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交通事故で車をぶつけた!車両の修理費用と時価額はどう決まる?

[ 公開日:2022/05/20 ] [ 更新日:2022/09/03 ]
ほとんどの交通事故では、自動車が破損してしまい、修理が必要になります。
この修理代は、加害者が加入している自動車保険から支払われることが多いのですが、そのためには相手の保険会社と交渉しなければなりません。そして交渉の過程において、加害者側から「車両の時価額(車の価値分)までしか支払いません」などと主張されてしまい、修理費用の全額ではなく、一部しか損害として認められないことがあります。

この場合、被害者はどのように対処すればよいのでしょうか?
また、修理費用の賠償金は、時価額が上限となるのでしょうか?もし、時価額が上限だとすると、時価額とはどのように計算されるのでしょうか?

この記事では、物損事故において請求できる修理費用などの損害と時価額の計算方法について解説します。
この記事でわかること
  • 車両の修理ができない場合に請求できる損害と費用
  • 車両の修理ができる場合に請求できる損害と修理費用
  • 時価額の計算方法と評価損の請求について
目次

交通事故における物的損害とは?

交通事故による損害は多岐にわたりますが、大きく「物的損害」と「人的損害」の2つに分類することができます。

物的損害と人的損害は、賠償請求権としては別のものとして扱われ、示談書もそれぞれ取り交わすことが一般的です。そのため、「物的損害」は車や建物などの損害を相手に請求し、「人的損害」は人の身体や生命に関わる損害を相手に請求する必要があるのです。

物的損害とは、文字どおり「物」に対して発生した損害です。主なものとして、先ほど挙げた車や建物の損害のほかに、着衣(身に着けていた服やアクセサリーなど)の損害、車に載せていた荷物の損害、車の修理期間中に借りた代車の損害(レンタカー代)などがあります。

この記事では、これらの物的損害のうち、「車両損害」にフォーカスを当てて解説いたします。

車両の損害

交通事故によって自動車が壊れてしまった場合の修理費用など、車両について生じた損害を「車両損害」といいます。車両損害として加害者に請求できる金額は、車の修理が可能かどうかにより異なります。

修理できない場合

修理することができないほど、車両が壊れてしまった状態を「全損」といいます。全損には、「物理的全損」と「経済的全損」の2つがあります。

物理的全損と経済的全損の違いとは?

車両の損傷が激しく、物理的に修理ができないことがあります。この状態を「物理的全損」といいます。

これに対して、修理自体は可能であるものの、修理費用が事故車両の時価額(車の価値分)を超える場合を「経済的全損」といいます。つまり、経済的全損の場合、物理的には車両の修理ができるにもかかわらず、車の価値より修理費用のほうが上回ってしまうため、結果として全損と評価されてしまうのです。

全損の場合に請求できる損害

「全損」と判断されると、車両の修理費用全額をそのまま請求することはできません。
理屈として、時価額を賠償すれば、事故当時の車両と同じくらい価値のある車を代わりに購入することができるため、時価額を上回る修理費用を支払わなければならないとすると、壊れた車両の損害以上の損失を加害者に負担させることになり、公平性を欠くと考えられるからです。

車両の時価額は、オートガイド自動車価格月報(以下、「レッドブック」といいます)に基づき計算されるのが一般的です。レッドブックは、車の中古車の査定または売買の参考となるよう、当該年月の価格を予測・編集したもので、中古車価格の相場が示されています。

ただし、レッドブックには、過去10年間分の中古車価格が記載されていますが、10年以上前に初度登録された車両については記載がありません。そのため、事故車両の年式が古い場合は、レッドブックによって時価額を判断できないことがあります。

この場合、最後にレッドブックに記載されたときの価格から、どれくらいの時間が経っているかで金額を逆算したり、インターネットなどで事故車両と同車種、同年式、同型式の中古車価格の相場を参考にします。後者の場合、事故車両と同程度の走行距離やグレードの中古車を選ぶなど、できる限り事故車両の実態に近い相場を確認することが重要です。

また、全損の場合は、車両の買い替えが必要になることがあります。車両の買い替えによる登録諸費用については、交通事故による損害として加害者に請求できる場合があります。

<請求できる登録諸費用>

  • 自動車取得税
  • 消費税
  • 登録諸費用
  • 自動車登録法定費用
  • 登録手続代行費用
  • 車庫証明法定費用
  • 車庫証明手続代行費用
  • 車検手数料
  • 納車費用

保険会社から全損と言われた場合

保険会社から全損であると言われた場合、まずは本当に全損となるのか確認する必要があります。

物理的全損の場合は、修理工場に修理が可能かどうかを確認すればよいので、比較的簡単に全損であるかを判断することができます。

これに対して経済的全損の場合は、注意が必要です。
経済的全損の場合には、まず事故車両の修理費用と事故車両の時価額を調べます。修理費用は、修理工場の修理見積で確認することができます。また、時価額は、前述したレッドブックやインターネットの中古車価格の平均から確認することができます。レッドブックは一般家庭にある書籍ではないので、保険会社や弁護士に相談して確認するのがよいでしょう。

