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腰椎骨折で認められる後遺障害等級と慰謝料について

自転車やバイクで交通事故にあって転倒し、腰部を強く打ちつけたり、自動車同士の事故で、高速度で追突されたりした場合、腰椎骨折が生じる場合があります。
この骨折は、痛みやしびれが残り日常生活に大きな支障が生じてしまう、骨が変形してしまうなどのさまざまな症状があり、後遺症につながることも珍しくありません。

このような状況となってしまった場合、どのような後遺障害が認められるのか、受け取れる慰謝料はいくらなのかを本コラムでは解説していきます。

この記事でわかること
  • 腰椎骨折の症状がわかる
  • 腰椎骨折で認められる後遺障害の種類がわかる
  • 腰椎骨折で請求できる慰謝料の相場がわかる
目次

腰椎骨折とは

腰椎骨折とは、腰の骨が折れた状態を指します。
腰椎とは、上下に連なる背骨のうち、頸椎・胸椎の下に続く5個の骨のことをいいます。簡単に言えば、背骨の下のほうにある骨のことです。

腰椎骨折にもさまざまな種類があり、圧力がかかって、つぶれたように骨折した状態を「腰椎圧迫骨折」、腰椎が破裂するように、複数の骨が広い範囲で骨折した状態を「腰椎破裂骨折」といいます。

腰椎骨折の症状

交通事故により腰椎が骨折した場合、骨折部分の痛みが主な症状として発生します。
骨折の程度によって痛みに個人差はありますが、体の中心に位置する腰は、あらゆる動作を支える基盤となるため、起き上がったり、立ち上がったりするときに強い痛みが生じることも多いのです。

また、痛み以外にも、下肢のしびれや麻痺等の症状が出る可能性も考えられます。

腰椎骨折の後遺障害等級

腰椎骨折による代表的な後遺障害として、「変形障害」と「運動障害」の2つがあります。それぞれの障害について、詳しく見ていきましょう。

変形障害

変形障害としては、以下の後遺障害等級が認められる可能性があります。

  1. 6級5号(脊柱に著しい変形を残すもの)
  2. 8級相当(脊柱に中程度の変形を残すもの)
  3. 11級7号(脊柱に変形を残すもの)

脊椎圧迫骨折等が生じており、骨折の状態がX線写真等により確認できれば、少なくとも11級7号に認定されます。もっとも、圧迫骨折であっても、椎体(脊椎を形成するリング状の部分)のヒビのみにとどまり、変形が軽微であるとして、変形が認められないこともあります。
そのため、たとえ圧迫骨折という診断であっても、X線写真等で変形の程度を確認する必要があるでしょう。

また、事故直後の変形が小さくても、日常生活のなかで蓄積された負担などにより、数ヵ月かけて椎体の変形が進行するケースもあります。
特に高齢者の場合は、若年者と比べて骨組織が弱くなっていることも多く、事故にあってケガをしてから、3ヵ月程度経過したあとに、再度X線写真を撮影することが好ましいです。
そのため、当初医師から「骨に異常なし」と診断されたとしても、痛みが継続するようであれば、椎体の変形が進行している可能性もあるので、再度撮影を行うべきでしょう。

なお、高齢者の場合、X線写真上では、加齢性の変形が圧迫骨折のように見えることもあり、交通事故と圧迫骨折との因果関係が問題になることもあります。

通常、圧迫骨折は、歩行者対自動車の事故や、二輪車の衝突・転倒事故、追突速度が時速60キロ以上の激しい追突事故といった、大きな交通事故で発症するものです。
そのため、因果関係が問題になった場合には、「圧迫骨折が生じうるほどの交通事故であったのか」、「事故直後の新鮮な圧迫骨折による強い痛みや炎症があったのか」などを加味して、因果関係の有無について判断していくことになります。

運動障害

運動障害としては、以下の後遺障害等級が認められる可能性があります。

  • 6級5号(脊柱に著しい運動障害を残すもの)
  • 8級2号(脊柱に運動障害を残すもの)

厚生労働省が定める具体的な認定基準は、下記のとおりです。

6級5号

次のいずれかにより頸部および胸腰部が強直したもの

ア‐頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折が存しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
イ‐頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
ウ‐項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

8級2号

ア‐次のいずれかにより、頸部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの
a.頸椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
b.頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
c.項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
イ‐頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの

後遺症慰謝料の相場

後遺障害等級が認定されると、後遺症慰謝料を獲得することができます
これは、“後遺障害が残ってしまったことに対する精神的損害の賠償”として支払われるものですが、この金額は自賠責保険から支払われる金額(自賠責保険基準)と弁護士に依頼した場合に支払われる可能性のある金額(弁護士基準)とで大きく差があります。そのため、損をしないためには弁護士に依頼して交渉するほうがよいといえるでしょう。

一例として、これまでに紹介した以下の等級における賠償金額を比較してみます。

後遺障害等級自賠責保険基準弁護士基準
第6級512万円 (498万円)1,180万円
第8級331万円 (324万円)830万円
第11級136万円 (135万円)420万円
  • ()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合

また、後遺障害等級の認定によって、逸失利益(交通事故による後遺症がなければ、将来得られたはずの収入)も認められます
もっとも、変形障害11級においては、骨が多少変形しても労働能力は失われず、保険会社が逸失利益を提示してこないケースもあるため、注意が必要です。

11級でも痛みが残ることは多く、慢性的な痛みが生じている場合、たとえ体をあまり動かさない事務職であったとしても、集中力の欠如から労働能力に影響をおよぼすことも考えられます。保険会社に対して、主張するべきところはしっかりと主張していきましょう。

まとめ

交通事故による腰椎骨折の後遺障害等級は、適切な認定を受けるためのコツがあります。
また、交通事故の示談交渉は、通常、事故の相手方(加害者)が加入する保険会社と行うことになりますが、保険会社は交渉のプロであり、プロを相手に、被害者自身で交渉を行うのは容易ではないのが実情です。

そこで、後遺障害等級の認定手続や示談交渉を弁護士に依頼すれば、適切な等級認定を受けられる可能性や慰謝料金額を増額できる可能性が高まります。腰椎骨折を始め、交通事故の後遺障害等級に関する疑問や、慰謝料請求の手続については、ぜひアディーレ法律事務所へお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
中西 博亮
弁護士 中西 博亮(なかにし ひろあき)
資格:弁護士
所属:東京弁護士会
出身大学:岡山大学法学部,岡山大学法科大学院
私は、交通事故案件に特化して取り組んでおり、これまで多数の案件を解決してきました。加害者側の保険会社は交通事故の被害者の方に対して低い慰謝料しか提示しないため、正当な補償を受けられない被害者が多いという実情があります。被害者の方に正当な補償を受け取っていただけるよう、私は日々、被害者の方のお声を聞き、被害者の方に代わって加害者側の保険会社と戦っています。