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交通事故の症状固定って何?誰が決めるの?弁護士が詳細を解説。

症状固定
この記事でわかること
  • 症状固定は誰が判断するのか
  • 症状固定時の症状が、後遺障害に認定され得ること
  • 保険会社が症状固定を急ぐ理由

交通事故の被害にあわれた方が、ケガの治療を続けていると、一定のタイミングで、加害者の保険会社から「症状固定」という話をされることになります。
たとえば、「事故から3ヵ月が経つので、もう症状固定になる」といった説明をされることがあります。

しかし、「症状固定」という耳慣れない単語をいきなり持ち出されても、どのように対応するべきなのか判断に迷われてしまうでしょう。
そこで、「症状固定」とは何なのか、「症状固定」とは誰が判断し、何のために行うのかなどの疑問にお答えします。

目次

症状固定とは

交通事故で負ったケガの治療を続けていると、ある時期を境に、症状がよくなったように感じるときもあれば、症状が強く感じられるきときもあるという、一進一退の状態になることがあります。
このように、治療をしても症状が改善せず、一進一退になっている状態を法律用語で「症状固定」といいます。

当然ですが、治療を続けた結果、症状がなくなって完治することを、全員が望まれているでしょう。しかし残念ながら、交通事故でケガを負われた方のなかには、完治せずに症状が改善しない方、つまり症状固定時の症状が残存してしまう方もいらっしゃるのです。
詳しくはあとでも説明しますが、通常は、症状固定に至ったと医師が診断した日が症状固定日とされ、その日以降は症状固定の状態であると扱われます。また、症状固定時点で残存している症状のことを「後遺症」と呼ぶことがあります。

症状固定の重要性

保険会社から症状固定の話を持ち出された方のなかには、症状固定は保険会社のためにあるものとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、症状固定自体は、被害者の方にとっても重要な役割を担っています。

症状固定はなぜ行うのか

交通事故の被害者には、保険会社から賠償金が支払われます。
賠償金にはさまざまな項目がありますが、たとえばそのうちの一つである入通院慰謝料であれば、基本的には治療期間に応じて金額を算定します。
言い換えると、治療期間がいつまでなのかが決まらなければ、慰謝料の金額も算定できないことになります。

完治した場合であれば、完治した日までが治療期間ということで問題がありませんが、症状が一進一退の状況から改善しない場合には、どこかで区切りをつけないと、いつまでも治療期間が確定せず、慰謝料の金額も算定できません。
そこで、症状固定時までを治療期間として区切ることで、症状が一進一退の状況から改善しない場合でも慰謝料の金額を算定できるようにしているのです。

症状固定を行うとどうなるか

交通事故の被害者は、保険会社に対し、交通事故によって生じた損害の賠償を求めることができます。
交通事故の被害にあうことによって、ケガの治療のための治療関係費、仕事を休んだことでの減収(休業損害)、精神的・肉体的な苦痛(入通院慰謝料)といった損害が発生することになります。
それらの損害は、先ほど述べたように、症状固定によって区切りをつけて、基本的には症状固定までの期間についてのみ認められます。
言い換えれば、症状固定によって、具体的な治療関係費や休業損害、入通院慰謝料といった賠償金の算定が可能になるのです。

では、「症状固定よりあとに発生する損害の賠償はされないの?」と思われるかもしれませんが、それは違います。
たとえば、症状固定後にも残存している後遺症が、後遺障害に認定されたとしましょう。その場合、後遺障害によって、将来の収入が減少してしまうであろう部分の賠償(逸失利益)や、後遺障害が残ってしまったことへの精神的損害(後遺症慰謝料)の賠償を求めることができるのです。
この症状固定よりあとに発生する損害のことを「後遺障害による損害」と呼ぶこともあります。

症状固定後の通院はどうなるか

症状固定は、賠償金の算定をするために「区切り」としての役割を果たしますが、それ以降の治療を制限するものではありません。
症状固定後も治療を続けること自体には何ら問題はなく、治療が必要であれば継続すべきです。
ただし、症状固定で区切りをつけた以上は、症状固定以降の治療費は保険会社に請求できず、自己負担になります。
その場合は、健康保険や労災保険等を活用することで、自己負担を軽減することも検討すべきでしょう。

損害賠償請求の消滅時効がスタートする

交通事故の損害賠償請求には、時効があります。
一定の期間が経過して時効となってしまうと、保険会社から賠償金の支払いを受けることができなくなる可能性があるのです。
損害の種類によって、時効になるまでの期間や、その期間がいつからスタートするのかは異なります。このうち、後遺障害による損害については、症状固定日から5年で時効になります。

なお、2020年4月1日に新しい民法が施行された関係で、場合によっては3年で時効になってしまっている可能性があることに注意が必要です。2020年4月1日より前の事故であれば、後遺障害による損害については、症状固定日から3年で時効となってしまいます。2020年4月1日より前の事故でも、その日時点でまだ時効になっていなかった場合には、症状固定日から5年で時効となります。
また、これらは保険会社(正確には加害者の任意保険会社)に損害賠償を請求する場合であって、たとえば自賠責保険に保険金の支払いを求める際(被害者請求)には、損害の種類や事故発生時期によって異なる年数となります。

このように、時効には複雑なルールが存在するので、症状固定から時間が経っている場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

