交通事故で過失割合が10対0になるケースとは?事故パターンを図で解説

- この記事でわかること
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- 過失割合の決め方
- 過失割合が賠償金に与える影響
- 過失割合が10対0になるケース
交通事故には、双方に過失がある場合と、当事者の一方にはまったく過失がない場合、いわゆる「過失割合が10対0」の事故があります。
では、どのようなケースであれば、過失割合が10対0の事故といえるのでしょうか?
今回は、保険会社との交渉でも用いられている「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」から、過失割合について、事故のパターン別に図を用いながらわかりやすく解説します。
- 目次
交通事故の過失割合とは?
交通事故における過失とは、一定の結果を予測し、注意していれば事故を回避できたにもかかわらず、注意を怠ったために事故を回避できなかったことをいいます。つまり、交通事故の原因となった不注意のことです。
たとえば、赤信号で停止しなければ、ほかの車両と衝突して事故が発生してしまうことは一般に予測できますよね。それにもかかわらず、赤信号を無視した結果、交通事故が発生した場合に、注意を怠ったとして過失が生じるのです。
そして、交通事故における過失には、不注意の度合いを示す割合がつくことが通常です。これを「過失割合」と呼び、過失割合は、発生した交通事故に対する当事者の過失の割合を、「3対7」や「0対100」といった数値で表現します。
交通事故の過失割合はどうやって決まる?
では、過失割合はどのようにして決まるのでしょうか?
過失割合は、裁判によらない示談交渉の場では、当事者双方の話合いによって決まります。その際、過去の裁判例や、事故類型をもとにした過失割合を定めた『別冊判例タイムズ38』などの書籍を参考に決定していくのが一般的です。
ここで、基本的な過失割合だけではなく、事故状況などから割合をよく吟味して決定する必要があるため、もし割合の修正が必要な部分(修正要素)があれば、主張していくことが大切です。保険会社に言われるがまま、過失割合について同意しないよう注意しましょう。
交通事故で過失割合があると何が変わる?
自分が事故の被害者で過失割合があると判断された場合、賠償金額から過失割合に応じた金額が減額されてしまいます。
たとえば、交通事故によって200万円の損害を受けたとします。そして、加害者と被害者の過失割合が7対3で、被害者側にも30%の過失があったとしましょう。
この場合、200万円のうち30%にあたる60万円が、被害者の過失に応じた金額であるとして減額されます。その結果、残額である140万円しか相手に請求できないことになります。
つまり、交通事故の賠償金を受け取るにあたって、過失割合の決定は非常に重要な要素であるといえるのです。
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【図解】交通事故で過失割合が10対0になるケース
交通事故で過失割合が10対0となるのは、センターラインオーバーや赤信号無視、追突事故など、ある程度類型化されていますが、事故状況に応じて個別具体的に判断されます。
そこで、過失割合10対0となるケースについて、図を用いて解説します。
なお、これらの交通事故は、さまざまな状況のもとで過失割合が10対0となったケースですので、同じような交通事故であれば、必ず過失割合が10対0になるというわけではありません。
四輪車同士の交通事故の場合
信号機がある交差点での事故

赤信号を無視した場合、赤信号を無視した車両にのみ過失が認められます。
ただし、青信号にしたがって交差点に進入した車両について、著しい過失や、かなりの不注意(重過失)が認められる場合には、被害者側にも過失が生じることがあります。
対向車同士の事故(センターオーバー)
自動車を運転する際、「車両は、道路の中央(軌道が道路の側端に寄って設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。)から左の部分を通行しなければならない」(道路交通法第17条4項)とされています。
そのため、下の図のようにセンターラインを越えて走行した場合、その車両(B)にのみ過失が認められます。

ただし、この場合でも、左側の車線を走行していた車両について、著しい過失やかなりの不注意(重過失)が認められれば、被害者側にも過失が生じることがあります。
また、センターラインを越えてきた車両が別の車両を追い越し中であったなどの事情がある場合にも、被害者側に過失が生じることがあります。
追突事故

