休業補償はいつもらえる?計算方法や受給条件についても弁護士が解説

- この記事でわかること
-
- 休業補償と休業損害の違い
- 休業補償の計算方法
- 休業補償はどれくらいの期間でもらえるか
交通事故の被害にあってケガをしてしまい、仕事を休まざるを得なくなった場合には、加害者に休業損害を請求できます。さらに、その交通事故が業務中や通勤中であった場合は、休業補償を受けることも可能です。
そこで今回は、休業補償についての基本的な解説をするとともに、混同しやすい休業損害との違いや、休業補償の計算方法やもらえる期間などについても説明いたします。
- 目次
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休業補償と休業損害の違い
交通事故などによって、ケガをして働けなくなり、収入がなくなってしまった場合、加害者などからそれを埋めてもらう必要があります。この場面で、「休業損害」や「休業補償」といった言葉を聞くことがあると思います。言葉の意味合いとしては、「休業補償」と言う場合は、支払う側からのニュアンスが強くなり、場面によっては、そもそも制度として用意されているもの(特に、全額を補填するものではないもの)を指すようなイメージです。
そのため、交通事故で相手や保険会社に損害賠償を請求する場合には、「休業損害」という用語を使うのが一般的です。もちろん、保険会社などが「休業補償」という言葉を使っていても、内容が「休業損害」と同一であれば問題ありませんし、用語としても誤りではありません。
しかし、もし労災の休業補償給付などを指していた場合には注意が必要ですので、それぞれについて説明していきます。
労災保険における休業補償とは
業務中や通勤中にケガをしてしまい、それによって仕事を休んだ場合、労災保険から、休業補償給付または休業給付が支払われます。なお、業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付といいます。
交通事故における休業損害との違いは、先ほど少し触れたとおり、下記の内容などが挙げられます。
- 全額を保証するものではないこと
- 有給休暇を使用しても補償の対象にならないこと
- ケガをした人に過失があった場合に過失相殺されないこと
休業損害とは
休業損害は交通事故などの被害者になってケガをしてしまい、それによって仕事を休んだ場合に加害者に対して請求するものです。加害者は保険に加入していることが通常であるため、請求先は、自賠責保険や任意保険になることが多いです。
休業損害は、実損害を請求するという性質のため、たとえば有給休暇を使用した部分についても、請求可能であることが一般的です。これは、「自由に使えるはずの有給休暇を、交通事故のために消費してしまったことによる損害がある」とされるからです。
他方で、加害者の責任を追及するという性質でもあるため、被害者の側にも過失があった場合、過失相殺により減額されてしまいます。
また、自賠責保険に請求する場合には、自賠責保険自体の上限金額(治療費や慰謝料も含めた合計で120万円)や、1日あたりの金額に上限金額(1万9,000円)があることにも注意が必要です。
ただし、自賠責保険は、被害者の過失が7割未満であれば過失相殺をしないということになっていますので、被害者の側に過失がある場合には、自賠責保険のほうが有利なケースもあります。
休業補償と休業損害を比較
わかりやすいように、上記で解説した内容を表にまとめていますので、ぜひ併せてご確認ください。
休業補償 | 休業損害 | |
---|---|---|
対象となる事故 | 勤務中・通勤中の事故 | 人身事故全般 |
請求先 | 労災保険 | 自賠責保険 任意自動車保険 |
有給休暇 | 補償の対象外 | 補償の対象 |
過失相殺 | なし | あり |
休業(補償)給付でいくらもらえるか
労災保険を利用した場合には、休業(補償)給付と、休業特別支給金が支払われることになります。
この章では、休業(補償)給付と休業特別支給金によって、実際にいくらもらえるのか計算方法と併せて解説いたします。
休業(補償)給付の計算方法
休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%×対象日数という形で計算されます。
給付基礎日額とは、「交通事故などの発生前3ヵ月間の賃金総額(賞与などは含まない)を事故前3ヵ月の総日数で除した金額」を指します。要するに、事故前の給料の1日あたりの金額を計算したものということです。
対象日数は、休業4日目から治療終了までの休業した日数になります。これは、休業3日目までが待期期間と呼ばれ、労災保険からは支給されないからです。
休業(補償)給付の計算例
では、例を使って、実際に休業(補償)給付の計算をしてみましょう。
月の給料が30万円の人が、2020年5月に事故にあい、待期期間以外に30日間休業した場合
90万円(30万円+30万円+30万円)÷90日(29日+31日+30日)=1万円
1万円×60%×30日=18万円
休業特別支給金の計算方法
次に、休業特別支給金は、給付基礎日額の20%×対象日数という形で計算されます。
給付基礎日額や対象日数については、休業(補償)給付と同様です。
休業特別給付金の計算例
休業特別給付金についても、例を用いて計算してみます。条件は、先ほどの休業補償給付金と同様とします。
休業(補償)給付はいつまでもらえるのか
休業(補償)給付の計算方法についてご理解いただけたかと思いますので、次は、もらえる期間についてご説明いたします。
申請から給付決定までは1ヵ月くらい
労働基準監督署の労災保険に関するパンフレットによれば、給付決定までの期間は、請求書を受理してからおおむね1ヵ月とされています。ただし、場合によっては1ヵ月以上を要することもあるとされています。
原則的には傷病が治癒するまでもらえる
休業(補償)給付は、傷病が治癒するまでの間、療養のために働くことができず、賃金を受けていないという条件を満たす限り、期間や金額などについて制限なく受給することができます。
