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交通死亡事故の慰謝料はいくら?慰謝料が変わるポイントを徹底解説

[ 公開日:2021/01/26 ] [ 更新日:2022/09/03 ]
遺族
突然の交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、遺族の方のショックは筆舌に尽くしがたいところかと思います。せめて賠償金だけでも適切に受け取るために、被害者が死亡した場合の賠償金のうち、今回は、慰謝料に絞って解説します。
この記事でわかること
  • 死亡事故の慰謝料相場
  • 死亡事故で請求できる慰謝料の種類
目次

死亡慰謝料とは

死亡慰謝料の正体

交通事故で被害者の方が死亡した場合、損害賠償を加害者に請求することができます(民法第709条による)。
死亡慰謝料は、加害者に対して賠償を請求できる損害の1つです。
死亡慰謝料以外の損害としては、

  1. 被害者の方が生きて働いていれば得られるはずだった収入などの「逸失利益」
  2. 死亡したことで必要になった「葬儀代」
  3. 救命を試みるためにかかった「治療費」など

があります。

上の3つの例のように、損害賠償の多くは、金銭的な支出があったり、収入が減ってしまったりといった、財産的な損害を相手に請求できるものですが、民法第710条では、「…財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」とされています。
これにより、被害者の方が受けた精神的苦痛などの損害も相手に賠償請求することができます。そして、被害者の方が死亡したことによる精神的苦痛を金銭的に評価したものが、「死亡慰謝料」です。

死亡慰謝料の種類

さて、死亡慰謝料は、被害者が死亡したことによる精神的苦痛を金銭的に評価したものと説明しましたが、具体的に誰の精神的苦痛になるのでしょうか。これには、大きく分けて、被害者本人の精神的苦痛と、遺族の精神的苦痛の2つがあります。
民法第709条および第710条は、被害者本人の精神的苦痛を請求できるとしたルールですので、まずは、これらのルールにより、被害者本人の無念さなどの精神的苦痛を加害者に請求できます(相続人がこの権利を相続します)。
次に、民法第711条では、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定しています。これにより、遺族固有の慰謝料も加害者に請求できます。なお、条文上は、「被害者の父母、配偶者及び子」とされていますが、最高裁はこの規定による遺族固有の慰謝料について、文言上該当しない場合であっても、実質的にこれらと同視できる身分関係があれば請求可能としています。

このように、死亡慰謝料には、被害者本人の精神的苦痛に対する慰謝料と、遺族の精神的苦痛に対する慰謝料の2つがあります。
相続人である遺族は被害者本人の慰謝料を相続したものと遺族固有の慰謝料の2つを、相続人でない遺族は遺族固有の慰謝料を、加害者に請求できることになります。

死亡慰謝料の算定基準

3つの基準

これまでにも説明したとおり、死亡慰謝料は、精神的苦痛を金銭的に評価したものですから、財産的な損害と違って具体的な計算方法が当然に導かれるものではありません。もっとも、相場や算定方法は存在するのでそれを紹介します。
まず、慰謝料の算定の基準としては、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)の3つがあるといわれています。

自賠責保険基準

強制加入保険である自賠責保険から支払われる金額の算定基準です。自賠責保険は、簡易迅速に最低限の補償をするための保険であるため、金額としては低くなりますが、計算が画一的である、過失割合が7割未満の場合には過失相殺をしないなどの特徴があります。逸失利益なども含めた支払金額に上限があるという点も特徴的です。

任意保険基準

任意保険会社が支払いを行う場合の、任意保険会社の内部基準です。保険会社によって内容は異なりますが、自賠責保険基準よりも高額で、裁判所基準よりも低額であるのが一般的です。被害者に弁護士がついていない場合、保険会社は、自賠責保険基準か任意保険基準のいずれかを提案してくるのが通常です。

裁判所基準

裁判になった場合に裁判所が判断する際の基準であり、通常、3つの基準のなかでもっとも高額です(ただし、被害者の過失割合によっては、過失相殺を考慮すると自賠責保険基準がもっとも高額になる場合もあります)。弁護士が任意保険会社と交渉する場合にもこの基準を用います。