次に、これらの価格を調査したら、修理見積金額が時価額を上回るかを確認します。修理見積金額が時価額を下回る場合には、事故車両の具体的な時価額とともに、加害者側の保険会社へ損害部分についての請求をしましょう。

もし、修理見積金額が時価額を上回った場合、一定金額に至るまで時価額と修理費用の差額を支払ってもらえる特約があります。この特約を「対物超過修理費用特約」といいます。加害者がこの特約に加入していれば、時価額と修理費用の差額を保険金から補填することができるのです。

ただし、加害者自身に特約を利用する意思がない場合は、この特約を利用することはできません。

さらに、被害者にも過失割合が認められる場合には過失相殺されるため、損害の全額ではなく、一部分しか賠償金を支払ってもらえない可能性があります。

修理できる場合

修理が可能な場合は、修理費用を請求することができます。そのほかにも修理期間中に借りた代車の費用(レンタカー代)や、事故車両を修理工場に保管していた際にかかる保管料等、交通事故との因果関係が認められる損害(出費)については、加害者に請求することができます。

修理費用について

自動車を修理した場合、実際にかかった修理費用を請求できるのが原則です。
しかし、修理にかかった費用であれば何でも請求できるというわけではありません。少し難しい話となりますが、交通事故による損害賠償は、「これによって通常生ずべき損害」(民法第416条)について請求できるとされているため、一定の制限を受けるのです。

まず、請求できる修理費用は、交通事故と因果関係が認められるものに限定されます。たとえば、車両のリアバンパーを損傷したにもかかわらず、まったく関係のないフロントガラスの修理費用を請求することはできません。

次に、修理できる内容は相当と認められる限度までです。たとえば、鈑金で修理できるにもかかわらず、新品の部品に交換することはできません。また、一部の塗装で十分修理可能であるにもかかわらず、車両の全体を塗装する場合は、修理費用の請求が否定されることがあります。

このような因果関係や修理内容の相当性を確認するため、保険会社は「アジャスター」と呼ばれる専門家による調査を行います。そして、その調査に基づいて保険会社が修理費用を認定するのです。

代車費用について

交通事故で、車両の修理が必要になった場合、一定期間自動車を利用することができなくなってしまいます。

そこで、修理期間中に借りた代車費用を請求することができます。修理工場から代車を貸してもらえることもありますが、多くはレンタカー会社からレンタカーを借りることになります。

ただし、代車費用も無制限に認められるものではなく、必要性や相当性を欠くものは認められないことがあります。そのため、将来的なトラブル防止の観点から、レンタカーを借りるときには、事前に加害者側の保険会社の了承を得ておくのがよいでしょう。

その他の費用について

修理費用や代車費用のほかにも、交通事故による損害として請求できるものがあります。以下で、主なものを紹介します。

<請求できる損害>

  • 保管料
    事故車両を保管していた際に発生した費用
  • レッカー費用
    事故車両が自走できないため、レッカー牽引した際に発生した費用
  • 休車損害
    事故車両が社用車両である場合に、車両を利用できなくなったときに発生した損害
  • 積載物損害
    事故当時、車両内に積載していた物について発生した損害

事故車両は市場価値が下がる?評価損の請求について

交通事故で壊れた車両を修理して修復できたとしても、事故車両であることを理由に、車両の価値が低下してしまうことがあります。これを「評価損(格落ち損、評価落ち)」といいます。

この評価損を損害賠償に含めるかどうかは、①初年度登録から事故時までの時間的経過の長短、②走行距離の長短、③損傷の部位・程度、④修理の程度・金額、⑤車両の価値、⑥車両の希少性などを考慮して総合的に判断されます。

評価損が認められる場合、修理費用の10%~30%程度の金額が損害として認定されることが多いです。

もっとも、評価損は実務上、高級車であって、新車購入時から時間が経過していない場合などに限って認められることが多く、一般的な国産車については認められないことが多いのが現実です。

まとめ

物的損害においては、時価額や評価損、修理箇所に関して争いが生じることがよくあります。
交通事故の損害賠償請求においては、原則として被害者側が損害を立証する必要があるのですが、これらの立証には専門的知識が必要です。

この点、保険会社は交通事故のプロであり、さらに専門的知識を有するアジャスターを使って十分な調査を行うことで、自分たちに有利な証拠などを収集することができます。
それに対して、被害者の方は交通事故のプロではありません。そのため、ご自身で示談交渉を行って損害を証明していくことは、非常に困難です。

そこで、交通事故に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。弁護士に相談することで、資料を十分に精査でき、加害者側の保険会社の主張にしっかりと反論して、被害者に有利な示談交渉を進めることが期待できます。また、人的損害の賠償金(慰謝料など)を大きく増額できる可能性もあります。

したがって、交通事故の賠償金や損害部分について、少しでも不安や疑問を感じた場合には、交通事故の取扱いに慣れた弁護士に相談して、適切な内容で示談できるようにしましょう。一度示談をしてしまうと、あとから撤回することはできません。納得して示談するためにも、弁護士への無料相談などを活用して、情報収集されることをおすすめします。

この記事の監修者
石田 周平
弁護士石田 周平(いしだ しゅうへい)
資格:弁護士,行政書士(有資格)
所属:東京弁護士会
出身大学:神戸学院大学法学部,早稲田大学法科大学院

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