ただし、この「治癒」は、いわゆる完治とは異なる概念であることには注意が必要です。
交通事故における「症状固定」と同じで、治療により症状が改善しなくなった時点を指しているからです。
また、療養は必要なものの、働くことはできるという状態などもあり得るため、症状が改善することにより、療養中に休業(補償)給付の支払いが終了することもあります。
また、療養の開始から1年6ヵ月以上を経過したもののうち、特定の内容のケガである場合には“傷病年金”が支払われることになりますが、この場合は、休業(補償)給付は支払われなくなります。この傷病年金は休業(補償)給付より高額ですので、特にケガが重い場合には増額され、その際に名前も変わるというイメージを持っていただければと思います。
休業(補償)給付の3つの受給条件とは
休業(補償)給付を受けるには、決められた条件を満たす必要があります。先ほど少し触れましたが、それぞれ3つの受給条件がありますので詳細について解説します。
業務または通勤による負傷や疾病の療養中であること
まず、業務中または通勤中の事故などであることが必要です。
業務中である場合には業務災害、通勤中であれば通勤災害として労災が支払われ、補償の名称も、業務中の場合は休業補償給付、通勤中の場合は休業給付となります。補償の内容は基本的には同一です。
なお、療養給付に一部負担金200円があり、休業給付から控除されることや、業務災害の場合には待期期間について使用者が賃金の6割を支払う義務があることなどの相違点があります。
賃金を受け取っていないこと
また休業によって賃金が発生しないことが必要です。
このことにより、有給休暇のような賃金が発生する休業や、年俸制などの休んでも給与が減額されない雇用形態である場合には、休業(補償)給付は支払われません。
労働できる状態にないこと
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休業(補償)給付の申請方法
休業(補償)給付は、労働基準監督署に休業補償給付支給請求書または休業給付支給請求書を提出することにより申請します。
厚生労働省は、この申請に基づいて休業(補償)給付を支給すべきかを調査し、おおむね1ヵ月程度で支給するかを判断します。支給すると判断された場合、請求書で指定した口座に休業(補償)給付が振り込まれることになります。
なお、請求書の様式は、厚生労働省の下記ページからダウンロードできます。
休業(補償)給付と休業損害の併用について
休業(補償)給付と休業損害の違いについてはご説明しましたが、なかには「それぞれ併用はできないのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
果たして、休業(補償)給付と休業損害は併用できるのでしょうか。
重複部分が相殺される
結論からお伝えすると、休業(補償)給付と休業損害は、損益相殺の対象となるため、二重取り、つまり併用することはできません。
加害者に交通事故での賠償請求をする場合には、休業(補償)給付として支払われたものを差し引いて請求することになりますが、この際、過失相殺後に差し引かれるということになっています。そのため、本人の過失割合が4割以下の場合には、休業(補償)給付を請求してもしなくても、最終的に受け取れる金額は同じになります。また過失割合が4割を超える場合には、6割の金額が支払われる休業(補償)給付を請求するほうが、受け取れる金額は高くなるのです。
休業特別支給金は相殺されずに受け取れる
一方、休業特別支給金については、休業(補償)給付と異なります。損益相殺の対象とならず、交通事故賠償から差し引かれないことになっているのです。そのため、特別支給金については、請求するとその分最終的に受け取れる金額が多くなります。
また、休業(補償)給付を請求せずに、特別支給金だけを請求することもできます。
併用した場合としなかった場合の金額比較
最後にご説明した内容を表にまとめますので、併用した場合としなかった場合の金額をご確認ください。
条件は、月給20万円で1ヵ月休業した場合。過失0、単純化のために待期期間は考慮していません。
労災のみ | 保険のみ | 両方 | 両方(特別支給金のみ) | |
---|---|---|---|---|
休業(補償)給付 | 12万円 | - | 12万円 | - |
特別支給金 | 4万円 | - | 4万円 | 4万円 |
休業損害 | - | 20万円 | 8万円 (20万円-12万円) | 20万円 |
受け取れる金額 | 16万円 | 20万円 | 24万円 | 24万円 |
弁護士に依頼すると変わること
今回説明した休業(補償)給付と特別支給金の違いのように、労災保険を使用することで、金額が増える場合と増えない場合があります。特に会社との関係や手間などを考えたときに、今回労災を使用すべきか否かを判断するのは難しいと思います。
しかし、弁護士に相談すれば、労災を使うべきかなどについても個々の事情に応じて判断できますし、適切なアドバイスを受けることもできます。また、もし金額などで揉めることになってしまった場合も、弁護士に依頼をしていれば、法に則ったサポートを受けられるため、そういった面でも安心できるでしょう。
まとめ
説明してきたとおり、通勤中や業務中の事故でケガをした場合には、相手方への休業損害の請求と休業(補償)給付が請求できます。
休業(補償)給付は休業損害と二重取りできませんが、特別支給金は休業損害とは別個に支払われるなど、複雑なルールになっています。万が一、間違った取扱いがされてしまって、損をしないためにも、ぜひ一度弁護士への相談をご検討ください。
もしも交通事故に遭ってしまったら...
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※2016/6/1〜2021/8/31。
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