自賠責保険基準

自賠責保険基準の死亡慰謝料は、以下のように定められています(令和2年4月1日以降に発生した事故に適用される基準)。

死亡本人の慰謝料 400万円
遺族の慰謝料 遺族が1人の場合 550万円
遺族が2人の場合 650万円
遺族が3人以上の場合 750万円
被害者に被扶養者がいるときの加算 200万円
  • 遺族:被害者の父母(養父母を含む)、配偶者および子(養子、認知した子および胎児を含む)

被害者に遺族が3人以上いて、かつ被扶養者がいる場合がもっとも高額ですが、その場合は、合計で1,350万円(400万円+750万円+200万円)ということになります。
反対に、自賠責保険のいう遺族に該当する人がおらず、被扶養者もいない場合は、合計で400万円ということになります。

任意保険基準、裁判所基準

任意保険基準は、保険会社によって異なり、かつ一般には公表されていないため、詳細は不明ですが、自賠責保険より少し上乗せした金額が多いという印象です。
裁判所基準については、被害者の属性などにより金額が異なるので、以下で詳しく説明しますが、遺族慰謝料も含めておおむね2,000万円~2,800万円ほどです。

被害者別の死亡慰謝料の相場(裁判所基準)

被害者の分類

死亡慰謝料は、被害者の属性(家族内での被害者の役割)に応じて、

  1. 一家の支柱
  2. 母親、配偶者
  3. その他

の3つに分けて考えることが多いです。
この、三分説といわれる考え方は、裁判所基準のうち、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している、いわゆる「赤い本」(もともと東京の基準をまとめたものですが、現在では全国的に広がっているといってよいと思います)の考え方です。これは、「昭和時代の家族構成のイメージを、『老夫婦、働き盛りの夫(一家の支柱)、主婦の妻(母親、配偶者)、子供』とし、それぞれが死亡した場合に残された家族・家計への影響を考え、人ひとりの価値に差があるのではなく、慰謝料の補完性の観点から、差を設けるとの考えを背景としたもの」です。

慰謝料の補完性とは、おおざっぱに言ってしまえば、法律的には被害者が加害者に請求することのできる「損害」としては認め難い「実害」を慰謝料によって補完するという考え方です。
日弁連交通事故相談センターの本部が発行している、いわゆる「青本」(全国で用いることができる基準をまとめるために作られたもので、基準に幅があることが特徴的です)も、被害者の属性を3つに分けますが、こちらは、①一家の支柱の場合、②一家の支柱に準ずる場合、③その他の場合の3つに分けています。このなかで、②一家の支柱に準ずる場合については、「家事の中心をなす主婦、養育を必要とする子を持つ母親、独身者であっても高齢な父母や幼い兄弟を扶養しあるいはこれらの者に仕送りをしている者など」とされており、『赤い本』の②母親、配偶者という分類よりも若干広い概念になっています。
これに対して、大阪地裁民事交通訴訟研究会編のいわゆる「緑本」(大阪など主に関西で用いられる基準をまとめたものです)や、日弁連交通事故相談センター愛知県支部が発行している、いわゆる「黄色い本」(主に名古屋近辺で用いられる基準をまとめたものです)では、①一家の支柱と②それ以外の2つに分けるという考え方がされています。

 

一家の支柱

一家の支柱について、赤い本では、2,800万円を目安とし、具体的な斟酌事由により増減するとされています。
そのほか、青本では、2,800万円~3,100万円、緑本では2,800万円(加害者に飲酒運転、無免許運転、著しい速度違反、殊更な信号無視、ひき逃げ等が認められる場合、被扶養者が多数の場合、損害額の算定が不可能又は困難な損害の発生が認められる場合には増額を考慮し、相続人が被害者と疎遠であった場合には減額を考慮する。一家の支柱以外についても同様)などとされています。
一家の支柱の意義については、青本では、「当該被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいう」とされています。ほかの基準においてもおおむね同義であると考えてよいでしょう。
なお、いずれの本においても、自賠責保険基準などとは異なり、被害者の近親者固有の慰謝料もあわせた合計額であるとされています(一家の支柱以外についても同様です)。

