後遺障害9級の症状、慰謝料、交通事故発生からの流れ

- この記事でわかること
-
- 後遺障害9級の認定要件
- 後遺障害申請の流れ
- 自賠責保険基準と裁判所基準の違い
- 適切な賠償金を受け取るための方法
交通事故でケガをすると、治療を続けても治癒せずに痛みや症状が残ってしまう、いわゆる「後遺障害」。後遺障害は、症状の程度によって14段階の等級に分かれており、重度のものほど等級の数字が小さくなります。
なかでも、労務が相当に制限される症状や、外貌の醜状など、さまざまな症状が認定要件とされている「後遺障害9級」。今回は、後遺障害9級について、認定されるまでの流れや認定要件、賠償金を請求できる項目について、わかりやすく解説いたします。
「自分やご家族が9級に該当するかわからない」、「9級認定を受けたけど、適切な賠償金がわからない」という方は、ぜひご覧ください。
- 目次
後遺障害9級の認定基準
後遺障害9級の要件は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害 | 保険金額 |
---|---|---|
9級 | 1. 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの | 616万円 |
2. 1眼の視力が0.06以下になったもの | ||
3. 両眼に半盲症、視野搾取又は視野変状を残すもの | ||
4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | ||
5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | ||
6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの | ||
7. 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | ||
8. 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの | ||
9. 1耳の聴力を全く失ったもの | ||
10. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | ||
11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | ||
12. 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの | ||
13. 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの | ||
14. 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの | ||
15.1足の足指の全部の用を廃したもの | ||
16.外貌に相当程度の醜状を残すもの | ||
17.生殖器に著しい障害を残すもの |
後遺障害9級の各号別認定要件とは?
1号.両眼の視力が0.6以下になったもの
視力検査によって、左右両方の視力が0.6以下となった場合に認定されます。
ここでいう「視力」とは、裸眼ではなく、眼鏡やコンタクトレンズを着用した状態での視力(矯正視力)をいいます。そのため、裸眼での視力が0.6以下であっても、後遺障害9級の認定要件を満たさないので、注意が必要です。
2号.11眼の視力が0.06以下になったもの
視力検査によって、左右どちらかの視力が0.06以下となった場合に認定されます。
ここでいう視力も1号と同様に、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正視力のことをいいます。裸眼ではない点に注意が必要です。
3号.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
視野とは、眼前の一点を見つめていて、同時に見ることができる外界の広さのことをいいます。この視野に関する障害には、半盲症、視野狭窄、視野変状の3種類があります。
- 半盲症
半盲症とは、注視点を境界として、両眼の視野の右半分または左半分が欠損するものをいいます。
半盲症には、両眼同側が欠損する「同名半盲」、左右で反対側が見えなくなる「異名半盲」、両側の眼の一致した4分の1が見えなくなる「四半盲」があります。 - 視野狭窄
視野狭窄とは、視野周辺の狭窄のことです。
視野狭窄には、同心性狭窄と不規則狭窄があります。同心性狭窄とは、見ている物体の中心部分をしっかり見ることはできるものの、その周辺が暗く見えなくなってしまう症状のことをいいます。不規則狭窄とは、視野の一部が不規則な形で狭くなるもので、上方や内方に起こるなどの特徴があります。 - 視野変状
ここでいう視野変状とは、暗点と視野欠損のことをいいます。
暗点とは、生理的視野欠損以外の病的欠損を生じたものをいいます。つまり、視野のなかに見えない部分があることです。ここでいう暗点とは、絶対暗点のことを指し、明るく強い光なら見えるが暗い光だとわからない状態は含まれないので、注意が必要です。 また、視野欠損とは、視野のなかに見えない部分があることをいいます。
4号.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
まぶたに著しい欠損を残すとは、閉瞼時(普通にまぶたを閉じた場合)に、角膜を完全に覆いきれない程度のものをいいます。
