アディーレについて

物損事故か人身事故か誰が決める?物損扱いのデメリットや人身への切替え方法を解説

[ 公開日:2024/07/30 ] [ 更新日:2025/11/21 ]

交通事故にあった場合、その事故が「物損事故」として処理されるのか、「人身事故」として処理されるのかで、その後の対応や受け取れる賠償金額が大きく異なってきます。
そのため、物損事故と人身事故の違いを理解し、誰がそれを決めるのか、そしてそれぞれの処理方法や注意点について知っておくことは非常に重要です。

本コラムでは、物損事故と人身事故の定義や違い、そして事故後にどちらの処理が適切かを判断するためのポイントを詳しく解説します。
事故にあった際に最適な対応ができるよう、ぜひ参考にしてください。

なお、「物損事故」について、警察が交通事故を処理する際の用語としては「物件事故」が用いられ、交通事故は「物件事故」と「人身事故」の2つに区分されます。
このコラムでは、わかりやすいように一般的な呼び方である「物損事故」を使って解説します。

この記事でわかること
  • 物損事故と人身事故の違い
  • 物損事故か人身事故か、誰が決めるのか
  • 物損事故から人身事故に切り替える方法と期限
目次

物損事故(物件事故)と人身事故

交通事故には、大きく分けて「物損事故(物件事故)」と「人身事故」の2種類があります。
それぞれについて解説します。

物損事故(物件事故)とは

物損事故とは、交通事故によって物的損害が発生した場合のことを指します。車や建物などが損傷したものの、人が亡くなった、ケガをしたということがない事故のことです。次のようなケースが例として挙げられます。

物損事故の例

  • 車同士が衝突したけれど車体が傷ついただけで済んだ事故
  • ハンドルの操作を誤り、電柱やガードレールに接触してしまった事故

また、物損事故の被害者は、加害者から下記の損害賠償を受け取ることができます。

物損事故で被害者が受け取れる損害賠償

  • 車の修理費用
  • 評価損
  • 車の買替え費用
  • 代車のレンタル費用
  • 事故によってダメージを受けた物の修理費など

など

物損事故の場合、補償の範囲は物的損害のみにとどまり治療費や慰謝料は含まれません。
物損事故で請求できる損害を詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

人身事故とは

人身事故とは、交通事故によって人がケガをしたり亡くなったりしてしまった事故のことです。
人身事故の対象は、運転手だけでなく同乗者にも当てはまります。たとえ軽微なケガであっても、人が被害を受けた場合は人身事故として扱われます。

人身事故の例

  • 車同士が衝突し運転手がケガをした事故
  • 乗用車の助手席側にぶつかり、同乗者がケガをしてしまった事故
  • 車のアクセルとブレーキを踏み間違え、自転車に乗っていた人をはねてしまった事故

人身事故の場合、物損事故で請求できる費目に加え、以下の補償も受け取れる可能性があります。

人身事故で被害者が受け取れる損害賠償

  • 治療費
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 休業損害
  • 逸失利益
  • その他、交通事故によるケガに伴い発生する損害への補償

など

人身事故の場合、ものに関する被害の補償に加えて、事故が原因で受けた精神的苦痛についての補償など、さまざまな補償を加害者に請求できます。

人身事故で請求できる損害を詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

物損事故(物件事故)と人身事故の違い

次に、物損事故と人身事故の違いについて見ていきましょう。
交通事故が「物損事故」と「人身事故」のどちらに該当するかで、事故後の処理や対応が大きく異なります
物損事故と人身事故の主な違いを下記にまとめましたので、ご覧ください。

物損事故(物件事故)人身事故
ケガ・死亡なしあり
刑事罰の適用なしあり
違反点数の加算なしあり
保険の適用任意保険のみ自賠責保険と任意保険
賠償内容修理費などの物的損害のみ慰謝料・治療費など人的損害も含む
実況見分報告書の有無なし(物件事故報告書のみ)あり

ただし、物損事故で届け出たからといって、絶対に治療費や慰謝料の賠償請求ができないというわけではありません
実際には、警察での取扱いが「物件事故」になっていても慰謝料などが支払われるケースも多いです。

とはいえ、過失割合に争いがあるケースなどでは、人身事故の際に作成される実況見分調書が重要な証拠となる場合があります。
有利に交渉を進めるためにも、人身事故で届け出るほうが好ましいといえます。

人身事故では賠償金が高額になる

被害者に重い後遺障害が残った場合や死亡した場合、逸失利益や慰謝料が非常に高額となる可能性があります。
これに対して、物損事故では人身事故における慰謝料のような損害は基本的に発生しません。
そのため、加害者が被害者に支払う賠償金は、車の修理費などの物的損害(数万~数十万円程度)のみと低額です。

人身事故では刑事罰が科され、違反点数にも影響がある

人身事故の場合、加害者に刑事罰が科される可能性があります。
また、行政処分として違反点数が加算されるため、場合によっては免許停止・免許取り消しになることもあり得ます。

これに対して、物損事故の場合には、当て逃げなどの悪質な事故でない限り刑事罰の対象とならず、違反点数が加算されることも基本的にありません。

物損事故(物件事故)か人身事故か、誰が決める?