症状固定は誰が決める

症状固定は医師が診断する

「治療をしても症状が改善せず、一進一退になっている状態」を症状固定というと説明しましたが、本当にその状態になっているかどうかは、基本的には被害者を直接診ている医師がもっとも適切に判断できるといえます。
ですので、症状固定となっているかどうかは、基本的には医師が判断することになります。

ただし、あくまで症状固定は法律用語であって、必ずしも医学的な考え方ではありません。また、同じ被害者でも医師によって症状固定の判断が分かれることもあります。「症状固定はいつか?」という点が争いになった場合には、究極的には、裁判官が法的な判断によって決めることになります。

保険会社は早く症状固定をしたがる

ご説明してきたように、症状固定までの期間しか、治療費や休業損害、入通院慰謝料などの支払対象となりません。すると、これらを支払う保険会社としては、少しでも早く症状固定となれば、それだけ支払うべき金額を抑えることができます。
そのため、保険会社は、被害者に対し、早期に症状固定とするよう迫ることがあります。

保険会社から症状固定と言われたら

先ほど述べたように、症状固定の判断をするのは基本的に医師であって、保険会社ではありません。たとえ保険会社から「症状固定です」と言われたとしても、それだけを理由に治療を中止するべきではないのです。まずは医師の診断・指示に従いましょう。

また医師以外でも、弁護士に相談すれば、症状固定の妥当性について、法的な観点から検討することができます。
たとえば、医師が「まだ症状固定ではない。治療が必要である」と判断しているにもかかわらず、保険会社が「今回の事故は小さい事故なので、1ヵ月もあれば症状固定しているはずです」などと言って、さらに症状固定を迫ったり、場合によっては治療費の支払いを打ち切ったりすることもあります。
こういった場合には、弁護士に相談することをより強くおすすめします。弁護士が保険会社と交渉し、法的観点から適正な症状固定時期を主張することができます。

症状固定の時期

ここでは、代表的なケガごとに、症状固定までの目安の期間を紹介します。
繰り返しにはなりますが、症状固定は基本的に医師が判断するものですので、実際にケガの治療にあたっている医師の意見に従うことが大切です。

むちうちの症状固定時期

3ヵ月から6ヵ月程度で症状固定となる場合が多いようです。
保険会社からは、事故から3ヵ月経過した段階で症状固定の話が出ることも少なくありません。

骨折の症状固定時期

骨折の激しさや骨のくっつき具合、部位によって大きく異なります。
症状固定まで半年以上を要することが多く、手術をした場合などでは1年以上を要することもあります。

醜状障害の症状固定時期

「醜状障害」とは、人目につく程度の痕が残ってしまう障害のことをいいます。
事故で直接傷痕が残るケースや、ケガの治療のために手術の痕が残ってしまうケースもあります。
半年程度で症状固定となる場合もありますが、症状固定の判断が難しい症状でもあるため、より長期におよぶ場合もあります。

高次脳機能障害の症状固定時期

高次脳機能障害とは、交通事故などで脳がダメージを負い、認知機能や精神機能に障害が残ります。記憶力や注意力が低下するほか、性格が怒りっぽくなるといった症状が出ることがあります。
脳のダメージの程度や被害者の年齢など、さまざまな要素によりますが、症状固定まで1年以上を要することが通常で、数年以上かかるケースもあります。

複数の症状がある場合の症状固定

なかには、複数の箇所にケガを負った場合など、治療を続けても複数の異なる症状が一進一退の状況から改善しない状況になることがあります。
たとえば、骨折とむち打ち症の治療を継続したものの、それぞれの箇所の痛みが改善しないといった場合です。
このような場合には、症状ごとにそれぞれ症状固定の判断がなされるため、症状固定時期の目安も、当然症状ごとに異なってきます。

症状固定後は後遺障害等級認定をする

先ほど、症状固定時に残存している症状のことを「後遺症」と呼ぶと説明しました。
この後遺症のうち、一定程度重大なものについては、後遺障害が認定されることがあります。
後遺障害が認定された場合には、逸失利益や後遺症慰謝料といった、症状固定後に発生する損害も請求することができます。

まとめ

お話ししてきたように、症状固定は、被害者が受け取るべき賠償金の算定にとって、非常に重要なものとなっています。しかし、逆に症状固定を利用し、その時期を早めることで賠償金の額を低く抑えようとする保険会社がいることも事実です。
保険会社から症状固定を持ち掛けられた場合は、それを鵜呑みにするのではなく、まずは医師の指示に従いましょう。

また、症状固定となった場合には、後遺症について後遺障害の手続を検討する必要があります。
「保険会社から症状固定を迫られて困っている…」、「症状固定となったが、後遺障害の手続に不安がある…」といったお悩みをお持ちの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事の監修者
松日樂 健吾
弁護士 松日樂 健吾(まつひら けんご)
資格:弁護士
所属:東京弁護士会
出身大学:早稲田大学法学部、早稲田大学大学院法務研究科

交通事故の賠償金は、さまざまな要素をもとに算定される複雑なものであり、被害者の方が不安や疑問をお持ちになるのは当然のことです。
ですから、こういった不安や疑問を少しでも軽減できるような仕事の進め方を心がけています。また、適正な賠償金の獲得を目指して尽力することも、交通事故担当の弁護士として大事な点であると考えております。
このコラムが、少しでも読んでいただいた方の不安や疑問の解消につながれば幸いです。

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