本号が認定されるには、両眼に著しい欠損を残すことが必要で、片目の場合は後遺障害11級が認定されます。
また、閉瞼時に角膜を完全に覆うことができるものの、球結膜すなわち白目が露出している程度のものは著しい欠損にはあたらず、「まぶたの一部に欠損を残すもの」として両眼なら後遺障害13級、片目なら後遺障害14級が認定される可能性があります。
5号.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
「鼻を欠損」するとは、鼻軟骨部の全部または大部分の欠損をいいます。また、「機能に著しい障害を残す」とは、鼻呼吸困難または嗅覚喪失となった場合をいいます。
機能に著しい障害が残らない場合であっても、鼻の欠損が認められる場合は、外貌の醜状障害として後遺障害7級が認定される可能性があります。
また、鼻の欠損が、鼻軟骨部の全部または大部分に達しないものであっても、顔面部に10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3㎝以上の線状痕を残すなど「外貌に醜状を残す」程度のものと認められる場合には、後遺障害12級が認定される可能性があります。
6号.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
6号に認定されるためには、咀嚼と言語の双方の機能に障害を残すことが必要です。
咀嚼の「機能に障害を残す」とは、固形食物のなかに咀嚼ができないものがあること、または咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合をいいます。
たとえば、白米や煮魚などは咀嚼できるけれども、たくあんやピーナッツなどの固いものが咀嚼できない場合です。
「言語の機能に障害を残す」とは、4種の子音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、1種類の発音ができなくなることです。4種の子音とは次のとおりです。
4種の子音
- 口唇(こうしん)音/ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ
- 歯舌(しぜつ)音 /な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ
- 口蓋(こうがい)音/か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
- 喉頭(こうとう)音/は行音
7号.両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
聴覚に関する後遺障害は、次のような専門的な検査によって聴力レベルを数値化して判断します。
- 純音による聴力レベル検査(純音聴力レベル)
純音を用いて、聞こえる閾値を測定する聴力検査です。オージオメーターを用いて調べます。 - 語音による聴力検査(明瞭度)
情報伝達のため、日常で使っている言語音を検査音として用いて、その聞こえ方を調べる検査です。言葉が正しく聞き取れているかを調べます。 - その他精密聴力検査
聴力に関する後遺障害は、その程度によって以下の図のように区分されています。
【一耳と他耳の聴力レベルの組み合わせによる認定基準】


後遺障害9級7号の認定要件としては、両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの、または両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上かつ最高明瞭度が70%以下となった場合に認定されます。
「dB(デシベル)」とは音圧の単位です。参考として、以下で具体的な音量の目安をお伝えします。
- 60dB:乗用車の車内など、大きな声を出せば会話できる程度の騒音
- 50dB:家庭用室外機など、通常の会話が可能な程度の騒音
8号.1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつもう一方の耳の平均純音聴力レベルが50dB以上である場合に認定されます。
参考として、以下で具体的な音量の目安をお伝えします。
- 80dB:地下鉄の車内など、極めてうるさい騒音
- 50dB:家庭用室外機など、通常の会話が可能な程度の騒音
9号.1耳の聴力を全く失ったもの
具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが90dB以上となった場合に認定されます。
参考として、以下で具体的な音量の目安をお伝えします。
- 90dB:騒々しい工場内など、うるさくて我慢できない騒音
10号.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
中枢神経系に分類される脳または脊髄を損傷したことで、精神障害や身体障害が生じ、服することができる労務が相当な程度に制限される場合に認定されます。
「服することができる労務が相当な程度に制限される」とは意思疎通能力、問題解決能力、作業負担に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力のうち、いずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものをいいます。
たとえば、1人で手順どおりに作業を行うことが難しいことがあり、たまには助言を必要とする場合には、問題解決能力の相当程度が失われているものとして、後遺障害が認定される可能性があります。
