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高次脳機能障害と診断された方がまず読むべきコラム

この記事でわかること
  • 高次脳機能障害の原因
  • 交通事故でケガをしてから高次脳機能障害が残るまでの過程
  • 高次脳機能障害の賠償金請求についての簡単な流れ

交通事故で脳に損傷を負うと、「高次脳機能障害」と診断されることがあります。高次脳機能障害とは、脳の損傷により、認知機能の低下や人格が変わってしまうなどの症状が出て、就労や生活が制限されることを指します。
特に重度のものは、ご本人はもちろん、その周囲やご家族の方にも大きな影響をおよぼしかねないため、症状についてよく理解しておくことが大切です。
今回は、交通事故によって高次脳機能障害と診断された方や、そのご家族に向けて、詳しい症状と賠償金請求の流れについて解説します。

目次

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、交通事故により脳の「高次脳機能」に障害が起きることです。

脳には、大きく2つの機能があると言われています。1つは、目で感じた光を脳に伝えるなどの機能(知覚機能)や、脳から出た命令に従い体を動かすなどの機能(運動機能)といった「一次機能」です。もう1つは、一次機能から得た情報をより高度なものにする、認知、言語、記憶、人格などの「高次脳機能」です。

物忘れや集中力の低下といった高次脳機能障害の症状は、日常生活において大きな支障をもたらしますが、外見上の外傷がないこと、本人に自覚がないことなどから、後遺症が残っていることに気づきにくいという問題があります。

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害の原因は、脳自体への損傷(器質的損傷)であるといわれています。
そのなかでも、「びまん性脳損傷」と呼ばれる、脳の広い範囲を損傷した場合に障害が生じるのが一般的だとされています。この「びまん性脳損傷」の原因として、事故の衝撃で、脳全体が激しく揺さぶられるなどして直接損傷した場合と、頭蓋内出血などにより脳が圧迫されて損傷した場合の2つがあると言われていますが、高次脳機能障害はこのいずれによっても起こりうると考えられています。

また、広範囲の損傷である「びまん性脳損傷」と異なり、脳の一部分のみを損傷する「局所性脳損傷」によって高次脳機能障害が残ることもあります。そのため、脳を損傷した場合には、高次脳機能障害が残っていないかについてしっかり見守る必要があります。

高次脳機能障害と判断されない症状

脳自体に損傷がない場合、高次脳機能障害が残らないといわれています。そのため、CTやMRIなどで脳の損傷が確認できない場合は、自賠責保険においては、交通事故が原因の高次脳機能障害が残っていないと判断されることになります。

高次脳機能障害に近しいものとして、以下のような症状もあります。

遷延性(せんえんせい)意識障害

脳の損傷により、重度の昏睡状態に陥っている、いわゆる植物状態です。遷延性とは、長引くという意味で、この場合は、回復の見込みが薄いというニュアンスで使われています。

外傷性てんかん

脳の損傷により、発作的にけいれんや意識障害などの症状が表れます。

非器質性精神障害

脳に損傷がないのに、異常な精神状態などが起こるものです。症状としては、高次脳機能障害に似ていますが、脳自体に異常が見られない場合は、この非器質性精神障害に該当します。
そのほか、脳に損傷を負って、一時的に高次脳機能に問題があっても、そのあと完全に回復するケースも少なくありません。また、特に脳の一部分のみを損傷する「局所性脳損傷」の場合に多いのですが、嗅覚や聴力など、一部の一次機能のみに障害が残るというようなケースもあります。

高次脳機能障害の経過

脳の損傷から高次脳機能障害が残るまで

脳の損傷による高次脳機能障害は、外傷後からは、軽減しながら穏やかな症状が続くという経過をたどるのが一般的です。外傷後は意識を失うなどの意識障害があり、重い症状が出ていたとしても、だんだん時間をかけて落ち着いてくることが多いです。おおむね1年以上たっても回復しきらずに残ってしまった症状については、後遺障害の対象になると考えてもよいでしょう。

さらに時間をかけることで、症状がより軽減することもよくあります。賠償金の算定にあたり、これ以上症状の改善が見込めない「症状固定」の時期を基準として、それ以前を傷害、それ以降を後遺障害と区分します。したがって、症状固定時に症状が残っていれば、それを後遺障害と仮定して、賠償金を計算していくことになります。

