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モペットで交通事故!守るべき交通ルールや罰則、事故時の対処法も解説

[ 公開日:2024/07/26 ] [ 更新日:2024/09/09 ]

手軽な移動手段として人気のペダル付き原動機付自転車 「モペット」。
しかし、近年、全国で交通違反や交通事故が増加していることから、警察が取り締まりを実施したとのニュースが多く見られます。
モペットはペダルが付いているものの、電動であるため、交通事故が起きた場合には被害者だけでなく、加害者も大ケガを負うおそれがあります。

そこで、このコラムでは、「そもそもモペットとはどのような乗り物なのか」をご説明したうえで、適用される交通ルールや交通事故が起きた場合の対処法について解説します。

すでにモペットを利用している方はもちろん、これから利用しようとしている方も、モペットの利用について正しく理解し、安全な運転にお役立てください。

この記事でわかること
  • モペットとはどのような乗り物か
  • モペットを運転する際に適応される交通ルール
  • モペットで交通事故を起こしたときの対処法
目次

モペットとは

モペットとは、ペダル付き原動機付自転車のことを指します。フル電動自転車と呼ばれることもあり、特徴としては、電動モーターなどの原動機だけで走れるだけでなく、自転車と同じようにペダルをこいで走行できることが挙げられます。

モペットに「自転車」のルールは適用されない

名前に「自転車」と付いていますが、モペットに自転車の交通ルールは適用されません。適用されるのは「一般原動機付自転車」または「自動車」としての交通ルールです。

また、モーターを用いず、ペダルのみを用いて走行させる場合でも、原動機付自転車として扱われるため、「一般原動機付自転車」または「普通自動二輪車」としての交通ルールが適用されます。

モペットと電動アシスト付き自転車の違い

一見すると見分けがつきにくいですが、モペットと電動アシスト付き自転車には以下のような違いがあります。

モペット電動アシスト付き自転車
電動モーターのみでの走行可能不可能
道路交通法における扱い「原動機付自転車」として扱われる「軽車両」(自転車)として扱われる
適用される交通ルールモーターの最大出力数に応じて「一般原動機付自転車」または「普通自動二輪車」としての交通ルール「軽車両」としての交通ルール(一般の自転車と同様)

モペットはペダルをこがなくても走行できますが、電動アシスト付き自転車はペダルをこぐことが必須です。
また、道路交通法上の扱いも違います。モペットが「原動機付自転車」であるのに対し、電動アシスト付き自転車は一般的な自転車と同じ「軽車両」です。

モペットを運転する際に適応される交通ルールと違反時の罰則

先ほど、モペットは道路交通法上「原動付自転車」 に分類されることをご紹介しました。
ここでは、モペットで公道を走る際に守るべきルールで定められている内容と、それに違反した場合にどのような処罰を受けるのかを見ていきます。

免許の取得・携帯

モペットで公道を走るときは運転免許(普通自動車免許、原動機付自転車免許など)が必要です(道路交通法第85条1項、第64条1項)。

■無免許でモペットを公道で運転した場合の罰則
<刑事処分>
3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第1項第2号)

<行政処分>
違反点数25点

■無免許の人にモペットを貸与した場合の罰則
無免許運転をする可能性のある人にモペットを貸した場合、無免許運転をした人と同じ罰則が科されます。

■免許不携帯の場合の罰則
免許を携帯せずにモペットを公道で運転した場合は、免許証不携帯として反則金3,000円 の罰則が科されます。

ヘルメットの着用

モペットで公道を走るときはヘルメットを着用する義務があります(道路交通法第71条の4 第2項)。

■ヘルメット着用なしでモペットを公道で運転した場合(乗車用ヘルメット着用義務違反)の罰則
<行政処分>
違反点数1点

ナンバープレートの取付け

各市町村の条例で定められているとおり、車両登録とナンバープレート(標識)の見やすい場所への取付けが義務付けられています。

■ナンバープレート取付けなしで運転した場合(公安委員会遵守事項違反)の罰則
<刑事処分>
5万円以下の罰金

<行政処分>
ナンバープレート取付けなしのモペットを公道で運転した場合は、反則金5,000円の罰則が科されます。

保安装置などの装着

モペットは、道路運送車両法および道路運送車両の保安基準に基づいて、下記の装置を装着する必要があります 。

  • 前照灯(ヘッドライト)
  • 番号灯、尾灯(テールランプ)、制動灯(ブレーキランプ)および後部反射器
  • 警音器(クラクション)
  • 消音器
  • 方向指示器(ウィンカー)
  • 後写鏡
  • 速度計

