物損事故でも慰謝料が認められるケースはある!どんな場合か解説

交通事故の被害にあい、物が壊れたという場合、加害者に対してその修理代などを請求できます。
ですが、物が壊れた交通事故では、原則として加害者に物が壊れたことについての「慰謝料」を請求することはできません。
ただし、いかなる物損についても慰謝料がもらえないわけではなく、家族同然のペットが死亡した場合などの限定的なケースでは、慰謝料を請求できる場合があります。
そこで、この記事では、物損事故で慰謝料を請求できない理由や物損について慰謝料が認められたケースについて解説。加えて、物損事故で処理されたけれど実はケガをしていたという場合の対処法についてもご説明します。
- この記事でわかること
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- 物損事故で慰謝料を請求できない理由
- 裁判で物損について慰謝料が認められたケース
- 物損事故から人身事故に切り替えた場合の対処法
- 目次
物損事故と人身事故の違いは?
物損事故とは、交通事故により物が壊れただけで、人の被害(ケガや死亡など)はない場合です。
人身事故とは、交通事故によって物以外にも人がケガをしたり死亡したり、人に対する被害が生じている場合です。
物損事故の損害賠償項目
交通事故により物が壊れるなどの損害を受けた場合、加害者に対してその賠償を請求できます。
車両同士の物損事故について、相手方に請求できる損害賠償項目は、主に次のとおりです。
【車両の修理費用】
必要かつ相当な範囲で修理費用の請求ができます。
修理ができない場合(全損等)には、買替え差額を請求できます。
【代車費用】
必要かつ相当な範囲で代車使用料の請求ができます。
【評価損】
事故により減少してしまった市場価値です。
評価損は、事故車両の車種・初年度登録からの期間・走行距離などの諸事情を考慮して判断されます。
【レッカー代】
事故により自走が困難になり、レッカー移動が必要と合った場合には、レッカー代が損害として認められます。
【休車損害】
事故により、営業車として使用していた車両が使用できなくなった場合、減少した営業利益を請求できます。
なお、代車を使用して営業した場合には代車費用のみ請求できます。
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買替えの場合、廃車にするための費用、登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料なども請求できます。
あとでもご説明しますが、物損事故に関する損害賠償項目のなかには、「慰謝料」はありません。
【関連リンク】
交通事故被害で請求できる損害(物損・その他)
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事故を機に車の運転を止めようと思っています。
廃車にする場合、修理費は請求できますか? -
事故車両の修理をしておらず、修理の予定がない場合であっても、裁判では修理費用相当額の請求が認められたケースもあります。ただ、保険会社としては、修理未了の場合は修理代の支払いを拒むことが多いです。
そのような場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。
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交通事故で車が全損し、新車を買い替えました。
新車の車両価格は全額請求できますか? -
事故直前の車の時価額+事故車両の下取り価格を差し引いた『買替え差額』について請求できます。
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事故車両の時価額ってどうやって出すんですか?