なお、4つの能力のうち2つ以上の能力の相当程度が失われているものと判断された場合は、後遺障害7級に該当します。
11号.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
呼吸器、循環器、腹部臓器、泌尿器などの機能について、主に次のような場合に認定されます。
- 次に該当する呼吸機能障害が残った場合
動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下のもので、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲にあるもの - 次に該当する循環器障害が残った場合
・心機能の低下による運動耐容能の低下が中等度(おおむね6METsを超える強度の身体活動が制限されるもの)であるもの
・ペースメーカーを植え込んだもの
・房室弁又は大動脈弁を置換したもののうち、継続的に抗凝血薬療法を行うもの - 次に該当する腹部臓器障害が残った場合
・食道の狭さくによる通過障害を残すもの
・胃の切除により、消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
・小腸を大量に切除し、残存する空腸及び回腸の長さが100㎝以下となったもの
・大腸の障害のうち、用手摘便を要すると認められるもの
・大腸の障害のうち、便失禁を残すもので、常時おむつの装着が必要なもの
・肝硬変のうち、ウイルスの持続感染が認められ、かつAST・ALTが持続的に低値であるもの
・すい臓の外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの - 次に該当する泌尿器障害が残った場合
・じん臓を失い、GFRが30ml/分を超え50ml/分以下のもの
・一側のじん臓を失い、GFRが50ml/分を超え70ml/分以下のもの
・尿路変向術を行ったもののうち、禁制型尿リザボア及び外尿道口形成術を除く尿禁制型尿路変向術を行ったもの
・排尿障害を残すもののうち、残尿が100ml以上であるもの
・蓄尿障害を残すもののうち、常時パッド等を装着しなければならないが、パッドの交換までは要しないもの
12号.1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
「手指を失った」とは、次のいずれかに該当する場合をいいます。
- 手指を中手骨又は基節骨で切断したもの
- 近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)において、基節骨と中節骨とを離断したもの
親指の指節間関節とは、親指の途中にある関節のことをいい、近位指節間関節とは、親指以外の指の途中にある関節のうち根元に近いほうの関節のことをいいます。
13号.1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失った、または中手指節関節もしくは近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいいます。
具体的には次のいずれかに該当するものです。
- 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
- 中手指節関節又は近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
- 親指については、橈側外転又は掌側外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているものも、「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います
- 手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも、「手指の用を廃したもの」として取り扱います
なお、これらの指の後遺障害については、利き手であるか否かは問われません。
14号.1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
「足指を失ったもの」とは、中足指節関節から先を失ったものをいいます。中足指節関節とは、足指の付け根にある関節のことです。
15号.1足の足指の全部の用を廃したもの
「足指の用を廃した」とは、親指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったものまたは中足指節間関節もしくは近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいいます。
具体的には次のいずれかに該当するものです。
- 親指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
- 親指以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したもの又は遠位指節間関節又は近位指節間関節において離断したもの
- 中足指節間関節又は近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
16号.外貌に相当程度の醜状を残すもの
「相当程度の醜状を残すもの」とは、顔面部の長さ5㎝以上の線状痕で、人目につく程度以上の大きなアザや傷痕をいいます。
17号.生殖器に著しい障害を残すもの