なお、最高速度が時速20キロメートル未満のモペットの場合、下記については装着義務がありません。ただし、制動灯や方向指示器を装備していない場合には手信号で合図を行わなければなりません。

<最高速度が20km/h未満のモペットには装着義務がないもの>

  • 番号灯
  • 尾灯
  • 制動灯
  • 方向指示器
  • 速度計

■整備不良の罰則
保安装置などをきちんと装着していない場合、下記の罰則が科されます。

<刑事処分>
3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金

<行政処分>
・制動装置等の場合:違反点数2点 、反則金6,000円
・尾灯等の場合:違反点数1点 、反則金5,000円

自賠責保険への加入義務

モペットを公道で走行させる際には、自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済に加入しなければなりません(自動車損害賠償保障法第2条 1項、第5条 )。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法で、原動機付自転車を含むすべての自動車に加入が義務付けられている強制保険です。
ただし、自賠責保険には支払限度額があります。交通事故を起こした場合に備えて任意保険にも加入することをおすすめします。

■無保険運行の罰則
<刑事処分>
1年以下の懲役または50万円以下の罰金(自動車損害賠償保障法第86条 の3第1項第1号)

<行政処分>
違反点数6点

軽自動車税の支払い

モペットには毎年、 原動機付自動車としての軽自動車税という税金がかかります。原動機付自転車の軽自動車税の金額は排気量によって異なります。

<原動機付自転車の軽自動車税>(2024年6月時点)
・90cc以下:年間2,000円
・90cc超125cc以下:年間2,400円

一部のモペットの規制緩和について(特定小型原動機付自転車)

2023年7月1日より改正道路交通法が施行されました。
これにより、「性能上の最高速度が自転車と同程度である」など一定の要件を満たす電動キックボード等に限り、特定小型原動機付自転車として、運転免許なしで運転できるようになるなど、交通ルールが大幅に緩和されました。

モペットが特定小型原動機付自転車に該当する要件

特定小型原動機付自転車に該当するモペットとは、次のすべての要件を満たすものを指します(改正道路交通法施行規則第1条の2の2)。

  1. 長さが190センチメートル以下であること
  2. 幅が60センチメートル以下であること
  3. 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
  4. 時速20キロメートルを超える速度を出せない こと
  5. 走行中に最高速度の設置を変更できないこと
  6. AT(オートマチック・トランスミッション)など、クラッチの操作を要しない機構がとられていること
  7. 最高速度表示灯が備えられていること

緩和される主な交通規制の変更ポイント

  1. 自転車道の通行が可能に
    自転車と同様に、自転車道の走行が可能となります(改正道路交通法第17条 3項)。
  2. 路側帯の通行が可能になる
    著しく歩行者の通行を妨げる場合を除き、路側帯の通行が可能となります(改正道路交通法第17条 の3第1項)。ただし、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければなりません(同条2項)。
  3. 原付免許が不要に
    特定小型原動機付自転車に該当するモペットは、原付免許不要で運転できるようになります(改正道路交通法第84条 1項)。ただし、16歳以上であることが必要です。
  4. ヘルメットの着用が努力義務へ
    従来は運転時に義務付けられていたヘルメットの着用が、特定小型原動機付自転車に該当するモペットについては努力義務に緩和されます(改正道路交通法第71条の4第3項)。

なお、特定小型原動機付自転車に該当するものであっても、モペットについてはナンバープレートの取付けと自賠責保険への加入が引続き義務付けられます。
また、軽自動車税については年間2,000円が一律で課されますので、ご注意いただければと思います。

モペットの問題点

モペットは便利な乗り物ですが、「自転車と同じ」という誤った認識を持った運転者による多くの交通違反が発生しています。

特定小型原動機付自転車に関する交通違反の検挙件数は、2023年7月から2023年12月までの累計が7,130件であったのに対し、2024年1月から5月までの累計は14,432件と急増しており(警察庁調べ)、早急な対策が求められてきました。

モペットの運転者が守るべき交通ルールの周知に向け、ポスターやリーフレット、動画による啓発、違反行為に対する交通反則通告制度や特定小型原動機付自転車運転者講習の受講といった制度の設置が政府によって行われています。

モペットによる交通事故が発生!どうすればいい?