物損事故か人身事故かは、事故の性質や被害状況によって決まります。では、物損事故か人身事故かを判断するのは誰なのでしょうか。
また、自分が関わっている交通事故がどちらなのかを確認するにはどうしたらいいのか、についても解説します。

物損事故(物件事故)か人身事故かは警察が決める

事故現場に警察が到着すると、現場の状況や関係者の証言をもとに調査を行います。その結果、物損事故として処理するか、人身事故として処理するかが決定されます。
つまり、最終的にどちらとして処理されるかは警察によって判断されるのであり、被害者や加害者が直接決めることはできません。

ただし、現場に血痕が残るなど、明らかに被害者がケガをしたとわかる事故以外では、被害者が診断書とともにケガをしたと届け出たかを中心に判断されるのが実情です。

物損事故(物件事故)と人身事故のどちらで処理されているか確認する方法は?

物損事故か人身事故かは、警察の「交通事故証明書」や保険会社からの通知書などで確認できます。
交通事故証明書の右下「照合記録簿の種別」の欄に、人身事故もしくは物件事故(物損事故)と記載されていますので、確認してみてください。

人身事故を物損事故(物件事故)で処理された場合のデメリット

ケガをしてしまっても人身事故ではなく物損事故のままにしておくと、さまざまなデメリットがありますので、下記でご紹介します。

<人身事故を物損事故のままにしておくと生じる可能性のあるデメリット>

  • 過失割合の交渉で不利になり賠償金額が減ってしまう
  • 治療費や慰謝料などのケガをしたことに対する賠償が受けられなくなる可能性が否定できない※
  • すでに保険会社が治療費を負担しているような場合には、後になって物件事故であることを理由に保険会社が慰謝料などを払わないと主張してくることはほとんどないというのが実情です。

このようなデメリットが生じる可能性があることから、交通事故でケガなどをした場合は人身事故で届けるべきなのです。

物損事故(物件事故)で処理されても人身事故に切り替えられる

物損事故で届出をしてしまったあとでも、人身事故への切り替えは可能です。ただし、事故から時間が経ってしまうと切り替えが難しくなるため、早めに申請手続を行いましょう。
下記に、切り替える方法と切り替えの期限をご紹介します。

物損事故(物件事故)から人身事故に切り替える方法

物損事故(物件事故)から人身事故に切り替えるには、以下の手順で切替え手続を行います。

  1. 病院に行って診断書を作成してもらう
  2. 保険会社に連絡する
  3. 警察署で切替えの申請を行い、実況見分に立ち会う

①病院に行って診断書を作成してもらう

まずはケガをしていることを証明するために、早急に病院で診察を受けたうえ、診断書を作成してもらいましょう
診断書は、警察署で物損事故を人身事故に切り替えるために必要な書類です。診断書がない場合、事故によるケガであることを証明できません。必ず作成してもらってください。

一般的な交通事故では、整形外科を受診します。整形外科のある総合病院なら、必要に応じてケガに関連する検査なども一緒にしてもらえるからです。
なお、診断書を作成してもらうときは、作成費用と作成にかかる日数に注意が必要です。

【診断書の作成費用】
2,000円~1万円程度かかります。
ただし、のちほど加害者側に請求する余地があるため、領収書をなくさないようにしてください。

【診断書の作成日数】
診断書の作成には数日~数週間かかる場合があります。

②保険会社に連絡する

被害者の方が加入している任意保険会社と加害者側の任意保険会社の両方に、物損事故から人身事故に切り替える旨を連絡しておきましょう。
特に加害者側の保険会社に連絡をしないまま、ケガの治療をしていた場合、治療費や慰謝料などの支払いについて揉める可能が高いです。

③警察署で切替えの申請を行い、実況見分に立ち会う

診断書を受け取ったら、警察に持参し切り替えの申請書とともに提出しましょう。申請後、加害者と被害者が立会いのもと、実況見分が行われます。

実況見分の結果作成される「実況見分調書」は、示談交渉や裁判における重要な証拠となります。特に、過失割合を決める際には非常に重要な資料となりますので、正確に作成してもらう必要があります。