「著しい障害を残すもの」とは、生殖機能は残っているものの、通常の性交では生殖を行うことができない状態をいいます。
具体的には次のいずれかに該当するものです。
- 陰茎の大部分を欠損したもの
- 勃起障害を残すもの
- 射精障害を残すもの
- 膣口狭さくを残すもの
- 両側の卵管に閉塞もしくは癒着を残すもの、頸管に閉塞を残すもの又は子宮を失ったもの
後遺障害9級認定の流れ
後遺障害等級の認定手続には、被害者自身で後遺障害を申請する「被害者請求」と、加害者の保険会社に手続を任せる「事前認定」という2つの方法があります。
まずは被害者請求の流れから見てみましょう。
被害者ご自身で申請する方法 <被害者請求>
ステップ1 治療を受け、主治医に自賠責書式の診断書・診療報酬明細書を作成してもらう
毎月の入通院日や、症状、治療状況が記載されます。一般的に治療費は、保険会社が直接病院へ支払い、自賠責保険会社への請求も行うため、被害者が収集する書類は少ないです。
追加や補足の資料が必要になった際は、保険会社から取り寄せるようにしましょう。
もし、保険会社が治療費の対応を行っていない場合は、被害者の方が診断書や明細書を収集する必要があります。治療終了の際や、被害者から自賠責保険会社に対して賠償金の請求を行う(被害者請求)際に、主治医に作成いただくのがよいでしょう。
ステップ3 主治医に症状固定判断をもらう
「症状固定」とは、被害者が十分な治療を受けたうえで、主治医からこれ以上は治療効果がなく、症状が良くも悪くもならないと診断された状態にあることをいいます。
一般的に、「治療を終了する日=症状固定日」となるケースが多いです。
なお、幸いにも症状が改善している、完治したといった場合は、後遺障害にはあたりませんので、症状固定日は存在しないことになります。
ステップ3 主治医に後遺障害診断書を作成してもらう
症状固定日が決まったら、後遺障害が残っていることを後遺障害診断書に記載してもらいます。
まずは、病院で診断を受ける前に、あらかじめ自覚症状をご自身で整理したうえで、医師に診断してもらう際には、自覚症状を正しく、漏れなく、遠慮なく伝えることを心がけてください。
主治医に症状をしっかりと伝えないことで、ご自身が思っていたよりもずっと軽い症状を後遺障害の診断書に記載されることがありますので注意しましょう。
ステップ4 主治医に必要に応じて検査や、画像を撮影してもらう
正しく症状を把握し、適切な認定を受けるためには、MRIによる画像検査や、関節可動域制限の測定なども有効です。
また、後遺障害9級については、咀嚼および言語障害(6号)や聴覚障害(7号、8号、9号)によって後遺障害認定を受けることがあります。これらは画像などから判断するのが難しいため、特に注意が必要です。
まず、6号の「咀嚼および言語障害」についてですが、それぞれ必要な資料が異なるので注意しましょう。咀嚼機能については、「そしゃく状況報告表」により判断されるのが一般的です。状況報告表に加えて医師に画像を撮影してもらい、あごの骨がどの程度ずれているかを明らかにしておくことも有効です。また、言語障害については、言語聴覚士による証明書などを取得しておくとよいでしょう。
次に、7号から9号の「聴覚障害」についてですが、単に聴覚検査を行っただけでは後遺障害として認定されないことがあります。そのため、聴覚検査に加えて、聴性脳幹反応検査の必要性も検討するべきです。「聴性脳幹反応検査」とは、脳波で聴力を調べる検査のことです。主治医とよく相談して、効果的な書類を収集することが重要です。
ステップ5 申請するための書類を用意する
必要書類は下記のとおりです。
こちらに見本をご用意しましたので、作成の際は参考にしてください。
- 【サンプル】自動車損害賠償責任保険 支払 請求書 兼 支払指図書
JA版はこちら - 交通事故証明書
事故が発生した場所を管轄する各都道府県の自動車安全運転センターから取得します。 - 事故発生状況報告書
ご自身または、事故当時者等、事故状況に詳しい方が作成します。 - 診断書
治療を受けた医師または病院から取得します。 - 診療報酬明細書
治療を受けた医師または病院から取得します。 - 後遺障害診断書
症状固定となったら、治療を受けた医師または病院から取得します。 - 印鑑証明書
- 住民票または戸籍抄本
被害者が未成年、かつ請求者が親権者の場合のみ取得します。
ケガに対する慰謝料や、交通費、休業損害等を後遺障害と一緒に請求したい場合は、下記書類も併せて用意します。
- 入院・通院交通費明細書
休業損害証明等、休業損害の立証資料、賞与減額証明書
家事従事者の場合は、世帯全員の名前が記載されている住民票
ステップ6 ステップ1~ステップ5までの書類を自賠責保険会社に送付する
資料が一とおりそろったら、次はいよいよ後遺障害の申請です。
必要な情報を記載した請求書と資料一式を加害者側の自賠責保険会社に郵送します。請求先である自賠責保険会社は、「交通事故証明書」から確認することができます。
ステップ7 認定結果が判明
請求内容にもよりますが、結果がわかるまでに、おおむね1~3ヵ月程度の期間がかかります。
その後の流れとして、郵送した書類は自賠責保険会社を経由して、損害保険料率算出機構という調査機関で損害の調査が行われます。損害が認定されたのち、調査結果は自賠責保険会社を経由して、被害者に通知されます。その後、支払指図書に従い、保険金の支払いが行われます。
個人で行う被害者請求では、注意点や用意する資料がたくさんあり、対応が難しいことが多いでしょう。そこで、難しい手続を簡単にするための請求方法をお伝えします。