追突事故の場合、基本的に追突された車に過失はなく、追突してきた車両の前方不注意や、車間距離不保持などの一方的な過失によるものと考えられます。
ただし、追突された車が、危険を防止するためにやむを得ず急停車したなどの場合を除いては、被害者側に過失が生じる可能性もあります。
単車と四輪車の交通事故の場合
単車とは、大型二輪車や普通二輪車だけでなく、原動機付自転車も含まれます。
単車は四輪車と比較して、交通事故による被害が大きくなりやすいことから、交通弱者と考えられています。そのため、過失割合の点においても、単車側の保護が図られています。
交差点における直進車同士の出会い頭事故


単車にも当然、信号機に従う義務があります。そのため、四輪車同士の場合と同様に、赤信号を無視した車両にのみ過失が認められます。
ただし、単車側に著しい過失やかなりの不注意(重過失)がある場合には、単車側にも過失が生じることがあります。
交差点における右折車と直進車の事故
右折車両と直進車両との衝突事故は、右折車と直進車の双方に過失が認定されることが多くあります。ですが、単車が右折信号に従い右折し、相手車両が赤信号を無視した場合には、直進してきた四輪車にのみ過失が認められます。

また、過去の裁判では、飲酒運転で右折し、なおかつ救護を行わず逃走しようとした加害者に対して、100%の過失を認めたものがあります。
対向車同士の事故(センターオーバー)
四輪車と同様に、単車も道路の中央から左の部分を通行しなければなりません。そのため、四輪車と単車のどちらがセンターラインを超えていたのかによって、過失割合が変わってきます。下の図でいえば、センターラインを越えて走行した車両(B)の一方的過失によるものとされています。

もっとも、単車側に前方不注視や、かなりの不注意(重過失)などがある場合には、単車側に過失が生じることがあります。
駐停車中の車両に対する単車の追突
停止中の四輪車は、一般的に回避行動をとることができないと考えられています。そのため、停止中の四輪車に単車が追突した場合、四輪車の過失を認定することはできず、単車の一方的過失によるものと認定されます。

ただし、事故当時、大雨などで視界不良であった場合や、四輪車に著しい過失、もしくはかなりの不注意(重過失)があった場合には、四輪車側にも過失が生じることがあります。
ただし、事故当時、大雨などで視界不良であった場合や、四輪車に著しい過失、もしくはかなりの不注意(重過失)があった場合には、四輪車側にも過失が生じることがあります。
歩行者は、自動車と比較して弱い立場にある交通弱者であると考えられています。
そのため、歩行者と四輪車、もしくは歩行者と単車との交通事故の場合、過失割合の点についても歩行者側の保護が図られています。
信号機の設置されていない横断歩道上の事故
横断歩道とは、「道路標識又は道路標示により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分」(道路交通法第2条1項4号)をいいます。


車両は、「横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」(道路交通法第38条1項)とされているため、横断歩道においては歩行者が優先されます。
そのため、横断歩道上の歩行者をはねてしまった場合は、車両側にのみ過失があると判断されるのです。
ただし、夜間の事故や幹線道路における事故の場合は、被害者側にも過失が生じることがあります。
信号機の設置されている横断歩道上の事故
歩行者が青信号に従って横断歩道の横断を開始した場合、四輪車側にのみ過失が認められます。





ただし、信号機の色が横断途中で青信号から赤信号へ変わってしまった場合の事故では、事故現場が幹線道路であるとき、歩行者側にも過失が生じることがあります。
まとめ
このように、過失割合の決定には、一定の基準があるものの、それぞれの交通事故の状況に応じて、加算もしくは減算の修正を行うことがあります。そのため、今回ご紹介した事故のケース以外であっても、過失割合が10対0となるケースが存在します。
しかし、少しでも過失を認めたくない加害者や、加害者側の保険会社は、被害者にとって不利となる過失を主張してくることが往々にしてあるため、過失割合の交渉は争いになることが多いのです。このうち、被害者にまったく過失がないと思われる交通事故であっても、交渉が長引いてしまい、被害者の方に大きな負担が生じることがあります。
そこで、次の記事では、過失割合を修正することができるケースと、加害者側の保険会社との交渉において注意すべき点をご説明いたしますので、ぜひともお付き合いいただけると幸いです。それでは、また次の記事でお会いしましょう!
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