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主婦でも請求できる!交通事故で家事ができなくなった損害賠償について

[ 公開日:2022/08/27 ] [ 更新日:2024/09/09 ]

ここを押さえればOK!

専業主婦(主夫)の休業損害とは、交通事故で家事ができなくなった場合の損害を指し、家事労働は裁判で金銭的に評価されるため、休業損害として請求可能です。
兼業主婦(主夫)については、年収が全国の女性平均年収を下回る場合は家事従事者、それ以上の場合は給与所得者として損害を算定します。

また、条件によっては家事代行費用も請求可能です。保険会社との交渉では休業損害が低く見積もられることが多いため、弁護士のアドバイスを受けるのがおすすめです。

専業主婦(主夫)の方が交通事故にあった場合、痛みやしびれのせいで、いつもはできていた炊事や洗濯などの家事が難しくなることがあります。このように、交通事故がきっかけで、今までできていた家事ができなくなったら、どうすればいいのでしょうか?

実は、交通事故により、家事に支障が出た分については、「休業損害」として賠償金を請求できる場合があります。
今回の記事では、専業主婦(主夫)や、お仕事をしながら家事をされている兼業主婦(主夫)の方々の休業損害について解説いたします。

この記事でわかること
  • 家事従事者と給与所得者とで賠償金の算定方法が違う
  • 主婦(主夫)の休業損害の計算方法
  • 主婦(主夫)の休業損害請求に必要な資料
目次

専業主婦(主夫)の「休業損害」とは?

専業主婦(主夫)の「休業損害」とは、交通事故にあった専業主婦(主夫)が家事を休まざるを得なかったことによって発生した損害を指します。

専業主婦(主夫)のように、もっぱら家族のために料理や洗濯、掃除などの家事労働をしている方を「家事従事者」と呼びます。家事従事者は、性別や年齢を問いませんので、男性であっても家事従事者と認められる可能性があります。

家事従事者は、家族のために家事労働をしても給料を受け取ることがないため、交通事故で家事ができなくなっても、金銭的な損害が発生していないように思えるかもしれません。しかしながら、裁判において、家事労働は金銭的に評価すべきであると判断されています。

したがって、交通事故によって、家族のためにする家事労働に支障が出たのであれば、その分の損害を「休業損害」として請求することができます(主婦休損)。
なお、「家族のために」とは自分以外の家族、つまり他人のために家事を行うものと理解されているため、一人暮らしの方に休業損害は認められません。

一方、パートナーと交際し、同居している方(内縁関係など)は、休業損害が認められる可能性がありますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

パートやアルバイトは家事従事者?それとも給与所得者?

では、家事労働をしながら、パートとして働いている方(兼業主婦・兼業主夫)はどうでしょうか?

働き方が多様化した現代社会において、フルタイムで働く方もいれば、配偶者控除を受けられる範囲でパートをされる方も多くいらっしゃると思います。このような兼業主婦(主夫)の方は、家事をしながら給与をもらっているわけですが、家事従事者として判断されるのでしょうか?それとも、給与所得者として判断されるのでしょうか?

弁護士基準が記された書籍、通称『赤い本』では、現実の収入額と女性労働者の全年齢平均年収のいずれか高いほうを基に算出することになっています。

つまり、ご自身の年収が、全国の女性の平均年収より低い場合は、家事に損害が出た分を「家事従事者」として、全国の女性の平均年収より多い場合は、給与が減った分を「給与所得者」として、算定していくことになります。たとえば、給与所得者の場合、治療や通院のために有給を使用した分や給与が減った分を「休業損害」として請求できます。

では、全国の女性労働者の平均年収は、一体いくらになるのでしょうか?
厚生労働省の発表によると、令和2年の平均年収は年381万9,200円となっております。よって、年収がこれより低ければ、「家事従事者」として損害賠償を請求することが可能です。

ただし、フルタイム勤務であれば、平均年収より実際の年収のほうが低くても給与所得者として判断されたり、お仕事を休まなければ家事にも損害がなかったと判断されたりしてしまうこともあります。また、加害者の損保会社から、すでに給与所得者として休業分の金銭を受け取っている場合は、あとから家事従事者への切替えが認められないこともあります。

このような場合でも、弁護士に相談すると的確なアドバイスを受けることができますので、少しでもお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

家事従事者としての休業損害額の目安

ここからは、家事従事者の休業損害がいくらになるか具体的に見ていきましょう。

家事従事者の休業損害は、上記の平均年収を基本にしており、平均年収を1年間で割った額が、1日分の損害額となります。つまり、令和2年の事故の場合は、
381万9,200円 ÷ 365日 = 1万464円
となり、1万464円が1日分の損害となります。

もっとも、上記は一日中まったく家事ができない場合なので、ケガの程度に応じて上記金額に、家事ができなくなった割合を上乗せして計算することになります。
たとえば、交通事故により腰を痛めたので、炊事や洗濯、掃除が以前の家事の20%ほどしかできない場合は、家事ができなくなった割合である80%(100%-20%)をかけて、
1万464円×80%=8,371円
が1日の損害となります。

保険会社は休業損害を低めに見積もることがある?