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基本的には、中古車市場で、同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離などの中古車を買うときの価額です。
物損事故と慰謝料との関係
物損事故の損害賠償項目のなかに「慰謝料」がないのに疑問を持たれた方もいらっしゃるでしょう。
これは、物損事故では原則として「慰謝料」が認められないということを意味します。
交通事故の被害にあってケガをしたという場合(物損事故ではない場合)、次の慰謝料が請求できます。
【入通院慰謝料】
交通事故により入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する慰謝料
【後遺障害慰謝料】
後遺障害を負わされた精神的苦痛に対す恵右慰謝料。基本的には後遺障害等級認定を受けると請求できます。
【関連コラム】
【2025年最新版】交通事故の慰謝料の相場と計算方法
交通事故の「慰謝料」とは、基本的には交通事故によりケガをさせられたという精神的苦痛に対する損害賠償なのです。
「物」が壊れたことの精神的苦痛に対しては、一般には修理費などの財産上の損害が賠償されることにより、精神的苦痛も慰謝されることになると考えられているため、慰謝料は原則として認められません。
ただし、これまでの裁判で、極めて例外的なケースではありますが、物損について慰謝料が認められたことがあります。
裁判上、物損について慰謝料が認められたケース
裁判上、物損について慰謝料が認められたケースがいくつかあります。
- 飼い犬がケガをした・死亡した場合
- 墓石が破壊された場合
- 自宅が破壊された場合
- ※これらの場合でも、常に物損について慰謝料が認められるわけではなく、事案に応じて判断されることにご注意ください。
それでは、物損に関して慰謝料の請求が認められた裁判例を下記にご紹介します。
事案の概要 | 慰謝料の金額 | 裁判年月日 | |
---|---|---|---|
飼い犬がケガ | 交通事故により後肢麻痺を負い、自力で排尿、排便ができず、日常的かつ頻繁に飼い主による圧迫排尿などの手当てを要する状態 | 飼い主2名に各20万円 | 名古屋高裁2008年9月30日 |
飼い犬が死亡 | セラピー犬として飼育されていた犬が交通事故により死亡 | 10万円 | 大阪地裁2006年3月22日 |
墓石が破壊 | 霊園内で運転操作を誤り、墓石等に衝突した事例 埋設されていた骨壺が露出するような状態 | 10万円 | 大阪地裁2000年10月12日 |
自宅が破壊 | 車両が玄関に突っ込み、表玄関部分が破壊された事例 年末年始を含む1ヵ月以上に渡り、玄関にベニヤ板を打ち付けた状態で過ごすことを余儀なくされた | 20万円 | 大阪地裁2003年7月30日 |
一般的には違和感があるかもしれませんが、ペットについては、法律上は「物」として扱われます。
ですから、交通事故によりペットが死傷しても人に対する被害が生じていなければ、その事故は「物損事故」として扱われます。
ペットが交通事故によりケガをした場合に、必ず慰謝料が認められるわけではありません。
ペットがケガをしたときに慰謝料が認められるかどうかは、ペットのケガの程度や飼育年数などが考慮されます。
たとえば、事故にあった車に同乗していた飼い犬に全身の震えや食欲不振などの症状がみられるようになったというケースでは、「飼い主の被った精神的苦痛は、社会通念上、損害賠償をもって慰謝されるべきものとまでは言い難い」として、慰謝料請求が認められなかった裁判例もあります(大阪地裁判決平成27年8月25日参照)。
結局、交通事故においては「物」が壊れた場合の精神的苦痛というのは、基本的には物が直れば(あるいは代わりの物が手に入れば)慰謝されるという扱いとなっています。
ただし、家族同然のペットが死亡したなど、「壊されたら著しい精神的苦痛を受けるだろうという特別な財産が壊れた」という場合についてのみ慰謝料が認められる余地があります。
もしも、あなたが交通事故の被害にあい、ほかには代え難い極めて特別な物が壊れたのに、加害者の保険会社が一切慰謝料を認めないようであれば、一度、弁護士に相談されることをおすすめします。
本当はケガをしているのに物損事故と扱われている場合の対処法
ところで、本当は交通事故によってケガをして「人身事故」に該当するにもかかわらず、「物損事故」として扱われているというケースは少なくありません。
とくに、むち打ち症などは事故直後ではなくしばらくしてから痛みやしびれを感じることが多く、事故直後は「物損事故」として扱われていることがあります。
このような場合、加害者に慰謝料を請求できるのでしょうか。
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ケガをしている以上、「慰謝料」を請求できますよね?