弁護士に依頼し、代理で被害者請求してもらう方法
弁護士は、被害者に代わって被害者請求を行うことができます。
ほとんどの手続を任せられるという点では、後述する「事前認定」と似ていますが、弁護士に依頼した場合、被害者の方が資料を持ち合わせていないことがままあります。「事前認定」と手続を比較すると、弁護士が保険会社や病院から書類を集めるための時間がかかる点が異なります。
ステップ1
弁護士に相談・依頼する。
ステップ2
弁護士が保険会社から資料を収集し、被害者の方からヒアリングする。
ステップ3
資料の追加、修正が必要な場合は、弁護士もしくは被害者自身で対応する。
ステップ4
手続に必要な資料を弁護士に郵送する。
ステップ4以降は、弁護士が手続を行います。
弁護士は「被害者の代理人」という立場で手続を行いますので、当然いい結果となるよう、全力でサポートします。特に、日頃から交通事故の案件を扱う弁護士は後遺障害等級認定に詳しく、同じ症状であっても認定されやすい表現や、症状の立証のために必要な検査についてのアドバイスが可能なため、適正な後遺障害の等級認定を受けられる可能性がグンとあがるのです。
また、異議の申立てや、紛争処理機構への申立手続などにも精通しているので、さまざまなアプローチから認定の可能性を検討することができます。
加害者側の保険会社にお任せする方法 <事前認定>
被害者に代わって、加害者側の保険会社が後遺障害申請手続を代行して行うことを「事前認定」と言います。多くの場合、保険会社のサービスで治療費は保険会社が直接病院へ支払い、自賠責保険会社に対する請求もまとめて対応する「一括対応」の流れが一般的で、被害者が用意する書類も少ないことから、手続がもっとも簡単な方法だといえます。
ステップ1 症状固定日が決定したあと、保険会社に後遺障害申請希望の旨を伝える
保険会社から打診されることもあります。
ステップ3 手続に必要な資料を保険会社に郵送する
郵送後は、保険会社が手続対応してくれます。
自賠責保険会社への請求で必要な資料は、申請者が被害者であっても保険会社であっても変わりません。そのため、手続に必要な資料を保険会社が収集し、手続まで行ってくれるため、申請者にとって負担が少ない方法です。
しかし、保険会社は、手続の一環として対応するだけですので、自覚症状が漏れなく表現されているかなど、書類の精査まで行ってくれるわけではありません。また、診断書を作成する医師のほとんどは「医学のプロ」であり、「自賠責保険における後遺障害認定のプロ」ではありませんので、どうしても表現に不足がある、自覚症状を軽く書かれてしまうなどのケースがあります。
つまり、手続は早いし簡単だけれど、正しく認定されるとは限らないということです。
後遺障害9級が認定!賠償金はどう変わる?
後遺障害9級が認められた場合、「後遺障害の慰謝料」と「逸失利益」を賠償金に追加して請求することができます。
自賠責保険基準で支払われる保険金は?
自賠責保険基準における9級の保険金額の上限は、以下のとおりに決められています。
後遺症慰謝料 :249万円
逸失利益 :367万円
※令和2年4月1日以降に発生した事故の場合
認定を受けるとまず、後遺症慰謝料と逸失利益の合計額である「616万円」を上限として、後遺障害の保険金が支払われます。
※条件によって減額されることがあります。
被害者は保険会社に対し、これを超える金額を請求することとなりますが、たとえば、根拠なく「慰謝料1,000万円だ!」と言っても、保険会社が応じることはありません。金額交渉をするのであれば、裁判上で考えられる金額を基礎として設定されている「裁判所基準」を用いることが最良です。
裁判所基準で請求できる慰謝料は?
自賠責保険基準では249万円が上限と定められていますが、裁判所基準では「690万円」です。実に2倍以上もの開きがあることがわかります。この差は大きいですね。
認められる逸失利益は?
逸失利益(いっしつりえき)とは、交通事故により負傷し、治療を尽くしても一定の後遺障害が残ることで労働能力が低下してしまい、事故がなければ将来獲得できたであろう収入が減ってしまうことをいいます。
基本的な計算方法は下記の通りです。
事故前年の年収額 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除したものです。
ワンポイント 中間利息控除計算の係数について
中間利息控除計算の係数には、単利計算のホフマン係数と、複利計算のライプニッツ係数が存在します。
逸失利益の計算では、利息を控除する必要があるため、単利計算であるホフマン係数のほうが被害者にとって有利ですが、現在はライプニッツ係数を採用することが原則となっています。
- 事故前年の年収額
もっとも現状の収入能力に近いと推測できる事故前年の収入から計算されることが一般的です。 - 労働能力喪失率
影響の度合いです。後遺障害9級における労働能力の喪失率は35%です。
年齢や仕事内容によってもさまざまですが、労働能力に大きな影響をおよぼすことが多く、3分の1程度の労働能力を失うと想定されています。 - 喪失年数
労働力に影響がある期間です。
理論上、症状固定を迎えてから67歳、または平均余命の2分の1のいずれか長いほうとされています。
交通事故処理の知識・経験がない方にとっては、逸失利益の算定について理解が難しいこともあるかと思いますので、まずは下の例をご覧ください。
<例>50歳で500万円の年収があったが、後遺障害9級が認定。仕事に甚大な影響が出た場合