加害者側の保険会社からは、自賠責保険基準で用いられる休業損害の日額である「6,100円(※)×影響のあった日数」で損害を計算されることがあります。

自賠責保険基準は、通常、賠償金を計算する3つの基準のうち一番低い算定基準であるため、通常一番高額となる弁護士基準で賠償金を計算することをおすすめします。弁護士基準で交渉できるのは、基本的に弁護士だけです。休業損害の日額が少なく見積もられると、そのまま示談金額が低くなることに直結します。ですので、適正な賠償金を受け取るためにも、家事従事者の休業損害が問題となるケースの示談交渉は、弁護士へのご相談をおすすめいたします。

(※)自賠責保険基準における家事従事者の休業損害について
民法改正前の令和2年4月1日以降に発生した事故で認定される家事従事者の休業損害の日額は、6,100円です。なお、民法改正前の令和2年3月31日以前に発生した事故の日額は5,700円となります。

弁護士に依頼して休業損害が認められたケース

アディーレの弁護士に依頼後、家事従事者として休業損害が認められた例をご紹介いたします。

34歳・女性(専業主婦)の休業損害

保険会社提示額:0円
弁護士介入後:90万6,750円

45歳・女性(兼業主婦)の休業損害

保険会社提示額:94万7,910円
弁護士介入後:133万3,310円

48歳・女性(専業主婦)の休業損害

保険会社提示額:0円
弁護士介入後:102万1,542円

いずれのケースでも、弁護士介入後のほうが、金額がアップしていることがわかります。

家政婦や家事代行、シッターを雇った場合は?

交通事故により家事ができなくなったため、家政婦などのお手伝いさんを雇う方もいらっしゃいます。この場合、家事代行やシッターを雇う必要性が認められれば雇入れにかかった費用を損害として請求することができます。

ただし、具体的なケガの程度や家族の状況からみて、雇入れの必要があったことを立証することが求められるため、不相当と判断されることもあります。もし、不相当と判断された場合は、雇入れにかかった費用についての支払いが認められない可能性が高いので、注意が必要です。

家事従事者として休業損害を請求するために必要な書類とは?

専業主婦(主夫)として休業損害を請求する場合、家族構成や働いていないこと、扶養に入っていることなどを証明する必要があります。そのため、住民票や課税証明書の提出を求められる場合があります。お仕事と家事を兼業されている方の場合は、源泉徴収票が必要となることもあります。

また、加害者側の保険会社は、自賠責保険に対して家族であることの自認書(家族構成表)を提出することがありますので、自認書の提出を求められる場合があります。

※「家族構成表」見本
保険会社によって様式が異なりますが、記載する内容はおおむね同じです。このような書類が送られてきたら、事故当時の同居家族を記入し、提出しましょう。

弁護士に依頼するメリット

家事ができなくなった損害賠償を請求するために、弁護士に依頼するメリットは多々あります。ご自身では無理だと諦めていた休業損害を請求できたり相手から提示された賠償金を大幅に増額できたりする場合もあります。また、保険会社との面倒なやり取りからも解放され、少しでも以前の生活に近づけるようになることでしょう。

交通事故の賠償金について、休業損害は何かと争点になりがちです。何でもかんでもご自身で判断せず、まずは弁護士へ気軽に相談してみましょう。弁護士に相談するタイミングは、一般に、早ければ早いほどいいと言われています。特に、弁護士特約に加入されている場合は、費用倒れの心配がありませんので、お近くの弁護士事務所へご相談されてみてはいかがでしょうか?

まとめ

このように、主婦(主夫)のような家事従事者であっても、休業損害が認められるケースがあることがおわかりいただけたことと思います。
交通事故により、どのくらい家事に支障があったのか、どれだけつらい思いをされたかは、被害者ご本人やそのご家族の方しか知る由がないため、交渉ではもちろん、裁判になった場合でも、判断する人によって大きく金額が変わってきます。たとえば、被害者側は、損害に応じた金額を適正に計算して主張していたとしても、加害者やその保険会社は、「そこまで大きな損害は発生していないはずです」などと主張してくることもあるのです。

そんなとき、弁護士に依頼すれば、これらの問題を解決できる可能性が高まります。アディーレ法律事務所では、交通事故被害のトラブルを解決してきた実績が多くあります。ぜひアディーレ法律事務所にご相談ください。交通事故の被害にあわれた方に寄り添い、お悩みを早急に解決すべく、尽力いたします。アディーレの弁護士が、きっとあなたの力になるはずです。

この記事の監修者
村松 優子
弁護士 村松 優子(むらまつ ゆうこ)
資格:弁護士
所属:愛知県弁護士会
出身大学:愛知大学法学部

私は,司法試験を目指した当初から,親しみやすい法律家になりたいと考えていました。それは,私自身が弁護士に対して,なんとなく敷居が高そうというイメージを抱いていたからです。私は,司法試験に合格した後,学生時代の友人から,合格しても何にも変わらないね,安心したと言われました。弁護士になった後も,昔と変わらないねと言われ続けたいです。私は,ただすこし法律を勉強しただけで,そのほかは普通の人と何ら変わりはありません。なので,どんなことでも気軽に相談してください。