13.163 | 15.9369 |
23 | 13.4886 | 16.4436 |
24 | 13.7986 | 16.9355 |
25 | 14.0939 | 17.4131 |
26 | 14.3752 | 17.8768 |
27 | 14.643 | 18.327 |
28 | 14.8981 | 18.7641 |
29 | 15.1411 | 19.1885 |
30 | 15.3725 | 19.6004 |
31 | 15.5928 | 20.0004 |
32 | 15.8027 | 20.3888 |
33 | 16.0025 | 20.7658 |
34 | 16.1929 | 21.1318 |
35 | 16.3742 | 21.4872 |
36 | 16.5469 | 21.8323 |
37 | 16.7113 | 22.1672 |
38 | 16.8679 | 22.4925 |
39 | 17.017 | 22.8082 |
40 | 17.1591 | 23.1148 |
上記の例を正しく計算すると、500万円×56%×ライプニッツ係数という計算になります。
事故にあった日によって、使用する係数が異なりますが、今回は2020年4月に施行された民法の改正により定められた年利3%を採用して計算してみましょう。
そうすると、20年のライプニッツ係数は「14.8775」となりますので、500万円×56%×13.1661=3,672万5,080円となります。
ライプニッツ係数について、将来のお金を今、先取りで得ると、運用していくことで利息を増やすことができるなど、のちに受け取るよりも価値があると考えられているので、「先取りするなら利息分引いておくよ。」という考えから、20年丸々ではなく、少し控除された数字を採用しています。
ワンポイント 民法改正による中間利息の改正について
改正民法は、2020年4月に施行されました。民法改正後の2020年4月1日以降に交通事故にあわれた方は、ライプニッツ係数(3%)を、民法改正前の2020年3月31日までに交通事故にあわれた方は、ライプニッツ係数(5%)を採用することとなります。
中間利息の年利が5%から3%に引き下げられたことで、控除される利息は少なく、受け取れる金額は増えることとなり、結果として逸失利益は民法の改正前より改正後のほうが高くなります。
定期金賠償に関しては、中間利息を控除することはありません。
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ここまでで、自賠責保険基準と裁判所基準で受け取れる金額に大きな差があることは、おわかりいただけたと思います。
ご自身で対応していく場合、知識がある保険会社の担当者は、慰謝料や賠償金の手出しが少なくなるよう、自賠責保険基準に近い金額を提示することが多く、初めから裁判所基準で計算して支払いをしてくれることは極々稀と考えておいていいでしょう。
交通事故の被害にあったとき、プロのサポートを受けた後遺障害申請手続か、裁判所基準で計算された賠償金額かなど、専門家に依頼するか否かで、認定される後遺障害の等級や受け取れる賠償金額に大きな違いが生じる可能性があります。
後遺障害の申請を考えている場合や、後遺障害が認められた際の慰謝料や賠償金請求は、交渉の専門家である弁護士に依頼することで、大きなメリットがあるケースが多いため、まずは無料相談できる弁護士に相談されることをおすすめします。