まず、これまで得られていた500万円が、理論上35%減ることとなります。そして、67歳までの17年間にわたって影響がありそうだとなった場合、「500万円の45%が17年間喪失する」ということになります。実際には、「17年」ではなく、17年に対応するライプニッツ係数をかけることが一般的です。
単純計算すると、「500万円×35%×17年=2,975万円」となります。
これが、逸失利益の考え方です。
自賠責保険基準では、収入金額にかかわらず367万円を上限としていますので、適正な金額で請求しないまま示談してしまうと、大きく損をしてしまう可能性があります。
次は、ライプニッツ係数を使った計算についてご説明します。
ライプニッツ係数を使った計算方法
ライプニッツ係数表
労働能力喪失期間(年) | ライプニッツ係数(5%) | ライプニッツ係数(3%) |
---|---|---|
1 | 0.9524 | 0.9709 |
2 | 1.8594 | 1.9135 |
3 | 2.7232 | 2.8286 |
4 | 3.546 | 3.7171 |
5 | 4.3295 | 4.5797 |
6 | 5.0757 | 5.4172 |
7 | 5.7864 | 6.2303 |
8 | 6.4632 | 7.0197 |
9 | 7.1078 | 7.07861 |
10 | 7.7217 | 8.5302 |
11 | 8.3064 | 9.2526 |
12 | 8.8633 | 9.954 |
13 | 9.3936 | 10.635 |
14 | 9.8986 | 11.2961 |
15 | 10.3797 | 11.9379 |
16 | 10.8378 | 12.5611 |
17 | 11.2741 | 13.1661 |
18 | 11.6896 | 13.7535 |
19 | 12.0853 | 14.3238 |
20 | 12.4622 | 14.8775 |
21 | 12.8212 | 15.415 |
22 | 13.163 | 15.9369 |
23 | 13.4886 | 16.4436 |
24 | 13.7986 | 16.9355 |
25 | 14.0939 | 17.4131 |
26 | 14.3752 | 17.8768 |
27 | 14.643 | 18.327 |
28 | 14.8981 | 18.7641 |
29 | 15.1411 | 19.1885 |
30 | 15.3725 | 19.6004 |
31 | 15.5928 | 20.0004 |
32 | 15.8027 | 20.3888 |
33 | 16.0025 | 20.7658 |
34 | 16.1929 | 21.1318 |
35 | 16.3742 | 21.4872 |
36 | 16.5469 | 21.8323 |
37 | 16.7113 | 22.1672 |
38 | 16.8679 | 22.4925 |
39 | 17.017 | 22.8082 |
40 | 17.1591 | 23.1148 |
上記の例を正しく計算すると、500万円×35%×ライプニッツ係数という計算になります。
事故にあった日によって、使用する係数が異なりますが、今回は2020年4月に施行された民法の改正により定められた年利3%を採用して計算してみましょう。
そうすると、17年のライプニッツ係数は「13.1661」となりますので、500万円×35%×13.1161=2,295万3,715円となります。
ライプニッツ係数について、将来のお金を今、先取りで得ると、運用していくことで利息を増やすことができるなど、のちに受け取るよりも価値があると考えられているので、「先取りするなら利息分引いておくよ」という考えから、ライプニッツ係数を採用しています。
ワンポイント 民法改正による中間利息の改正について
改正民法は、2020年4月に施行されました。民法改正後の2020年4月1日以降に交通事故にあわれた方は、ライプニッツ係数(3%)を、民法改正前の2020年3月31日までに交通事故にあわれた方は、ライプニッツ係数(5%)を採用することとなります。
中間利息の年利が5%から3%に引き下げられたことで、控除される利息は少なく、受け取れる金額は増えることとなり、結果として逸失利益は民法の改正前より改正後のほうが高くなります。
定期金賠償に関しては、中間利息を控除することはありません。
裁判所基準で請求するなら弁護士への相談がオススメ
ここまでで、自賠責保険基準と裁判所基準で受け取れる金額に大きな差があることは、おわかりいただけたと思います。
ご自身で対応していく場合、知識がある保険会社の担当者は、慰謝料や賠償金の手出しが少なくなるよう、自賠責保険基準に近い金額を提示することが多く、初めから裁判所基準で計算して支払いをしてくれることは極々稀と考えておいていいでしょう。
交通事故の被害にあったとき、手続に詳しい弁護士のサポートを受けた後遺障害申請手続か、裁判所基準で計算された賠償金額かなど、弁護士に依頼するか否かで、認定される後遺障害の等級や受け取れる賠償金額に大きな違いが生じる可能性があります。
後遺障害の申請を考えている場合や、後遺障害が認められた際の慰謝料や賠償金請求は、交渉を得意とする弁護士に依頼することで、大きなメリットがあるケースが多いため、まずは無料相談できる弁護士に相談されることをおすすめします。
もしも交通事故に遭ってしまったら...
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