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交通事故によってケガをした場合には、加害者に慰謝料を請求すること自体は可能です。
ただ、物損事故として扱われたままでは、加害者や保険会社が、ケガが交通事故によって生じたものではない(因果関係がない)と主張して、慰謝料の支払いを拒む可能性があります。
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事故直後はどこも悪くなかったので警察にそう伝えましたが、翌日からものすごく首が痛むんです。
どうしたらよいですか? -
すぐに病院を受診して診断書をもらい、警察に物損事故から人身事故に切り替えてもらってください。
事故から受診が遅れると遅れるだけ、のちのち因果関係が問題になります。
ケガをしているにもかかわらず、警察が物損事故として扱ったままでは、のちのち加害者や保険会社と示談をする際、治療費や慰謝料などの支払いを拒否されてしまうおそれがあります。
事故後に痛みやしびれを感じたという場合には、すぐに病院を受診して詳しく検査してもらいましょう。
人身事故について弁護士に依頼するメリット
事故当初は物損事故として扱われたけれど本当はケガをしていることがわかり、人身事故に切り替えたという場合、加害者との示談交渉にあたっては弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼するメリットは下記のとおりです。
- 最終的に受け取るお金が増える可能性がある
- 保険会社との面倒な交渉を任せられる
- 後遺障害等級認定の申請を代行してもらえる
①最終的に受け取るお金が増える可能性がある
弁護士に依頼した場合、しない場合と比較して最終的に受け取れる金額が増額される可能性があります。
たとえば「慰謝料」について見てみます。
交通事故の慰謝料の基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)がそれぞれ異なっており、通常は自賠責保険基準がもっとも低額で、弁護士基準がもっとも高額になります。

特に後遺障害等級が認定されるようなケガを負った場合には、後遺障害慰謝料の差はとても大きいです。
交通事故の示談を弁護士に依頼した場合、弁護士は、弁護士基準に近づけるよう交渉します。
保険会社に言われるままに示談をしてしまうと、大きな不利益を被ることがあるため、弁護士への依頼を検討されるのがおすすめです。
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②保険会社との面倒な交渉を任せられる
事故によるケガのための通院で辛いなか、加害者側の保険会社に対応しなければならないのは、被害者の方にとって心身ともに負担が大きいことでしょう。
弁護士にご依頼いただければ、依頼者の方に代わって弁護士が保険会社との交渉を行います。そのため、被害者の方は事故によるケガの治療に専念できるうえ、面倒で煩わしい示談交渉によるストレスからも解放されます。
③後遺障害等級認定の申請を代行してもらえる
後遺障害等級認定の申請手続は複雑で、必要資料の収集に不足がないかどうかの判断には、法律的・医学的な専門知識が必要です。また、後遺障害等級の認定結果に不満があった場合の異議申立てにも、認定結果を覆せるだけの専門知識を備えていることが求められます。
このようなことから、後遺障害等級の認定結果に疑問があっても、被害者の方ご自身がその妥当性を判断し対応するのは難しいものです。
弁護士なら、各種資料の精査・検討や後遺障害の異議申立てなどを行えるため、適正な認定結果の獲得を目指せます。
まとめ
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 「物損事故」については、加害者に対して壊れた物の修理代などを請求できるが、基本的に「慰謝料」を請求することはできない
- 例外的に、次のようなケースでは裁判上、物損について慰謝料の請求が認められたケースもある
1. 家族同然のペットが重いけがを負ったり死亡した場合
2. 墓石が破壊され、骨壺が露出した場合
3. 家屋に車両が突っ込み、不自由な生活を強いられた場合 - 事故当初は物損事故として扱われたケースであっても、事故後、ケガをしていることがわかった時点ですぐに病院を受診して警察に人身事故に切り替えてもらう必要がある
- 事故から受診が遅れると、のちのち、加害者側からケガと事故との因果関係が争われるおそれがある
- 人身事故の示談交渉を弁護士に依頼すると、最終的に受け取れる示談金が増額される可能性がある
- 弁護士に依頼する際の弁護士費用が心配という場合には、「成功報酬制」の事務所に依頼するとよい
このように、物損事故だからといって、絶対に慰謝料が請求できないわけではありません。
ただし、例外的なケースですのでご自身で交渉するのは難しいでしょう。
また、ケガをしているのに物損事故として扱われている場合には、本来受け取れるはずの慰謝料などを加害者から支払ってもらえないおそれがあります。
そのような場合には、交渉を得意とする弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
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