このような手続を経て、無事人身事故に切り替わったあと、「照合記録簿の種別」の欄に人身事故と記載されている「交通事故証明書」を受け取ることになります。

物損事故(物件事故)から人身事故に切り替えられる期限

物損事故から人身事故に切り替えるのに、実は厳密に〇日間以内と期限は決められていません。
ただし、「交通事故が起きてから10日以内」であればスムーズに切替えを行えるはずです。
管轄の警察署によっても違うため、警察から「人身事故に切り替える場合は〇日以内に申請してください」といった指示があった場合にはそれに従いましょう。

なお、物損事故の最大のデメリットは、「刑事記録が作成されない」という点です。
ただし、刑事記録は当事者の記憶などをもとに作成されるため、時間が経つにしたがって、刑事記録の証拠としての価値は下がっていきます。
そのため、事故についてお互いが詳細に覚えているうちに実況見分を行うことが大切となります。

交通事故でケガをした可能性があれば、人身事故として届け出を行いましょう

交通事故でケガをした場合は、迷わず人身事故として警察に届け出を行うことが大切です。
最初から人身事故で届け出をしていれば、その場で実況見分が行われ、記憶が定かな状態で記録を残してもらえるうえ、警察署に行って人身事故への切替え申請や、実況見分への立会いをする手間も要りません。

また、加害者側に無免許運転などの違法行為があった場合には、人身事故で届け出を行うことで、実況見分が行われます。
このとき作成された実況見分調書などは、示談交渉で揉めた際に証拠として使える可能性があります。

なお、「物損扱いになっているが、ケガをしていることがあとでわかった」という場合でも、「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を保険会社に提出すれば、治療費や慰謝料などといった適切な補償を受け取ることが可能です。

人身事故で申請すべきか迷ったら弁護士に相談を

突然の事故にあったとき、動転しているのに、「物損事故か人身事故か」などの判断を迫られても、ご自身でどう対応すればよいのかわからない場合がほとんどではないかと思います。

交通事故にあってどうしたらよいかわからなければ、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
「物損事故か人身事故か」という専門知識を必要とする判断をしてもらえるうえ、今後の対処法について適切なアドバイスをもらうことも可能です。

また、弁護士に依頼することで下記のようなメリットもあります。

  • 治療に専念できる
    ケガの治療をしながら、日常生活を送るだけでも大変なうえ、加害者側の保険会社とのやり取りもしなければならないとなると、精神的負担は大きいでしょう。
    弁護士に依頼すれば、書類手続や保険会社とのやり取りなどへのアドバイスも受けられるため、安心して治療に専念することができます。
  • 慰謝料などの増額が期待できる
    弁護士に依頼することにより、弁護士基準での慰謝料計算、適切な過失割合の主張、後遺障害等級認定の適切な申請、といったサポートを受けることができるため、結果として賠償金の増額を目指すことが可能です。

交通事故にあって不安な方はアディーレにご相談ください

交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
弁護士費用特約が付いていない方は、アディーレ独自の「損はさせない保証により、保険会社提示額からの増加額より弁護士費用が高い場合は不足分の弁護士費用はいただかないことをお約束します。(※)

また、アディーレへのお支払いは獲得した賠償金からお支払いいただく「成功報酬制です。(※)お手元からのお支払いはないため、弁護士費用特約が付いていない方でも安心してご依頼いただけます。

  • 委任契約の中途に自己都合にてご依頼を取りやめる場合、成果がない場合にも解除までの費用として、事案の進行状況に応じた弁護士費用等をお支払いただきます。

弁護士費用特約を利用する方の場合は、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはり相談者の方・依頼者の方に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、相談者の方・依頼者の方は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。

また、通常、弁護士費用がこの上限額を超えた部分は自己負担となりますが、アディーレにご依頼いただく場合は、保険会社の上限を超えた分の弁護士費用は請求いたしません
お手元からのお支払いはないため、安心してご依頼いただけます。

なお、弁護士費用特約の利用を希望する場合は、必ず事前に加入の保険会社にその旨ご連絡ください(弁護士費用特約には利用条件があります)。

交通事故被害でお困りの方は、ぜひお気軽にアディーレ法律事務所にお問合せください。

この記事の監修者
南澤 毅吾

アディーレ法律事務所

弁護士 南澤 毅吾(みなみさわ きご)
資格:弁護士、英検1級、簿記2級
所属:第一東京弁護士会
出身大学:東京大学法学部

弁護士は、大学入試・司法試験など型にはまった試験を課せられてきており、保守的な考え方に陥りやすい職業だと私は考えます。依頼者の皆さまの中にも、「弁護士=真面目」、言い換えれば頭が固い、融通が利かないというイメージをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。私はそのようなイメージをぜひ打ち破りたいと思っています。「幅広い視野、冒険心・挑戦心、そして遊び心を持った弁護士でありたい」、「仕事に真摯に取り組むのは当たり前だが、それ以上の付加価値を皆さまにご提供したい」。それが私のモットーです。