モペットによる交通事故が発生した場合の流れも、車で交通事故が起きた場合と基本的には変わりません。
以下では、被害者側の対応を時系列に沿って詳しく解説いたします。

警察に通報

まず、警察に交通事故が起きたことを通報します。警察への事故の届け出は、のちの損害賠償請求に必要な「交通事故証明書」の発行をするためにも重要です。

なお、ケガをしている場合は必ず人身事故として届け出を行います。物損事故では実況見分を行わないため、過失割合などの証拠となる「実況見分調書」が作成されず、示談交渉で不利になる可能性があるからです。

ケガをしているのに「物損事故」で処理されてしまった場合には、早急に管轄の警察署で人身事故への切替えを行うようにしましょう。

保険会社に連絡

任意保険に加入している場合には、保険会社にも交通事故の被害にあったことを連絡しましょう。事故から日数が経ってしまうと、保険金が受け取れなくなることもあり得ます。
手続をスムーズに進めるためにも、可能な限り早く連絡することをおすすめします。

痛みがなくても病院で診察を受ける

事故現場での対応が終了したら、すぐに病院で診察を受けてください。痛みやしびれといった自覚症状がなくても必ず受診しましょう。事故直後はケガがないと思っていても、しばらく経ってから症状が現れる場合があります。

事故でケガをした場合は、医師から「完治」または「症状固定」と診断されるまで、きちんと通院し治療を続けましょう。症状固定とは「これ以上治療を続けても症状の回復・改善が期待できなくなった状態」を指します。

後遺障害等級認定の申請

医師に「症状固定です」と判断された時点で何らかの後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定の申請を行います。

後遺障害等級認定とは、交通事故によるケガが「交通事故による損害である」と認めてもらうことです。後遺障害等級が認定されるかどうかで、交通事故被害者の方が受け取れる賠償金額が決まります。

後遺障害等級認定を受けられる条件や、後遺障害等級認定の手続については下記関連コラムをご確認ください。

加害者に損害賠償を請求

ケガが完治、もしくは症状固定と診断されたあと後遺障害等級認定の結果が出たら、事故による損害はすべて算定可能です。

交通事故の損害賠償金は示談金とも呼ばれます。示談金にはたくさんの項目があり、被害者の方が受けた損害の内容によって異なります。

<交通事故でケガをした場合に請求できるもの>

  • 治療費
  • 入通院慰謝料
  • 休業損害
  • 後遺障害逸失利益
  • 後遺障害慰謝料

など

交通事故にあったことで発生したこのような損害について適切に金額を算出し、 加害者に請求していきます。

ケガをした場合に請求できる損害の項目や相場について詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

無保険やひき逃げの場合の対応は?

モペットによる交通事故の被害にあって、加害者側が無保険だったり、ひき逃げで加害者がわからなかったりすることもあり得ます。
下記に状況別の対応をご案内しますので、ご確認ください。

加害者が任意保険に未加入・自賠責保険に加入している場合

  1. 自賠責保険から補償を受ける
  2. 自賠責保険の限度額を超えた分は、加害者本人に請求する
  3. 加害者に資力がない場合には被害者の方ご自身の保険を利用する

加害者が任意保険・自賠責保険ともに未加入の場合

  1. 加害者本人に損害賠償を請求する
  2. 加害者に資力がない場合には被害者の方ご自身の保険や政府の保障事業を利用する

加害者が不明(ひき逃げなど)である場合

被害者の方ご自身が加入されている保険や政府の保障事業などを利用する

まとめ

モペットは、電動アシスト付き自転車と似ているものの、道路交通法上で「原動機付自転車」として扱われます。そのため、運転する際には運転免許の取得や自賠責保険への加入、ヘルメットの着用、ナンバープレートの装着などが必要です。もし知らずに運転した場合、違反時の罰則を科される可能性があります。

数年前には、交通ルールを守らず、自転車と同じように走行して歩行者に衝突し、重傷を負わせて過失運転致傷で逮捕された方もいます。このような事故を起こさないよう、モペットを運転する際は、交通ルールに従って安全運転を心がけていただきたいと思います。

この記事の監修者
中西 博亮
弁護士 中西 博亮(なかにし ひろあき)
資格:弁護士
所属:東京弁護士会
出身大学:岡山大学法学部,岡山大学法科大学院
私は、交通事故案件に特化して取り組んでおり、これまで多数の案件を解決してきました。加害者側の保険会社は交通事故の被害者の方に対して低い慰謝料しか提示しないため、正当な補償を受けられない被害者が多いという実情があります。被害者の方に正当な補償を受け取っていただけるよう、私は日々、被害者の方のお声を聞き、被害者の方に代わって加害者側の保険会社と戦っています。