母親、配偶者

母親、配偶者について、赤い本では、2,500万円を目安とし、具体的な斟酌事由により増減するとされています。
青本では、先ほども述べた通り、一家の支柱に準ずる場合としたうえで、2,500万円~2,800万円とされています。

その他

赤い本では、2,000万円~2,500万円を目安とし、具体的な斟酌事由により増減するとされています。
青本、緑本でも、同様に2,000万円~2,500万円とされています。
先ほど説明した三分説のイメージでも、この、「その他」には老夫婦と子どもの2つの属性がカテゴライズされています。裁判例の傾向としては、老夫婦にあたるような属性の場合には、2,000万円を下回る金額が認定されているものが多く見られ、反対に子どもや若年単身者などについては、2,000万円を相当上回る(どちらかというと2,500万円に近い)金額が認定されているものが多く見られるように思います。このようなことから、「その他」については、高齢者と子どもがこれに分類され、子どもが被害者である場合のほうがより高額であると整理することもできるのではないかと思います。

慰謝料の分配

交通事故で被害者の方が死亡した場合、加害者に対する損害賠償請求権自体が相続の対象になるので、慰謝料も含めて法定相続分にしたがって分配されるというのが基本的な考え方です。
しかし、先ほど「一家の支柱」でもご説明したとおり、慰謝料の金額は、被害者の近親者固有の慰謝料もあわせた合計額であるとされています。なお、近親者固有の慰謝料は、相続の対象ではなく、遺族自身が直接相手に対して請求できる権利です。
たとえば、被害者の方に配偶者1人と子ども2人がいる場合に、被害者本人の慰謝料は法定相続分にしたがって(配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつ相続することになります)分配するとします。そして、このときの慰謝料の内訳が、被害者本人の慰謝料が2,000万円、配偶者の慰謝料が300万円、子どもの慰謝料がそれぞれ200万円だった場合(合計2,700万円)、配偶者が1,300万円(2,000万円/2+300万円)、子どもがそれぞれ700万円(2,000万円/4+200万円)受け取ることになります。この金額は、合計2,700万円をそのまま法定相続分にしたがって分配した場合(配偶者が1,350万円、子どもがそれぞれ675万円)と異なる分配になります。
したがって、遺族が複数いる場合には、慰謝料の総額だけではなく、その内訳も重要になってきます。

まとめ

これまでにも説明したとおり、交通事故の死亡慰謝料は2,000万円を超えるような高額になることが多いです。
そして、保険会社が提案してくることのある自賠責保険基準と比べ、1,000万円以上の開きが出ることがあります。死亡慰謝料を適切に受け取るためにも、交渉を弁護士に依頼することをおすすめします。
また、今回は説明しませんでしたが、死亡事故の場合に相手に請求できるものとして、逸失利益などもあります。逸失利益も場合によっては数千万円以上になりますが、これについても適切な金額を加害者に支払ってもらうためには、弁護士に依頼するのが近道です。
ほかにも、過失割合など、専門家でなければ判断の難しい要素もあります。特に死亡事故では過失割合が少し変わるだけで、受け取る金額は大きく変わってきます。

賠償額が大きくなる死亡事故では、特に適切な金額であるかを慎重に見定める必要があります。弁護士に依頼することは敷居が高いと感じるかもしれませんが、無料で相談できる事務所もありますので、ぜひお気軽にご連絡いただけたらと思います。
アディーレ法律事務所では、死亡事故も含めた交通事故の被害に対し、適正な賠償金を受け取れるためのサポートをご提供しております。ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者
村松 優子
弁護士 村松 優子(むらまつ ゆうこ)
資格: 弁護士
所属:愛知県弁護士会
出身大学:愛知大学法学部

私は,司法試験を目指した当初から,親しみやすい法律家になりたいと考えていました。それは,私自身が弁護士に対して,なんとなく敷居が高そうというイメージを抱いていたからです。私は,司法試験に合格した後,学生時代の友人から,合格しても何にも変わらないね,安心したと言われました。弁護士になった後も,昔と変わらないねと言われ続けたいです。私は,ただすこし法律を勉強しただけで,そのほかは普通の人と何ら変わりはありません。なので,どんなことでも気軽に相談してください。

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