高次脳機能障害は見過ごされることもある

高次脳機能障害が残るような交通事故の場合、事故の時点では、命にかかわるような大きなケガをしているケースが多いです。

その場合の経過として、意識を失い生命の危険があり、それを乗り越えたあとに、脳の機能も回復していくという形をとります。そのため、医師が別の疾患に気を取られていたり、親族もそのうちしっかりしてくるだろう」と思い込んでしまったりして、本当は高次脳機能障害が残っているのに誰も気づかず、見過ごされてしまうことも多くあります脳に損傷が残ってしまった場合には、脳の機能が落ちていないかについて、周りの人などがしっかりと注意して観察してあげることが重要です。

高次脳機能障害で賠償金を請求するまでの流れ

交通事故で被害にあった場合、加害者に対して損害賠償を請求することができます。加害者が自動車保険に加入していれば、その賠償金は、加害者側の保険会社が肩代わりすることになるので、その場合は保険会社に対して損害賠償を請求することになります。
事故からしばらくは、ケガの治療に専念します。治療中は治療費や休業損害について、保険会社が示談に先回りして支払ってくれることも多いです。
治療がひと段落したら、これ以上症状の改善が見込めない「症状固定」という段階になります。高次脳機能障害の場合には、事故から症状固定までの期間が1年を超えることもしばしばです。

後遺障害の申請と保険金の受取りをする

症状固定になったら、医師に後遺障害診断書などを作成してもらい、自賠責保険に対して、後遺障害の申請をします。この申請手続を自分で行うことを「被害者請求」といい、この手続を弁護士に依頼すれば、弁護士があなたの代わりに後遺障害の申請をしてくれます。
申請後、自賠責保険から等級の認定を受けることができれば、自賠責保険から等級に応じた保険金が支払われます。

また、ご自身で後遺障害の申請をせず、任意保険会社が後遺障害の申請を代わりにしてくれる「事前認定」という手続もあります。この「事前認定」の場合、自賠責保険から支払われる保険金については、すぐには支払いがされずに、示談金と合わせて支払われることが多いです。
示談に応じる前に自賠責保険から支払われる保険金を受け取りたい場合は、任意保険会社にその旨を申し入れ、保険金を先に受け取る手続をとる必要があります。

後遺障害の等級が確定したら示談交渉する

示談交渉では、後遺障害認定の等級に基づいた金額をもとに、相手方と示談交渉をしていくことになります。
交通事故の賠償金算定には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」という3つの基準が存在し、もっとも高額な基準を設けている「弁護士基準」による示談交渉を行う場合は、弁護士に依頼することが一般的です。

納得できる金額が提示されない場合は裁判などの手続で解決する

示談交渉が決裂した場合は、裁判など第三者を入れた手続により、損害賠償を請求していくことになります。
裁判手続を行う場合は、裁判所への出廷、訴状や答弁書の提出など、さまざまな手続が発生します。慣れた方でなければ、なかなか時間が取れない、何から手を付けていいのかわからないという方が多いと思います。そこで、裁判の手続は、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。

まとめ

ここまで、高次脳機能障害の症状や賠償金の受取りについてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
高次脳機能障害は、症状が多岐にわたるため、被害者が治療の段階から正しく理解することはもちろん、特にご家族をはじめとする周囲の方のご協力が肝心です。

また、後遺障害の申請や示談交渉など、すべて一人で対応するのは難しいこともありますよね。もし、被害者やそのご家族だけでは不安という場合には、弁護士などの法律に詳しい専門家に依頼しておくと、より安心して治療を続けていくことができると思います。

この記事の監修者
石田 周平
弁護士 石田 周平(いしだ しゅうへい)
資格:弁護士,行政書士(有資格)
所属:東京弁護士会
出身大学:神戸学院大学法学部,早稲田大学法科大学院
私は入所以来、一貫して交通事故を集中して取り扱う部署に在籍しており、近年は、案件に加えて新入所の弁護士を対象とした交通事故事件についての研修なども担当しています。
交通事故の被害にあってしまった方が適正な賠償金を得られるよう尽力しつつ、「少しでも事故前の状態に近い生活に戻っていただくために弁護士としてできることは何か」を考えるよう心がけています。